表紙が、スカラベ(甲虫類のコガネムシ科タマオシコガネ属の属名、 および、その語源となった古代エジプト語)の形に切り取られている。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2024年カレンダーのうち、14番目を紹介したい。
(14)長編「ナイルに死す(Death on the Nile)」(1937年)
本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第22作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第15作目に該っている。
弱冠20歳のリネット・リッジウェイ(Linnet Ridgeway)は、英国で最も裕福な女性だった。ある日、学生時代の古い友人であるジャクリーン・ド・ベルフォール(Jacqueline De Bellefort)が彼女に電話を架けてきた。
ジャクリーン(通称:ジャッキー(Jackie))の家族が2年前に破産してしまい、それ以来、彼女は辛い日々を送っていた。それに加えて、今度は、彼女の婚約者であるサイモン・ドイル(Simon Doyle)が失業してしまったのである。
ジャッキーは、リネットに対して、サイモンをリネットが住む屋敷の管理人にしてほしいと頼み込んだ。「私、サイモンと結婚できなければ、死んでしまうわ!(If I don’t marry him, I’ll die!)」と。ジャッキーの懇願に根負けしたリネットは、ジャッキーに対して、「面接をするので、あなたの恋人(サイモン)を私の屋敷に連れて来て。」と答えた。
翌日、ジャッキーは、サイモンを連れて、リネットの屋敷へと向かった。ジャッキーによる紹介を受けて、リネットとサイモンはお互いに見つめ合い、リネットは、その場でサイモンを自分の屋敷の管理人として採用することを決める。
そして、場面は変わり、エルキュール・ポワロは、エジプトで休暇を楽しんでいた。彼が、アスワンで知り合った若い女性のロザリー・オッタボーン(Rosalie Otterbourne)と一緒に、ナイル河沿いを散歩していると、ルクソールから到着した大型汽船から、あるカップルが降りてくる。それは、リネット・リッジウェイとサイモン・ドイルの二人であった。ロザリーによると、二人が最近結婚したことが新聞に出ていた、とのこと。
ポワロは、リネットの目の下のくまと、そして、指の関節が白くなる程に、彼女が日傘を強く握りしめていたことから、彼女が何かに非常に困っているに違いないと感じるのであった。
夕闇が迫るホテルのテラスにおいて、リネットとサイモンが過ごしていると、回転ドアが廻り、ワインカラーのドレスを着た女性がゆっくりとテラスを横切って、リネットの視線の先に座る。それは、サイモンの元婚約者のジャッキーだった。
この出来事にひどく動揺したりネットは、その晩、ポワロに相談を持ちかける。リネットは、ジャッキーが、新婚の彼女とサイモンの二人が行くところ、ずーっとつきまとっているのだ、と言う。彼女によると、新婚旅行先のヴェニスから始まり、ブリンジジ、カイロ、そして、アスワンまで続いているらしい。
ジャッキーによるつきまといから逃れるために、リネットとサイモンの二人は、ある計画を立てた。自分達の周囲の人達には、アスワンにこのまま滞在する予定と話しておいて、実際には、二人は、ナイル河の遊覧に参加することにしたのである。ポワロも、リネットとサイモンの二人が乗る汽船で、ナイル河を遊覧することになった。
ナイル河の遊覧船への乗船を無事済ませ、ホッと安心して船室から出てきたリネットとサイモンの二人であったが、そこに笑い声が聞こえてくる。リネットが驚いて振り返ると、そこには、ジャッキーが立っていた。呆然自失となるリネットと怒りを隠せないサイモンの二人。
ナイル河の遊覧船がアブ・シンベルに到着した晩、船内の緊張が限界まで高まり、ある悲劇が発生するのであった。
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