英国とフランスの間に横たわる大空と海を背景にした表紙が、 エルキュール・ポワロがパリからロンドンへと戻る飛行機の中で飛び回ったスズメバチの形に切り取られている。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2024年カレンダーのうち、9番目を紹介したい。
(9)長編「雲をつかむ死(Death in the Clouds)」(1935年)
本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第17作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第10作目に該っている。
名探偵エルキュール・ポワロは、パリ(Le Bourget Airfield)からロンドン(Croydon Airport)へと戻る飛行機の機上の人となっていた。ポワロは、飛行機の後部区画の座席に座っていたが、この後部区画には、彼以外に、10名の搭乗客が居た。
(1)ダニエル・クランシー(Daniel Clancy - 推理作家)
(2)アルマン・デュポン(Armand Dupont - 考古学者)
(3)ジャン・デュポン(Jean Dupont - 考古学者アルマン・デュポンの息子)
(4)ノーマン・ゲイル(Norman Gale - 歯科医)
(5)ブライアント医師(Dr. Bryant - 耳鼻咽喉科医)
(6)マダム・ジゼル(Madame Giselle - フランス人の金貸し / 本名:マリー・モリソー(Marie Morisot))
(7)ジェイムズ・ライダー(James Ryder - セメント会社の支配人)
(8)シシリー・ホーバリー(Cicely Horbury - 伯爵夫人)
(9)ヴェニーシャ・カー(Venetia Kerr - 貴族の令嬢)
(10)ジェーン・グレイ(Jane Grey - 美容院の助手)
機内では、ポワロは、ほとんどの時間、眠っていたが、飛行機が英国側に着陸する間近になると、後部区画内をスズメバチが飛び回り始めたため、スチュワードがそのスズメバチを捕まえようとしたところ、乗客の一人であるマダム・ジゼルが死んでいるのを発見する。
目が覚めたポワロは、マダム・ジゼルが亡くなっていることを聞くと、彼女がスズメバチに刺されたショックで死亡したとういう説を否定する。ポワロの指摘通り、亡くなったマダム・ジゼルが座っていた座席の近くの床の上に、毒が塗られた矢の先端が落ちており、その矢で首を刺されたことが、マダム・ジゼルの死亡原因であることが判明する。
更に、驚くことには、ポワロが座っていた座席の脇から、毒が塗られた矢の先端を発射したと思われる小さな吹き矢の筒が見つかった。
マダム・ジゼル殺害の容疑者とされたことに立腹したポワロは、汚名を返上するべく、事件を解決することを誓う。そして、ポワロは、ジェーン・グレイの協力を得ると、英国側のジャップ警部(Inspector Japp)/ フランス側のフルニエ警部(Inspector Fournier)と協力して、捜査を進めていくのであった。
吹き矢の筒は、マダム・ジゼル殺害に使用された毒矢の先端を発射したものと考えられ、ポワロが座っていた座席の脇から発見された。飛行機は、ポワロやマダム・ジゼル達がパリからロンドンへと向かう際に使った乗機である。スズメバチは、飛行機が英国側に着陸する間近になると、後部区画内を飛び回り始めた虫で、当初は、スズメバチに刺されたショックにより、マダム・ジゼルは亡くなったものと考えられていた。
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