Harper Collins Publishers 社から出版されている 「パディントン駅発4時50分」のペーパーバック版の表紙には、 ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、 列車の乗車券の形に切り取られているものが使用されている。 |
英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「パディントン発4時50分(4:50 from Paddington → 2022年12月20日付ブログで紹介済)」(1957年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Miss Marple」の第3話(第1シリーズ)「パディントン発4時50分」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。
パディントン駅の屋根(その3) <筆者撮影> |
(4)
<原作>
ミス・ジェイン・マープルの依頼に基づいて、ラザフォードホール(Rutherford Hall)に住むクラッケンソープ家(Crackenthorpe family)の家政婦として潜入した若いベテラン料理人であるルーシー・アイルズバロウ(Lucy Eyelesbarrow)が、数日後、ラザフォードホールの納屋の中にある石棺内に、エルスペス・マギリカディー夫人(Mrs. Elspeth McGillicuddy)によって目撃された女性の死体を発見した後、
*ルーシー・アイルズバロウが料理したカレー内に投入されていた毒によって、アルフレッド・クラッケンソープ(Alfred Crackenthorpe - クラッケンソープ家の四男 / 無職で、裏社会の仕事に従事)が死亡
*ロンドンに戻ったハロルド・クラッケンソープ(Harold Crackenthorpe - クラッケンソープ家の三男 / 会社重役)が、デイヴィッド・クィンパー医師(Dr. David Quimper - クラッケンソープ家の主治医)から送られてきたと思われる錠剤に混入していた毒により死亡
と言う事件が、立て続けに発生する。
<TV ドラマ版>
基本的に、原作と同じ展開をしている。
(5)
<原作>
ルーシー・アイルズバロウが、ミス・マープルとセイロン島から戻って来たエルスペス・マギリカディー夫人の2人をラザフォードホールへ招待して、アフタヌーンティーを振る舞おうとする。
ラザフォードホールに到着すると直ぐに、ミス・マープルは、エルスペス・マギリカディー夫人に対して、洗面所へ行くように指示した。ミス・マープルは、魚のペーストのサンドウィッチを食べている際、魚の骨が喉に引っかかったような振りをする。同席していたデイヴィッド・クィンパー医師が、ミス・マープルの様子を診ようとしたところへ、エルスペス・マギリカディー夫人が、洗面所から戻って来た。
そして、デイヴィッド・クィンパー医師の両手が、ミス・マープルの喉のところにかかっている現場を見たエルスペス・マギリカディー夫人は、思わず、叫び声を上げる。
「この人が、あの列車に乗っていた犯人です!(But that’s him - that’s the man on the train.)」と。
このように、ミス・マープルが、デイヴィッド・クィンパー医師を犯人として指摘するのは、「ラザフォードホール」においてである。
<TV ドラマ版>
ミス・マープルが、デイヴィッド・クィンパー医師を犯人として指摘する場所が、「ラザフォードホール」から「パディントン駅午後4時50分発の列車内(エルスペス・マギリカディー夫人が乗車した列車と同じ)」へと変更されている。
英国 TV ドラマ版の物語終盤、 ミス・マープルが、パディントン駅から午後4時50分に出発する列車内で、 犯人を指摘する場面の座席配置図 |
*クラッケンソープ家の次女イーディス・クラッケンソープ(Edith Crackenthorpe / 故人)の夫で、元戦闘機パイロットであるブライアン・イーストリー(Bryan Eastley)
*クラッケンソープ家の長女エマ・クラッケンソープ(Emma Crackenthorpe)
*デイヴィッド・クィンパー医師
の3人が、列車の進行方向に背を向けて、腰掛ける。
*ミス・マープル
*ルーシー・アイルズバロウ
*クラッケンソープ家の次男で、画家であるセドリック・クラッケンソープ(Cedric Crackenthorpe)
の3人が、列車の進行方向に向かって、腰掛ける。
その列車内において、ミス・マープルは、サンドウィッチを食べている際、喉に詰まったような振りをする。同乗していたデイヴィッド・クィンパー医師が、ミス・マープルの様子を診ようとしたところ、ミス・マープル達が乗っている列車に並走する列車に乗っていたエルスペス・マギリカディー夫人が、デイヴィッド・クィンパー医師を犯人として指摘するのである。
パパディントン駅のプラットフォームに設置されている大時計(その4) <筆者撮影> |
(6)
<原作>
原作の場合、ブライアン・イーストリーとルーシー・アイルズバロウの2人が、恋愛関係に発展していく。
<TV ドラマ版>
一方、英国 TV ドラマ版の場合、ブライアン・イーストリーは、ルーシー・アイルズバロウに対して、何度も好意を見せるが、最終的に、恋愛関係に発展して行くのは、ミス・マープルの甥であるトム・キャンベル警部(Inspector Tom Campbell - ミス・マープルは、彼の家に捜査拠点を構えて、ルーシー・アイルズバロウに対して、捜査の指示を行う)とルーシー・アイルズバロウの2人である。
物語は、ミス・マープル、ルーシー・アイルズバロウとトム・キャンベル警部の3人が、一緒にクリスマスを祝う場面を以って、終わりを迎える。
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