2025年1月1日水曜日

コナン・ドイル作「青いガーネット」<小説版>(The Blue Carbuncle by Conan Doyle )- その1

英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、
2022年に発行されたシャーロック・ホームズをテーマにしたトランプのうち、
4 ♦️「太った白いガチョウ(Dead Goose)」


サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「青いガーネット(The Blue Carbuncle)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、7番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1892年1月号に掲載された。

また、同作品は、同年に発行された第1短編集「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」に収録されている。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年1月号に掲載された挿絵(その1) -

ある年の12月27日の朝、ジョン・H・ワトスンがシャーロック・ホームズの元を訪れるところ、
彼は紫色の化粧着を着て、ソファーの上で寛いでいた。
そして、ソファーの隣りに置かれた椅子の上には、薄れてボロボロになった固いフェルト製帽子が掛かっていた。
左側の人物が、シャーロック・ホームズで、
右側の人物が、ジョン・H・ワトスン。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)

ある年のクリスマスから2日目の朝(on the second morning after Christmas)である12月27日、ジョン・H・ワトスンがベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)を訪問すると、紫色の化粧着を着たシャーロック・ホームズは、ソファーの上で寛いでいたところだった。



ソファーの隣りに置かれた木製椅子の背もたれの角には、薄れてボロボロになった固いフェルト製帽子が掛けられていて、ホームズは拡大鏡とピンセットでこの帽子を調べていたようであった。ワトスンの問いに、ホームズは「この帽子は、退役軍人(commissionaire)のピータースン(Peterson)が置いていったものだ。」と答える。

そして、ホームズは、ワトスンに対して、トッテナムコートロード(Tottenham Court Road → 2015年8月15日付ブログで紹介済)とグッジストリート(Goodge Street → 2014年12月27日付ブログで紹介済)の角において、ピータースンがボロボロになった帽子と丸々と太った白いガチョウを手に入れることになった経緯を語り始めた。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年1月号に掲載された挿絵(その2) -
クリスマスの早朝、宴席から帰る途中の退役軍人ピータースンが、
トッテナムコートロード(Tottenham Court Road)とグッジストリート
の角で
発生した喧嘩の現場に残された帽子とガチョウを、
ベイカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元に届けて来た。
画面右側の人物が、退役軍人のピータースン。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(1860年 - 1908年)


「まず最初に、この帽子がどのような経緯でここにやって来たのかを説明しよう。この帽子は、クリスマスの朝、丸々と太ったガチョウと一緒にここに持ち込まれたんだ。今頃、ガチョウはピータースンの竃(かまど)の前で火に炙られているに違いない。事実関係はこんな風だ。君も知っている通り、ピータースンは非常に実直な男だ。クリスマスの朝4時頃、彼はちょっとした宴席から帰るところで、トッテナムコードロードを家に向かって歩いていた。彼の前方には、ガス灯の明かりの中、白いガチョウを肩にかけた背の高い男が千鳥足で歩いているのが見えた。ピータースンが(トッテナムコートロードと)グッジストリートの角に来た時、背の高い男と街のゴロツキ達の間で喧嘩が始まったんだ。ゴロツキ達の一人が背の高い男の帽子を叩き落としたので、男が自分の身を守ろうと、ステッキを持ち上げて、頭上で振り回したところ、はずみで後ろにあった商店のショーウィンドのガラスを割ってしまった。男をゴロツキ達から守ろうと、ピータースンはその場に駆け付けた。ところが、男はショーウィンドのガラスを割ってしまったことに動揺していた上に、警察官のような制服を着た人間が自分の方に向かって来るのを見て、ガチョウを落とし、慌てて逃げ出したんだ。そして、男はトッテナムコートロードの裏に横たわる迷路のような小さな通りの中に消えてしまった。ゴロツキ達もまたピータースンの登場に驚いて逃去った。その結果、ピータースンは一人喧嘩の現場に取り残され、そして、勝利の戦利品として、つぶれた帽子と申し分のないクリスマスのガチョウだけが彼の手の中に残ったんだ。」


グッジストリートの西側から東方面を見たところ
奥に見えるのが、トッテナムコートロード -
クリスマスの早朝、宴席から帰る途中の退役軍人ピータースンが、
喧嘩の現場に残された帽子とガチョウを見つけたのは、
画面の奥辺りである。


‘And, first, as to how it came here. It arrived upon Christmas morning, in company with a good fat goose, which is, I have no doubt, roasting at this moment in front of Peterson's fire. The facts are these : about four o'clock on Christmas morning, Peterson, who, as you know, is a very honest fellow, was returning from some small jollification and was making his way homeward down to Tottenham Court Road. In front of him he saw, in the gaslight, a tallish man, walking with a slight stagger and carrying a white goose slung over his shoulder. As he reached the corner of Goodge Street, a row broke out between this stranger and a little knot of roughs. One of the latter knocked off the man's hat, on which he raised his stick to defend himself, and, swinging it over his head, smashed the shop window behind him. Peterson had rushed forward to protect the stranger from his assailants, but the man, shocked at having broken the window and seeing an official-looking person in uniform rushing towards him, dropped his goose, took to his heels and vanished amid the labyrinth of small streets which lie at the back of Tottenham Court Road. The roughs had also fled at the appearance of Peterson, so that he was left in possession f the field of battle, and also of the spoils of victory in the shape of this battered hat and a most unimpeachable Christmas goose.’


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