2026年1月4日日曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その19B

英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている
アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」の
ペーパーバック版の表紙 -
陸橋を渡るオリエント急行列車が、
同急行の寝台車輌内、もしくは、食堂車輌内に置かれた
電灯の形に切り取られている。


中東のシリア(Syria)での仕事を終えて、イスタンブール(Istanbul)のホテル(The Tokatlian Hotel)に到着したエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot 2025年10月11日付ブログで紹介済)は、そこで「直ぐにロンドンへ戻られたし。」という電報を受け取る。


エルキュール・ポワロは、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。
<筆者撮影>


早速、ポワロはホテルにイスタンブール発カレー(Calais)行きのオリエント急行(Orient Express)の手配を依頼するが、通常、冬場(12月)は比較的空いている筈にもかかわらず、季節外れの満席だった。


エルキュール・ポワロは、イスタンブールからロンドンへ急いで戻ろうとしたが、
比較的空いている冬場にもかかわらず、生憎と、オリエント急行は、季節外れの満席だった。
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HarperCollinsPublishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」のグラフィックノベル版
(→ 2020年11月15日付ブログで紹介済)から抜粋。


とりあえず、駅へ向かったポワロであったが、ベルギー時代からの友人で、ホテルで再会した国際寝台車会社(Compagnie Internationale des Wagons Lits)の重役ブック氏(Mr. Bouc)が、ポワロのために、二等寝台席を確保してくれる。なお、ブック氏は、仕事の関係で、スイスのローザンヌ(Lausanne)へと向かう予定だった。

なんとかヨーロッパへの帰途についたポワロは、米国人のヘクター・ウィラード・マックイーン(Hector Willard MacQueen)と同室になる。


オリエント急行の乗客の中には、
ある悪夢に悩まされている人物が含まれていた。
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HarperCollinsPublishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」のグラフィックノベル版から抜粋。


季節外れにもかかわらず、オリエント急行には、様々な国と職業の人達が乗り合わせていた。

その中の一人で、イスタンブールのホテルで既に見かけていた米国人の実業家であるサミュエル・エドワード・ラチェット(Samuel Edward Ratchett)が、ポワロに対して、話しかけてくる。彼は、最近脅迫状を数回受け取っていたため、身の危険を感じており、ポワロに自分の護衛を依頼してきたのであった。彼の狡猾な態度を不快に思ったポワロは、彼の依頼を即座に断る。


エルキュール・ポワロは、
米国人の実業家であるサミュエル・エドワード・ラチェットから、身辺警護の依頼を受けるが、
彼の狡猾な態度を不快に思ったポワロは、
「あなたの顔が気に入らない。(I do not like your face !)」と言って、彼の依頼を即座に断った。
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HarperCollinsPublishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」のグラフィックノベル版から抜粋。


翌日の夜、ベオグラード(Belgrade - 現在のセルビア共和国の首都)において、アテネ(Athens)発パリ(Paris)行きの車輌が接続され、ブック氏はその車輛へと移り、自分の一等寝台席(1号室)をポワロに譲ったため、ポワロはカレーまでゆっくりと一人で過ごせる筈だった。ところが、ポワロの希望とは裏腹に、列車は、ヴィンコヴツィ(Vinkovciー現在のクロアチア(Croatia)共和国領内)近くで積雪による吹き溜まりに突っ込んで、立ち往生しつつあった。


事件当夜、エルキュール・ポワロは、
隣室のラチェットの部屋での出来事や廊下での騒ぎ等により、何度も安眠を邪魔された。
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HarperCollinsPublishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」のグラフィックノベル版から抜粋。


その夜、隣室(2号室)のラチェットの部屋での出来事や廊下での騒ぎ等により、ポワロは、何度も安眠を邪魔された。そして、翌朝、車掌が、ポワロの隣室において、ラチェットが死んでいるのを発見する。彼は、刃物で全身を12箇所もメッタ刺しの上、殺害されていたのである。

