英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、一昨年(2022年)に発行されたシャーロック・ホームズをテーマにしたトランプの各カードについて、前回に引き続き、紹介したい。
(33)9 ❤️「メアリー・モースタン(Mary Morstan)」
メアリー・モースタンは、「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済 / ホームズシリーズの長編第2作目で、「リピンコット・マンスリー・マガジン(Lippincott’s Monthly Magazine)」の1890年2月号に掲載)」において、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を訪れて、風変わりな事件の調査依頼をする。
元英国陸軍インド派遣軍の大尉だった彼女の父親アーサー・モースタン(Captain Arthur Morstan)は、インドから英国に戻った10年前に、謎の失踪を遂げていた。彼はロンドンのランガムホテル(Langham Hotel → 2014年7月6日付ブログで紹介済)に滞在していたが、娘のモースタン嬢が彼を訪ねると、身の回り品や荷物等を部屋に残したまま、姿を消しており、その後の消息が判らなかった。そして、6年前から年に1回、「未知の友」を名乗る正体不明の人物から彼女宛に大粒の真珠が送られてくるようになり、今回、その人物から面会を求める手紙が届いたのである。
彼女の依頼に応じて、ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、彼女に同行して、待ち合わせ場所のライシアム劇場(Lyceum Theatreー2014年7月12日付ブログで紹介済)へと向かった。そして、ホームズ達一行は、そこで正体不明の人物によって手配された馬車に乗り込むのであった。
なお、事件が解決した後、メアリー・モースタンは、ワトスン夫人となる。
なお、「四つの署名」は、ホームズシリーズの長編第2作目で、「リピンコット・マンスリー・マガジン(Lippincott’s Monthly Magazine)」の1890年2月号に掲載された後、単行本化。
(34)9 ♠️「ジャック・ステイプルトン(Jack Stapleton)」
ジャック・ステイプルトンは、「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」において、デヴォン州(Devon)南部に広がる荒野ダートムーア(Dartmoor)内に所在するメリピットハウス(Merripit House)に住む昆虫学者である。
彼は、ダートムーアに伝わる魔犬伝説を使い、バスカヴィル家の当主であるサー・チャールズ・バスカヴィル(Sir Charles Baskerville)を心臓麻痺へと追い込み、後を継いだサー・ヘンリー・バスカヴィル(Sir Henry Baskerville)の命も奪おうとした。
なお、「バスカヴィル家の犬」は、ホームズシリーズの長編第3作目で、英国では、「ストランドマガジン」の1901年8月号から1902年4月号にかけて連載された後、単行本化。
(35)9 ♦️「レジナルド・マスグレイヴ(Reginald Musgrave)
レジナルド・マスグレイヴは、「マスグレイヴ家の儀式書(The Musgrave Ritual)」に登場する人物で、名門出身の上、シャーロック・ホームズのカレッジ時代からの友人でもあった。
「マスグレイヴ家の儀式書」事件は、ホームズがジョン・H・ワトスンと出会う前に、彼の旧友から持ち込まれた事件である。
彼は、父親の死去に伴い、サセックス州(Sussex)の西部に所在するハールストン領主館(Manor House of Hurlstone)の主人となった。
リチャード・ブラントン(Richard Brunton)は、マスグレイヴ家に20年間も執事として仕えている、これ以上を望めない貴重な存在であったが、一家に伝わる古文書「マスグレイヴ家の儀式書」を彼が勝手に読んでいるのを、レジナルド・マスグレイヴが見つけ、その場で解雇を言い渡した。
レジナルド・マスグレイヴは、リチャード・ブラントンに対して、荷造りに1週間の猶予を与えたが、面子を潰されたリチャード・ブラントンは、靴、時計やお金等を残したまま、2日後に姿を消してしまう。
更に、リチャード・ブラントンと恋愛関係にあったメイドのレイチェル・ハウェルズ(Rachel Howells)は、リチャード・ブラントンに捨てられたショックのため、ヒステリー状態になり、看病している看護婦が目を離した隙に、彼女も姿を消した。
彼女が残した足跡を追ったところ、池の淵へ行ったことが判ったため、池の中を攫ったが、彼女の死体は見つからなかった。
地元の警察では埒が明かないとうことで、旧友のレジナルド・マスグレイヴから相談を受けたホームズは、「マスグレイヴ家の儀式書」に記された「それは、誰のものか?(Whose was it?)」と言う質問と「去りし人のものなり。(His who is gone.)」と言う答えで始まる儀式文が、何か重要なものを隠している場所を示している問答だと考えて、その解明に取り組むのであった。
「マスグレイヴ家の儀式書」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、18番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1893年5月号に、また、米国では、「ハーパーズ ウィークリー(Harper’s Weekly)」の1893年5月13日号に掲載された。
また、同作品は、1893年に発行されたホームズシリーズの第2短編集「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」に収録されている。
(36)9 ♣️「トビアス・グレッグスン警部(Inspector Tobias Gregson)」
トビアス・グレッグスン警部は、アセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones → 2024年x月x日付ブログで紹介済)やスタンリー・ホプキンス警部(Inspector Stanley Hopkins → 2024年x月x日付ブログで紹介済)と同じく、スコットランドヤードの警察官である。
登場作品
<長編>
*「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2016年7月30日付ブログで紹介済)」- ホームズシリーズの記念すべき第1作目で、英国では、「ビートンのクリスマス年鑑(Beeton’s Christmas Annual)」(1887年11月)に掲載された後、単行本化。
<短編>
*「ギリシア語通訳(The Greek Interpreter)」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、22番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1893年9月号に、また、米国でも、「ハーパーズ ウィークリー」の1893年9月16日号に掲載された。
また、同作品は、1893年に発行されたホームズシリーズの第2短編集「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」に収録されている。
*「ウィステリア荘(Wisteria Lodge)」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、38番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1908年9月号 / 10月号に、また、米国では、「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1908年8月15日号に掲載された。
また、同作品は、1917年に発行されたホームズシリーズの第4短編集「シャーロック・ホームズ最後の挨拶(His Last Bow)」に収録されている。
*「赤い輪(The Red Circle)」は、ホームズシリーズの短編小説56作のうち、41番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1911年3月号 / 4月号に、また、米国では、米国版の「ストランドマガジン」の1911年4月号 / 5月号に掲載された。
また、同作品は、ホームズシリーズの第4短編集「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」(1917年)に収録されている。
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