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英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から 2021年に刊行されている Pushkin Vertigo シリーズの一つである 横溝正史作「八つ墓村」の内表紙 (Cover design by Anna Morrison) |
日本の推理作家である横溝正史(Seishi Yokomizo:1902年ー1981年)による長編推理小説で、金田一耕助(Kosuke Kindaichi)シリーズの長編第4作目に該る「八つ墓村(The Village of Eight Graves)」(1949年ー1951年)の場合、鳥取県(Tottori Prefecture)と岡山県(Okayama Prefecture)の県境にある人里離れた山間に所在するある村が「八つ墓村(village of Eight Graves)」と呼ばれるようになった経緯(戦国大名の一人である尼子氏の家臣だった8人の落ち武者達を、毛利元就(Motonari Mori)からの褒賞金に目が眩んだ村人達が惨殺 → 彼らの祟りを恐れた村人達が、彼らを村の守り神として奉る)、そして、1923年(大正12年)4月に、8人の落ち武者達を皆殺しにした際の村の首謀者である田治見庄左衛門(Shozaemon Tajimi)の子孫で、田治見家の当主となった田治見要蔵(Yozo Tajimi)が、日本刀と猟銃で武装し、合計で32人の村人達を次々に殺戮して、山奥へと姿を消した事件が語られた後、物語が本格的に始まる。
ここからは、主人公となる寺田辰弥(Tatsuya Terada)による回想手記の形式で進行していく。
自分と子供の身の危険を感じ、生後半年程の辰弥を連れて、田治見要蔵の元を逃げ出し、姫路市(Himeji City)に住む親戚の家に身を寄せていた井川鶴子(Tsuruko Ikawa)は、その後、造船所の親方である寺田虎造(Torazo Terada)と結婚して、神戸市(Kobe City)で暮らしていたが、辰弥が7歳のときに、母鶴子が亡くなる。
母鶴子亡き後、義父である寺田虎造と再婚した義母は、辰弥によくしてくれたが、彼女の実子である弟妹が生まれたため、距離ができてしまった。
そして、商業学校を卒業した年に、義父虎造と喧嘩して、家を飛び出した辰弥は、友人の所に転がり込んだが、兵隊に召集され、南方へ送られた。
太平洋戦争(1941年ー1945年)の翌年(1946年)、辰弥は日本に復員したが、神戸市一帯が空襲で焼かれており、義父虎造は造船所で死亡し、また、義父虎造の再婚相手と弟妹の所在は判らなくなっていたため、天涯孤独の身となる。
やむを得ず、辰弥は、学校時代の友人の世話により、化粧品会社に勤務し、友人夫婦宅に寄宿していた。
それから2年後の1948年(昭和23年)5月25日、辰弥は、ラジオで彼の行方を探していた諏訪法律事務所(Suwa Legal Practice)を訪れた。
諏訪弁護士(Mr. Suwa)は、辰弥に対して、「君の身寄りが、君を探している。」と告げる。
その数日後、辰弥の元に、「八つ墓村に帰って来てはならぬ。お前が村に帰って来たら、26年前の大惨事が再び繰り返され、八つ墓村は血の海へと化すであろう。(You must never set foot in the village of Eight Graves again. Nothing good will come of it. The gods here are angry. If ever you come back, there will be blood ! The carnage that took place twenty-six years ago will repeat itself, and the village will once again become a sea of blood.)」と告げる匿名の手紙が届いた。
その後、諏訪法律事務所において、辰弥は、彼の身寄りである田治見家の使者で、母方の祖父である井川丑松(Ushimatsu Ikawa)に引き合わされるが、その会見の場で、祖父丑松が突然血を吐いて亡くなってしまう。
検死の結果、何者かが祖父丑松の喘息薬のカプセルに毒を混入したことが判明。
そんな最中、辰弥の大伯母から依頼を受けた森美也子(Miyako Mori)が、辰弥を迎えに現れる。
森美也子から、辰弥は、
*田治見家には、辰弥の異母兄姉に該る久弥(Hisaya Tajimi)と春代(Haruyo Tajimi)が居るものの、2人とも病弱であること
*久弥と春代には、里村慎太郎(Shintaro Satomura)と典子(Noriko Satomura)と言う従兄妹が居て、久弥と春代が亡くなった場合、慎太郎が田治見家を継ぐことになること
*辰弥の大伯母に該る双子の小竹(Totake Tajimi)と小梅(Come Tajimi)は、辰弥が田治見家の跡取りになるのを望んでいること
*森美也子は、田治見家と並ぶ資産家である野村家の当主である壮吉(Shokichi Nomura)の義妹で、未亡人であること
等の説明を受けた。
こうして、辰弥は、田治見家の跡取りとして、八つ墓村に呼び戻されるが、匿名の手紙が告げた通り、そこで連続殺人事件に巻き込まれることになるのであった。

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