ブック氏は、会社の代表者として、ポワロに対し、事件の解明を要請し、それを受諾したポワロは、別の車輛に乗っていたギリシア人の医師コンスタンティン博士(Dr. Constantine)と一緒に、ラチェットの検死を行う。ラチェットが殺害された現場には、燃やされた手紙が残っていて、ポワロは、その手紙からデイジー・アームストロング(Daisy Armstrong)という言葉を解読した。サミュエル・エドワード・ラチェットという名前は偽名であり、彼は、5年前に、米国において、幼いデイジー・アームストロングを誘拐して殺害した犯人カセッティ(Cassetti)で、身代金を持って海外へ逃亡していたのである。


メッタ刺しされて殺害されたサミュエル・エドワード・ラチェットの部屋に残されていた紙片から、
エルキュール・ポワロは、彼の本名がカセッティで、
5年前に米国で発生したデイジー・アームストロング誘拐殺人事件の犯人であることを突き止める
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HarperCollinsPublishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」のグラフィックノベル版から抜粋。


ラチェットの正体を知ったポワロは、ブック氏/コンスタンティン博士と一緒に、列車の乗客の事情聴取を開始する。積雪のため、立ち往生した列車の周囲には足跡がなく、外部の人間が犯人とは思えなかった。列車(イスタンブール発カレー行き寝台車)には、


2013年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」
(ペーパーバック版)内に記載されている
オリエント急行のイスタンブール発カレー行き寝台車の見取り図


*1号室(一等寝台席):エルキュール・ポワロ

*2号室(一等寝台席):サミュエル・エドワード・ラチェット

*3号室(一等寝台席):キャロライン・マーサ・ハバード夫人(Mrs. Caroline Martha Hubbard)- 陽気でおしゃべりな中年女性(米国人)

*4号室(二等寝台席):エドワード・ヘンリー・マスターマン(Edward Henry Masterman)- ラチェットの執事(英国人)

*5号室(二等寝台席):アントニオ・フォスカレリ(Antonio Foscarelli)- 自動車のセールスマン(米国に帰化したイタリア人)

*6号室(二等寝台席):ヘクター・ウィラード・マックイーン - ラチェットの秘書(米国人)

*7号室(二等寝台席):空室(当初、ポワロが使用していた)

*8号室(二等寝台席):ヒルデガード・シュミット(Hildegarde Schmidt)- ドラゴミロフ公爵夫人に仕える女中(ドイツ人)

*9号室(二等寝台席):空室

*10号室(二等寝台席):グレタ・オルソン(Greta Ohisson)- 信仰心の強い中年女性(スウェーデン人)

*11号室(二等寝台席):メアリー・ハーマイオニー・デベナム(Mary Hermione Debenham)- 家庭教師(英国人)

*12号室(一等寝台席):エレナ・マリア・アンドレニ伯爵夫人(Countess Elena Maria Andrenyi / 旧姓:エレナ・マリア・ゴールデンベルク(Elena Maria Goldenberg))- ルドルフ・アンドレニ伯爵の妻(ハンガリー人)

*13号室(一等寝台席):ルドルフ・アンドレニ伯爵(Count Rudolf Andrenyi)- 外交官(ハンガリー人)

*14号室(一等寝台席):ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人(Princess Natalia Dragomiroff)- 亡命貴族の老婦人(フランスに帰化したロシア人)

*15号室(一等寝台席):アーバスノット大佐(Colonel Arbuthnot)- 軍人(英国人)

*16号室(一等寝台席):サイラス・ベスマン・ハードマン(Cyrus Bethman Hardman)- セールスマンと言っているが、実はラチェットの身辺を護衛する私立探偵(米国人)


ポワロと被害者のラチェット以外に、12名の乗客とオリエント急行の車掌で、フランス人のピエール・ポール・ミシェル(Pierre Paul Michel)が乗っていた。

