テイト・ブリテン美術館に展示されている ジョン・シンガー・サージェント作「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」 <筆者が撮影> |
1888年12月29日に、ライシアム劇場(Lyceum Theatre → 2014年7月12日付ブログで紹介済)において初演されたイングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)作の悲劇「マクベス(Macbeth → 2023年7月30日付ブログで紹介済)」(1606年)を観劇して、感銘を受けた米国人の画家であるジョン・シンガー・サージェント(John Singer Sargent:1856年ー1925年 → 2023年7月28日付ブログで紹介済)は、早速、絵画の制作に取り掛かった。
なお、その際、主役のマクベス(Macbeth)を演じたのは、シェイクスピア俳優のサー・ヘンリー・アーヴィング(Sir Henry Irving:1838年ー1905年)で、マクベス夫人(Lady Macbeth)を演じたのが、英国の舞台女優であるアリス・エレン・テリー(Alice Ellen Terry:1847年ー1928年)であった。
ジョン・シンガー・サージェントは、アリス・エレン・テリーをモデルにして制作した油絵が、「マクベス夫人を演じるエレン・テリー(Ellen Terry as Lady Macbeth)」(1889年)である。
アリス・エレン・テリーは、絵画「希望(Hope → 2023年6月4日付ブログで紹介済)」(1886年)を描いた英国ヴィクトリア朝時代の画家 / 彫刻家であるジョージ・フレデリック・ワッツ(George Frederic Watts:1817年ー1904年 → 2023年6月12日 / 6月16日付ブログで紹介済)の妻だった人物である。
テイト・ブリテン美術館に展示されている ジョージ・フレデリック・ワッツ作「希望」 <筆者が撮影> |
1864年(2月20日)に、ジョージ・フレデリック・ワッツは、アリス・エレン・テリーと結婚する。結婚後、彼は、若き妻の肖像画を描いている。
アリス・エレン・テリーの誕生日は、1847年2月27日で、結婚当時、彼女は、17歳の誕生日の7日前だったため、ジョージ・フレデリック・ワッツとは、30歳近い年の差があった。また、彼女は、演劇一家の生まれで、後に英国演劇を代表する女優の一人となり、「Dame」の称号を受ける。
しかし、結婚後1年も経たないうちに、妻のアリス・エレン・テリーは、別の男性と駆け落ちをしまった結果、ジョージ・フレデリック・ワッツは、彼女と離婚できるのに、10年以上先の1877年までの期間を要したのである。
ナショナルポートレートギャラリー (National Portrait Gallery)で販売されている アリス・エレン・テリーの肖像画 (Oil on strawboard mounted on Gatorfoam 472 mm x 352 mm) - ジョージ・フレデリック・ワッツが 1864年の結婚後に描いた若き妻の肖像画である。 |
ジョン・シンガー・サージェント作「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」が、制作年である1889年に、ロンドンで展覧された。続いて、1890年にパリで、1893年にシカゴで、そして、1896年にリヴァプールで展覧が行われた。
シェイクスピア俳優のサー・ヘンリー・アーヴィングは、ライシアム劇場で展示するために、ジョン・シンガー・サージェントから「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」を買い取った。
ライシアム劇場の建物正面を見上げたところ <筆者が撮影> |
サー・ヘンリー・アーヴィングが1905年に亡くなった後、「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」は、オークションハウス(=競売会社)であるクリスティーズ(Christie’s → 2014年12月14日付ブログで紹介済)へ売却された。
キングストリート(King Street)沿いにあるクリスティーズ入口脇にある銘板 <筆者が撮影> |
オークションを経て、「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」を購入した美術商であるジョーゼフ・ジョエル・ドゥヴィーン(Joseph Joel Duveen:1843年ー1908年)が、1906年にテイト・ブリテン美術館(Tate Britain → 2018年2月18日付ブログで紹介済)へ寄贈している。
テイト・ブリテン美術館の建物正面を階段下から見上げたところ <筆者が撮影> |
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