2023年8月11日金曜日

ミラノ スカラ座(Teatro alla Scala / La Scala)- その2

コナン・ドイル作「ボヘミアの醜聞」には、

ボヘミア国王と秘密裡に交際していたアイリーン・アドラーは、オペラ歌手で、

イタリアのミラノにある歌劇場「スカラ座」に出演したことがあると記述されている。

(2015年に Dorling Kindersley Limited から出版された

「The Sherlock Holmes Book」<筆者が所有>から抜粋)


シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、最初(1番目)に発表された作品で、英国の「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1891年7月号に掲載されたサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)」において、王太子だったボヘミア国王(King of Bohemia)のカッセル・フェルシュタイン大公ウィルヘルム・ゴッツライヒ・ジギスモント・フォン・オルムシュタイン(Wilhelm Gottsreich Sigismond von Ormstein, Grand Duke of Cassel-Felstein)と秘密裡に交際していたアイリーン・アドラー(Irene Adler)は、オペラ歌手で、イタリアのミラノにある歌劇場「スカラ座(La Scala)」に出演したことがあると言及されている。


1717年に建設された初代の宮廷劇場であるテアトロ・レッジオ・ドゥカーレ(Teatro Regio Ducale)は、1776年2月25日、謝肉祭のガラ・コンサート後に焼失してしまった。

当時、ミラノは、ハプスブルク帝国に属するオーストリア大公国の領地であったため、劇場のバルコニー席を有する90人の裕福なミラノ市民が、オーストリア大公のフェルディナント・フォン・エスターライヒ(Ferdinanad von Osterreich:1754年ー1806年)に対して、新しい劇場の建設と新劇場が完成するまでの間の仮劇場の提供を依頼した。


新古典主義の建築家であるジュゼッペ・ピエルマリーニ(Giuseppe Piermarini:1734年ー1808年)が、新劇場の設計第1案を作成したが、オーストリア長官のフィルミアン伯爵(Count Firmian)により却下。

その後、ジュゼッペ・ピエルマリーニによる設計第2案が、神聖ローマ帝国皇帝の皇后で、オーストリア大公国の君主(実質的な女帝)であるマリア・テレジア(Maria Theresia:1717年ー1780年)により承認された。

なお、マリア・テレジアは、オーストリア大公(在位期間:1740年ー1780年)、ハンガリー女王(在位期間:1740年ー1780年)、そして、「ボヘミアの醜聞」に出てくるボヘミア女王(在位期間:1740年ー1741年 / 1743年ー1780年)を務めている。


マリア・テレジアによる設計承認を受け、以前、サンタ・マリア・アラ・スカラ教会(Church of Santa Maria alla Scala)が所在していた場所において、1776年に新劇場の建設が始まり、2年後の1778年に完成を迎えた。新劇場は、教会の名前に因んで、「国立スカラ新劇場(Nuovo Regio Ducal Teatro alla Scala)」と名付けられた。

そして、1778年8月3日に、新劇場において、アントニオ・サリエリ(Antonio Salieri:1750年ー1825年)作「見出されたエウローパ(Europa riconosciuta)」のこけら落とし(Opening performance)が行われた。


スカラ座は、イタリアオペラ界最高峰の歌劇場と見做されており、以下のオペラ作品が、スカラ座において、世界初演(World premieres)を迎えている。


(1)1840年 - ジュゼッペ・フォルトゥニーノ・フランチェスコ・ヴェルディ(Giuseppe Fortunino Francesco Verdi:1813年ー1901年)作「一日だけの王様(Un giorno di reno)」

(2)1842年 - ヴェルディ作「ナブッコ(Nabucco)」

(3)1904年 - ジャコモ・アントニオ・ドメニコ・ミケーレ・セコンド・マリア・プッチーニ(Giacomo Antonio Domenico Michele Secondo Maria Puccini:1858年ー1924年)作「蝶々夫人(Madame Butterfly)」

(4)1926年 - プッチーニ作「トゥーランドット(Turandot)」


「ボヘミアの醜聞」に登場するアイリーン・アドラーは、1858年、米国のニュージャージー州生まれなので、彼女が出演したスカラ座は、1778年に再建された2代目の建物である。

アイリーン・アドラーがスカラ座に出演した正確な年月日は不明であるが、その頃のオーストリア皇帝は、フランツ・ヨーゼフ1世(Franz Joseph I:1830年ー1916年 在位期間:1848年-1916年)で、彼も観劇したかもしれない。


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