果たして、ラチェットを惨殺した犯人は、誰なのか?ところが、何故か、乗客達のアリバイは、互いに補完されていて、容疑者と思われる者は、誰も居なかった。

捜査に難航するポワロであったが、最後には驚くべき真相を明らかにするのであった。


2016年9月15日に、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から発行された

アガサ・クリスティーの没後40周年の記念切手の一つである「オリエント急行の殺人」は、

米国人の実業家であるサミュエル・エドワード・ラチェットが殺害された深夜、

オリエント急行列車の廊下を外側から見た場面が描かれている。

画面左手には、フランス人で、車掌のピエール・ポール・ミシェルが立っており、

画面中央には、エルキュール・ポワロの部屋を突然ノックして、

彼の安眠を妨害し、立ち去って行く赤い着物を羽織った女性が描かれている。

そして、積雪による吹き溜まりの中に立ち往生したオリエント急行の煙突から立ち上った煙は、

帽子をかぶったポワロの形となって、ラチェットの殺害現場を見ているのである。

三日月が、ポワロの眼に該っている。

更に、画面の一番下には、ラチェットを殺害したと思われる

容疑者13名(12名の乗客と車掌)の名前が列挙されている。


本作品において、犯行動機の重要なファクターとなるデイジー・アームストロング誘拐殺人事件については、初の大西洋単独無着陸飛行(1927年5月20日ー同年5月21日)を成功したことで有名な米国人飛行家チャールズ・オーガスタス・リンドバーグ(Charles Augustus Lindbergh:1902年ー1974年)の長男チャールズ・オーガスタス・リンドバーグ・ジュニア(当時1歳8ヶ月)が、1932年3月1日にニュージャージー州(New Jersey)の自宅から誘拐され、約2ヶ月後に邸宅付近で死亡しているのが発見されるという実際の事件があり、アガサ・クリスティーは、この事件から着想を得たものとされている。


(36)オリエント急行(Orient Express)



アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1934年に発表した「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express → 2023年8月25日 / 8月29日付ブログで紹介済)」において、事件の舞台となるのが、オリエント急行のイスタンブール発カレー行き寝台車である。


(37)赤い着物を着た女性 (woman in a scarlet kimono)



オリエント急行のイスタンブール発カレー行き寝台車の2号室(一等寝台席)を使用していたサミュエル・エドワード・ラチェットが殺害された夜、赤い着物を着た女性がポワロが泊まる1号室(一等寝台席)のドアをノックして立ち去る等の出来事があり、ポワロは、何度も安眠を邪魔された。


(38)「H」の頭文字が入ったハンカチ(embroidered handkerchief)



サミュエル・エドワード・ラチェットが殺害されたオリエント急行のイスタンブール発カレー行き寝台車の2号室(一等寝台席)の床の上には、「H」の頭文字が入ったハンカチが落ちていた。ところが、「H」の頭文字で始まる名前の人物は居らず、誰の持ち物なのか、判らなかった。当然のことながら、誰も自分が持ち主であると申し出なかったのである。


(39)車掌(train conductor)



イスタンブール発カレー行き寝台車を担当する車掌は、フランス人のピエール・ポール・ミシェルだった。        


        

2026年1月3日土曜日

シティー内に点在するスヌーピー彫刻の探訪(Snoopy in the City: Sculpture trail)- その11

ホルボーン高架橋通りとオールドベイリー通りが交差する南西の角の歩道に設置された
10番目のスヌーピー彫刻「Golden Hound」
<筆者撮影>


スヌーピー(Snoopy)が主人公である米国人気コミック「ピーナッツ(Peanuts)」の誕生75周年を記念して、12名のアーティストがデザインしたスヌーピー彫刻が、2025年11月19日から2026年1月16日までの約2ヶ月間、シティー・オブ・ロンドン(City of London → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)内の各地に展示されている。



前回に続き、12名のアーティストがデザインしたスヌーピー彫刻について、個別に紹介していきたい。


(10)

*彫刻名: Golden Hound

*アーティスト名: Becky Smith





*展示場所: 東西に延びるホルボーン高架橋通り(Holborn Viaduct)と中央刑事裁判所(Central Criminal Court → 2016年1月17日付ブログで紹介済)の前を南北に延びるオールドベイリー通り(Old Bailey)が交差する南西の角にある歩道

中央刑事裁判所の上部全景
<筆者撮影>

画面左手奥がニューゲートストリート(New Gate Street → 2018年5月19日付ブログで紹介済)で、
画面中央の交差点を過ぎると、
ホルボーン高架橋通りへと名前を変えて、画面右手前に延びる。
なお、画面奥の建物は、中央刑事裁判所である。
ホルボーン高架橋通りと画面右斜め奥から延びてくるオールドベイリー通りが交差する南西の角の歩道に、
10番目のスヌーピー彫刻「Golden Hound」が
設置されている。
<筆者撮影>

