2024年2月24日土曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その29

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


今回も、アガサ・クリスティーが執筆した作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(75)毒入りのシャンペングラス(poisoned champagne glass)



本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右側にある本棚において、上から2番目の棚の右端に、シャンペングラスが置かれている。


これから連想されるのは、アガサ・クリスティーが1945年に発表した「忘れられぬ死(Sparkling Cyanide)」である。本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第36作目に該っている。

本作品は、米国において、「Remembered Death」と言う題名で出版されたが、英国で出版される際に、「Sparkling Cyanide」に改題された。


6人の人物が、1年前に亡くなったローズマリー・バートン(Rosemary Barton)のことを考えていた。

ローズマリー・バートンは、ロンドンにある高級レストラン「ルクセンブルク(Luxembourg)」において開催された彼女の誕生日パーティーの席上、青酸カリが入ったシャンペンを飲んで、死亡したのだった。


*ローズマリー・バートンは、数日前から罹患していたインフルエンザの後、鬱状態だったこと

*ローズマリー・バートン以外の人物が、彼女のシャンペンに青酸カリを混入することは不可能だったこと

*ローズマリー・バートンが持っていたバッグの中から、青酸カリを包んでいた紙が発見されたこと


等から、当時、彼女の死は自殺として処理された。


ところが、ローズマリー・バートンの誕生日パーティーに同席していた以下の6人には、彼女の死を望む動機があったのである。


(1)アイリス・マール(Iris Marle):ローズマリー・バートンの妹(6歳年下で、当時17歳)/ 彼女が21歳になった場合、あるいは、結婚した場合、ローズマリー・バートンの遺産を全て受け継ぐことになっていた。

(2)ジョージ・バートン(George Barton):ローズマリー・バートンの夫(彼女よりも15歳年上) / ローズマリー・バートンが別の男性に宛てた手紙を見つけて、彼女との離婚を考えていた。

(3)アンソニー・ブラウン(Anthony Brown):本名は、トニー・モレリ(Tony Morelli)/ 以前、刑務所に入っていたことを、ローズマリー・バートンに知られてしまった。現在、アイリス・マールと交際しているが、彼女に惹かれる前に、一時、ローズマリー・バートンと関係があった。

(4)スティーヴン・ファラデー(Stephen Farraday):下院議員 / 一時、ローズマリー・バートンと不倫関係にあった。彼女がそれを公にすることで、自分の経歴と結婚に大きな傷がつくことを懸念していた。

(5)アレクサンドラ・ファラデー(Alexandra Farraday):英国で最も勢力があるキダミンスター一族の出身で、スティーヴン・ファラデーの妻 / 夫とローズマリー・バートンの不倫関係を知っており、夫が自分を捨てて、ローズマリー・バートンの元へ走るのではないかと懸念していた。

(6)ルース・レシング(Ruth Lessing):ジョージ・バートンの秘書 / 「ローズマリー・バートンが居なければ、ジョージ・バートンは自分と結婚した筈だ。」と、ルシーラ・ドレイク(Lucilla Drake - ロースマリーとアイリスの伯母)のろくでなしの息子であるヴィクター・ドレイク(Victor Drake)から吹き込まれて、彼女を非常に憎んでいた。


ローズマリー・バートンの死から1年後、ジョージ・バートンは、彼女が亡くなった時と同じメンバーを招待して、アイリス・マールの18歳の誕生日パーティーを催す計画を立てた。

6ヶ月前に、「ローズマリー・バートンは殺された。」と言う手紙を受け取っていたジョージ・バートンは、元陸軍情報部員で、現在は、英国政府の情報機関に勤務する友人のジョン・レイス大佐(Colonel John Race)に対して、「アイリス・マールの18歳の誕生日パーティーを名目にして、犯人に罠を掛けるつもりだ。」と打ち明けた。ジョージ・バートンは、ジョン・レイス大佐に同席を依頼するが、「無鉄砲な計画は止めるんだ。」と忠告される。


英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、2023年に発行された

アガサ・クリスティーをテーマにしたトランプのうち、

「4 ♠️「ジョン・レイス大佐を抜粋。

しかし、ジョージ・バートンは、ジョン・レイス大佐の忠告を聞かず、当初の予定通り、1年前と同じく、高級レストラン「ルクセンブルク」において、アイリス・マールの18歳の誕生日パーティーが開催された。

アイリス・マールのために乾杯した後、6人全員がテーブルを離れると、ダンスへと向かった。ダンスから戻った6人が、テーブルからグラスを取り、ローズマリー・バートンのために乾杯した直後、ジョージ・バートンが急死してしまう。青酸カリによる中毒死だった。

しかし、警察による捜査の結果、最初の乾杯の後、ジョージ・バートンが飲んだグラスに青酸カリを入れる機会が、誰にもなかったことが判明するばかりであった。


友人のジョージ・バートンを亡くしたジョン・レイス大佐は、捜査担当者であるスコットランドヤードのケンプ主任警部(Chief Inspector Kemp)に協力して、ローズマリー・バートンとジョージ・バートンの毒殺事件の解明に取り組む。


本作「忘れられぬ死」は、エルキュール・ポワロ シリーズの短編「黄色いアイリス(Yellow Iris)」(1937年)を長編化した作品である。忘れられぬ死」は、毒殺方法を含めて、基本的に、「黄色いアイリス」と同じ流れであるものの、探偵役や犯人が異なっている。


本作「忘れられぬ死」において、探偵役を務めるジョン・レイス大佐は、


*「茶色の服を着た男(The Man in the Brown Suit)」(1925年)

*「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)- エルキュール・ポワロ シリーズ

*「ナイルに死す(Death on the Nile)」(1937年)- エルキュール・ポワロ シリーズ


に登場するが、本作「忘られぬ死」は、彼が登場する最後の作品となる。


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