雪が降る夜空(?)の表紙が、 柊(ヒイラギ)の形に切り取られている。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2024年カレンダーのうち、13番目を紹介したい。
(13)長編「ポワロのクリスマス(Hercule Poirot’s Christmas)」(1938年)
本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第24作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第17作目に該っている。
アドルスフィールドのロングデイルに所在するゴーストン館に住む老富豪のシメオン・リー(Simeon Lee)は、若い頃、南アフリカにおいて、ダイヤモンドを採掘して、ひと財産を築いていた。彼は、冷酷で、横暴な性格で、若い頃の残酷な仕打ちと絶え間ない女遊びのために、彼の妻は、心身を傷付けられて、既に亡くなっていた。
クリスマスが間近に迫る中、シメオン・リーは、クリスマスのイヴェントとして、ある計画を思い付いた。それは、方々に住んでいる家族をゴーストン館に呼び、集められた彼らをどれだけ動揺させることができるかを見て楽しむことだった。
シメオン・リーの計画を聞き、父親と同居している長男のアルフレッド・リー(Alfred Lee)と妻のリディア・リー(Lydia Lee)は、困惑の表情を浮かべるしかなかった。
シメオン・リーによる招集に基づき、彼の家族がゴーストン館に呼び集められる。
*ジョージ・リー(Georege Lee - アルフレッドの弟で、下院議員)
*マグダリーン・リー(Magdalene Lee - ジョージの妻)
*ディヴィッド・リー(David Lee - アルフレッドの弟で、画家)
*ヒルダ・リー(Hilda Lee - ディヴィッドの妻)
*ハリー・リー(Harry Lee - アルフレッドの弟で、放蕩息子 / 父シメオンのお金を着服して、行方を晦ますものの、その後も不始末を起こしては、シメオンにお金をせびっていた)
*ピラール・エストラヴァドス(Pilar Estravados - シメオンの孫娘であるが、彼も一度も会ったことがない)
上記の面々に加えて、シメオン・リーの旧友の息子であるスティーヴン・ファー(Stephen Farr)もゴーストン館を訪れ、屋敷に滞在することとなった。
不仲なアルフレッドとハリーは啀み合い、ジョージは、議員活動と妻の浪費のため、多大な資金を必要としており、そして、不遇のうちに亡くなった母親を慕うディヴィッドは、父シメオンに対して、長年の恨みを募らせる等、再会した彼らにとって、クリスマスと言う雰囲気はなく、正にシメオンの計画通りだった。
更に、シメオンは、彼らの感情を逆撫でるように、弁護士に電話をすると、クリスマスが終わった後、遺言書の内容を書き換えると伝えたため、屋敷内には、不穏な空気が満ち満ちたのである。
皆が恐れていた通り、クリスマスイヴの夜に、事件は起きた。
シメオンの部屋から、凄まじい絶叫と家具が倒れる音が聞こえてきたので、屋敷内の皆が、施錠されたドアを壊して、シメオンの部屋の中に入ったところ、そこには、引っくり返った家具と、その横にシメオンの血塗れの死体が倒れていた。
屋敷内の皆が警察を呼ぼうとしたところ、なんと、地元警察のサグデン警視(Superintendent Sugden)が、既に屋敷の玄関口に居たのである。
サグデン警視によると、シメオン・リーから、「金庫から、ダイヤモンドの原石が大量に盗まれた。」と聞き付けたため、ゴーストン館を訪れた、とのこと。
クリスマスを過ごすために、ミドルシャー州の警察部長(Chief Constable)であるジョンスン大佐(Colonel Johnson)の家を訪れていたエルキュール・ポワロは、サグデン警視による事件捜査に協力することになった。
本作品「ポワロのクリスマス」は、アガサ・クリスティーの長編作品の中で、密室殺人を取り扱った唯一のものである。
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