           

2026年1月2日金曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その19A

英国の HarperCollinsPublishers 社から以前に出版されていた
アガサ・クリスティー作「オリエント急行」ペーパーバック版の表紙 -
オリエント急行の寝台車輌内、もしくは、食堂車輌内に置かれた
電灯をイメージしているものと思われる。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている「エルキュール・ポワロの世界(The World of Hercule Poirot)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているエルキュール・ポワロシリーズの登場人物や各作品に関連した112個の手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

前回に引き続き、各作品に出てくる登場人物、建物や手掛かり等が、その対象となる。


ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の完成形
<筆者撮影>


(36)オリエント急行(Orient Express)



ジグソーパズルの下段中央の右手にある床の上に、オリエント急行の機関車模型が置かれている。

なお、オリエント急行の機関車模型の上側にあるのは、青列車(blue train)の車輌模型である。


(37)赤い着物を着た女性 (woman in a scarlet kimono)



ジグソーパズルの中段の一番左手にあるテーブルの前に、赤い着物を着た女性がこちらに背を向けて立っている。


(38)「H」の頭文字が入ったハンカチ(embroidered handkerchief)



ジグソーパズルの中央のやや左側にある暖炉内の前の床の上に、「H」の頭文字が入ったハンカチが落ちている。


(39)車掌(train conductor)



ジグソーパズル中央に立つエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot 2025年10月11日付ブログで紹介済)から右真横へ移動した位置に居て、画面右側にある柱の側に立っている執事のジョージ(George → 2025年10月23日付ブログで紹介済)の左斜め下に、車掌が立っている。


これらから連想されるのは、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1934年に発表した「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express → 2023年8月25日 / 8月29日付ブログで紹介済)」である。

「オリエント急行の殺人」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第14作目に、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編としては、第8作目に該っている。

なお、「オリエント急行の殺人」の場合、米国版のタイトルは、「Murder in the Calais Coach」が使用されている。


ちなみに、作者のアガサ・クリスティーは、自伝において、「私はこれまでずっと、オリエント急行に乗ってみたいと思い続けていた。フランスやスペインやイタリアへ旅行した時、オリエント急行はよくカレーに停車していて、一度これに乗ってみたいと大いに望んでいたものだった。」と綴っている。


アガサ・クリスティーは、1920年の推理作家デビュー以降、長編5作と短編集1作を既に発表していたが、推理作家としての彼女の知名度は、今ひとつだった。しかしながら、1926年に発表した長編第6作目「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd → 2022年11月7日付ブログで紹介済)」のフェア・アンフェア論争により、アガサ・クリスティーの知名度は大きく高まり、ベストセラー作家の仲間入りを果たした。


英国の Harper Collins Publishers 社から以前に出版されていた
アガサ・クリスティー作「アクロイド殺し」の
ペーパーバック版の表紙 -
ロジャー・アクロイド(Roger Ackroyd)が住む
フェルンリーパーク館(Fernly Park)へと向かう
ジェイムズ・シェパード医師(Dr. James Sheppard)が運転する車を
イメージしていると思われる。


一方で、同年、アガサ・クリスティーは、最愛の母親を亡くしたことに加えて、夫であるアーチボルド・クリスティー(Archibald Christie:1889年ー1962年)に、別に恋人が居ることが判明して、精神的に不安定な状態にあった。


英国の HarperCollinsPublishers 社から2007年に出ている
アガサ・クリスティー作「茶色の服の男」のグラフィックノベル版の表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-

本作品の主人公となるアン・べディングフェルド(Anne Beddingfield)が乗船する
ケープタウン(Capetown)行きの客船キルモーデンキャッスル号(Kilmorden Castle)と
その乗船切符が描かれている。


