2018年に英国の Simon & Schuster UK Ltd. から出版された アンドリュー・ウィルスン作「殺人の才能」の ペーパーバック版の裏表紙 (Cover illustration : Mark Smith Cover design : Pip Watkins / S&S Art Dept.) |
アンドリュー・ウィルスン(Andrew Wilson:1967年ー)作「殺人の才能(A Talent for Murder)」(2017年)は、1926年12月、ロンドンのヴィクトリア駅(Victoria Station → 2015年6月13日付ブログで紹介済)から始まる。ヴィクトリア駅のプラットフォームに降り立ったのは、アガサ・クリスティーその人であった。
アガサ・クリスティーは、自分のクラブに近い地下鉄ハイドパークコーナー駅(Hyde Park Corner Tube Station → 2015年6月14日付ブログで紹介済)へと向かうべく、ヴィクトリア駅を出ると、地下鉄ヴィクトリア駅(Victoria Tube Station → 2017年7月2日付ブログで紹介済)へ歩き出した。
地下鉄ヴィクトリア駅 - サークルライン(Circle Line) / ディストリクトライン(District Line)用プラットフォームの壁 |
1926年に発表した「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd → 2022年11月7日および2023年9月25日 / 10月2日付ブログで紹介済)」にかかるフェア・アンフェア論争により、アガサ・クリスティーの知名度は大きく高まり、ベストセラー作家の仲間入りを果たしていた。
一方で、同年、アガサ・クリスティーは、最愛の母親を亡くしたことに加えて、夫であるアーチボルド・クリスティー(Archibald Christie:1889年ー1962年)に、別に恋人が居ることが判明して、精神的に不安定な状態にあった。
アガサ・クリスティーは、地下鉄ヴィクトリア駅のプラットフォームで電車を待っていると、トンネルの暗闇の中から、電車がプラットフォームへと近付いて来た。
その時、彼女は、背中を誰かに軽く触れられたのを感じると、身体のバランスを崩してしまう。
すると、誰かが、プラットフォームへと入って来る電車から、彼女を安全な場所へと引っ張ってくれたのである。
彼女が意識を取り戻すと、彼女を助けてくれた男性は、自分をパトリック・クルス医師(Dr. Patrick Kurs)だと名乗った。
地下鉄ヴィクトリア駅 - サークルライン / ディストリクトライン用プラットフォーム |
まだ身体がふらつくアガサ・クリスティーを地下鉄ヴィクトリア駅から連れ出したパトリック・クルス医師は、「アクロイド殺し」の語り手であるジェイムズ・シェパード医師(Dr. James Sheppard)に非常に興味があることと言い出すと、それをやや不審に思う彼女に対して、驚くべきことを告げる。
(1)「私があなただったら、決して叫ばないでしょう。あなたの夫と彼の愛人のことを全世界に知られたくなければ。(I wouldn’t scream if I were you. Unless you want the whole world to learn about your husband and his mistress.)」
(2)「クリスティー夫人、あなたは、殺人を犯そうとしている。(You, Mrs Christie, are going to commit a murder.)」
(3)「あなたの夫の愛人であるナンシー・ニール(Nancy Neele)は、私の患者で、彼女が診察時に話した情報について、私は全て把握している。」
この時点から、アガサ・クリスティーにとって、恐ろしい一連の出来事が始まる。
彼女の命を救ったパトリック・クルス医師は、天使ではなく、陰湿な脅迫者だったのである。パトリック・クルス医師は、彼が握る秘密を餌にして、彼女に対して、自分の妻の殺害を指示する。
こうして、アガサ・クリスティーは、脅迫と殺人事件に巻き込まれ、1926年12月3日から始まる10日間にわたる謎の失踪事件へと繋がっていくのである。
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