アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「死者のあやまち(Dead Man’s Folly)」(1956年)の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第68話(第13シリーズ → 2023年3月25日 / 3月28日 / 3月31日付ブログで紹介済)として、2013年11月6日に放映されている。
放映順としては、「死者のあやまち」の後に、第69話「ヘラクレスの難業(The Labours of Hercules)」と第70話「カーテン:ポワロ最後の事件(Curtain : Poirot’s Last Case)」が存在しているものの、撮影順としては、「死者のあやまち」が一番最後で、そう言った意味では、非常に重要な作品となっている。
当該 TV ドラマ版の放映10周年を記念してか、英国の HarperCollinsPublishers 社から、今年、「死者のあやまち」の愛蔵版(ハードバック版)が出版されているので、紹介致したい。
アガサ・クリスティーの孫に該るマシュー・プリチャード(Mathew Prichard:1943年ー)が序文を寄せ、「死者のあやまち」の TV ドラマ版、祖母のアガサ・クリスティーやグリーンウェイ(Greenway)の思い出、そして、「死者のあやまち」が執筆された経緯等について、語っている。
「死者のあやまち」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第48作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズに属する長編のうち、第27作目に該っている。
1954年11月、アガサ・クリスティーは、自分の生まれ故郷デヴォン州のチャーストン フェラーズ(Churston Ferrers)にあるセントメアリー聖母教会(St. Mary the Virgin Church)に寄付するため、ある中編を執筆して、その印税収入を充てようとした。そこで、彼女は自分の住まいがあるグリーンウェイを小説の舞台にした。それが、「エルキュール・ポワロとグリーンショア屋敷の阿房宮(Hercule Poirot and the Greenshore Folly → 2014年9月27日付ブログで紹介済)」である。殺人事件が発生する小説の舞台に実在の場所である「グリーンウェイ」をそのまま使用できないので、「グリーンショア」と変更したものと思われる。なお、この中編は、雑誌掲載には難しい長さであったため、残念ながら、未発表のままに終わっている。
上記の中編の代わりに、アガサ・クリスティーは、ミス・ジェイン・マープルを主人公とした短編「グリーンショウ氏の阿房宮(Greenshaw's Folly)」を教会に寄付している。
2014年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された アガサ・クリスティー作「エルキュール・ポワロとグリーンショア屋敷の阿房宮」の ハードカバー版本体の見開き画 (By Mr. Tom Adams) |
アガサ・クリスティーは、中編「エルキュール・ポワロとグリーンショア屋敷の阿房宮」を長編にして、2年後の1956年に出版している。それが「死者のあやまち」である。
中編と長編を比較すると、物語のメイン舞台となるのが、グリーンショア屋敷とナス屋敷(Nasse House)で名前が異なることや登場人物の名前の一部が変更されていること等を除くと、基本的なプロットは同じである。
「Folly」を辞書で調べると、「あやまち」や「阿房宮」等、複数の意味がある。長編を読んだ方だと判ってもらえると思うが、物語の中で「阿房宮」はとても重要な役割を担っているし、また、「死者のあやまち」というのも、なかなか意味深な内容で、二重の意味をもつ「Folly」を使うクリスティーのタイトルの付け方も素晴らしい。
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