当時、ロンドン近郊の田園都市であるサニングデール(Sunningdale)の自宅スタイルズ荘(Styles - 「茶色の服の男(The Man in the Brown Suit → グラフィックノベル版については、2021年1月18日付ブログで紹介済)」(1924年)の出版により得たまとまった収入で購入し、処女作に因んで命名)に住んでいたアガサ・クリスティーは、同年(1926年)12月3日、住み込みのメイドに対して、行き先を告げず、「外出する。」と伝えると、当時珍しかった自動車を自分で運転して、自宅を出たまま、行方不明となってしまう。


英国の Metro Media Ltd. から、
Self Made Hero シリーズの一つとして、2016年に出版された
「Agatha - The Real Life of Agatha Christie」からの一場面 -
自宅を出た後、行方不明となったアガサ・クリスティーが
運転していた自動車が、
サリー州(Surrey)内のある湖の近くに
乗り捨てられているのが発見された。


「アクロイド殺し」がベストセラー化したことにより、有名人となった彼女の失踪事件は、世間の興味を非常に掻き立てた。警察は、彼女の行方を探すとともに、彼女が事件に巻き込まれた可能性も視野に入れて、捜査を進め、夫のアーチボルドも疑われることになった。マスコミは格好のネタに飛び付き、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-193年)やピーター・デス・ブリードン・ウィムジイ卿(Lord Peter Death Bredon Wimsey)シリーズの作者であるドロシー・L・セイヤーズ(Dorothy Leigh Sayers:1893年ー1957年)等が、マスコミから求められて、コメントを出している。


英国の Metro Media Ltd. から、
Self Made Hero シリーズの一つとして、2016年に出版された
「Agatha - The Real Life of Agatha Christie」からの一場面 -

ベストセラーとなった「アクロイド殺し」の作者である
アガサ・クリスティーの失踪事件という
格好のネタに飛び付いて、盛り上がるマスコミから求められて、
コナン・ドイルやドロシー・L・セイヤーズ等は、
コメントを出す一方、
アガサ・クリスティーの夫であるアーチボルド・クリスティーは、
警察から犯行を疑われることになった。


11日後、彼女は、保養地(Harrogate)のホテル(The Swan Hydropathic Hotel)に別人(夫アーチボルドの愛人であるナンシー・ニール(Nancy Neele)と同じ姓のテレサ・ニール(Teresa Neele))の名義で宿泊していたことが判り、保護された。


上記の通り、1926年に、アガサ・クリスティーは、キャリア面において、ベストセラー作家の仲間入りを果たすとともに、プライベート面においても、失踪事件を起こして、世間からの脚光を浴びてしまう。

上記の失踪事件を経て、1928年に、アガサ・クリスティーは、夫のアーチボルドと離婚することになる。


同年の秋、ディナーパーティーにおいて、他の出席者から勧められたオリエント急行に乗って、アガサ・クリスティーは、中東旅行へと出発して、トリエステ(Trieste)、ベオグラード(Belgrade)、イスタンブール(Istanbul)、アレッポ(Aleppo)、ダマスカス(Damascus)、そして、バグダッド(Baghdad)まで足を伸ばした。その後、メソポタミア文明の首都と見做されていたウル(Ur)の発掘現場(1925年-1931年)も訪問して、考古学者のレオナード・ウーリー(Leonard Woolley)夫妻と知り合う。

この時の経験が、後に「オリエント急行の殺人」(1934年)へと結実するのである。 


2016年9月15日に、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から発行された

アガサ・クリスティーの没後40周年の記念切手の一つである「オリエント急行の殺人」は、

米国人の実業家であるサミュエル・エドワード・ラチェット(Samuel Edward Ratchett)が殺害された深夜、

オリエント急行列車の廊下を外側から見た場面が描かれている。

画面左手には、フランス人で、車掌のピエール・ポール・ミシェル(Pierre Paul Michel)が立っており、

画面中央には、エルキュール・ポワロの部屋を突然ノックして、

彼の安眠を妨害し、立ち去って行く赤い着物を羽織った女性が描かれている。

そして、積雪による吹き溜まりの中に立ち往生したオリエント急行の煙突から立ち上った煙は、

帽子をかぶったポワロの形となって、ラチェットの殺害現場を見ているのである。

三日月が、ポワロの眼に該っている。

更に、画面の一番下には、ラチェットを殺害したと思われる

容疑者13名(12名の乗客と車掌)の名前が列挙されている。


中東や考古学等に興味を抱いたアガサ・クリスティーは、翌年の1930年に、再度、中東旅行に出かけ、ウルの発掘現場において、レオナード・ウーリーの弟子として働いていた考古学者で、14歳年下のマックス・エドガー・ルシアン・マローワン(Max Edgar Lucien Mallowan:1904年ー1978年)と出会い、彼からプロポーズを受け、同年の9月11日に再婚する。


2026年1月1日木曜日

アガサ・クリスティー 2026年オフィシャルカレンダー(Agatha Christie Official Calendar 2026)- その1

「アガサ・クリスティー 2026年オフィシャルカレンダー」の表紙 -

エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第22作目に該る

「ホロー荘の殺人」(1946年)のイラストが、表紙に使用されている。

<筆者撮影>


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の HarperCollinsPublishers 社から、2026年オフィシャルカレンダーが出ているので、次回以降、順番に紹介したい。


2024年カレンダーの場合、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)シリーズのペーパーバック版の表紙を使用していたが、2026年カレンダーの場合、カレンダー用に新たに描き起こされたエルキュール・ポワロシリーズのイラストが使用されている。


2024年カレンダーに使用されているエルキュール・ポワロシリーズのペーパーバック版の表紙の場合、デザインについては、Ms. Claire Ward / HarperCollinsPublishers Ltd. が、また、背景のイラストやシルエットに関しては、Shutterstock が担当している。一方、2026年カレンダー用に新たに描き起こされたエルキュール・ポワロシリーズの場合、デザインについては、Diahann Sturge-Cambell が、また、イラストに関しては、Mr. Stephen Millership / Central Illustration Agency が担当している。


なお、カレンダーの題材は、エルキュール・ポワロシリーズの長編がベースになっているものの、その順番は、エルキュール・ポワロシリーズの発表順にはなっていない。


「アガサ・クリスティー 2026年オフィシャルカレンダー」の裏表紙
<筆者撮影>


(1)内扉:「もの言えぬ証人(Dumb Witness)」(1937年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第21作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第14作目に該っている。


(2)2026年1月:「ヒッコリーロードの殺人(Hickory Dickory Dock)」(1955年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第47作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第26作目に該っている。


(3)2026年2月:「死との約束(Appointment with Death)」(1938年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第22作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第16作目に該っている。


(4)2026年3月:「ゴルフ場殺人事件(The Murder on the Links)」(1923年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第3作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第2作目に該っている。


(5)2026年4月:「満潮に乗って(Taken at the Flood)」(1948年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第38作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第23作目に該っている。


(6)2026年5月:「杉の柩(Sad Cypress)」(1940年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第27作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第18作目に該っている。


(7)2026年6月:「葬儀を終えて(After the Funeral)」(1953年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第44作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第25作目に該っている。


(8)2026年7月:「白昼の悪魔(Evil Under the Sun)」(1941年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第29作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第20作目に該っている。


(9)2026年8月:「ホロー荘の殺人(The Hollow)」(1946年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第37作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第22作目に該っている。


(10)2026年9月:「愛国殺人(→英国での原題は、「One, Two, Buckle My Shoe」(いち、にい、私の靴の留め金を締めて)であるが、日本でのタイトルは米国版「The Patriotic Murders」をベースにしている)」(1940年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第28作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第19作目に該っている。


(11)2026年10月:「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」(1969年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第60作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第31作目に該っている。


(12)2026年11月:「マギンティー夫人は死んだ(Mrs McGinty’s Dead)」(1952年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第42作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第24作目に該っている。


(13)2026年12月:「メソポタミヤの殺人(Murder in Mesopotamia)」(1936年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第19作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第12作目に該っている。


(14)2027年:「鳩のなかの猫(Cat Among the Pigeons)」(1959年)

アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第51作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第28作目に該っている。


こうして見ると、2026年カレンダーのラインアップは、エルキュール・ポワロシリーズの中期から後期に該るマイナーな作品が多く含まれていると言える。