2025年1月4日土曜日

<第1700回> コナン・ドイル作「青いガーネット」<小説版>(The Blue Carbuncle by Conan Doyle )- その4

英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年1月号に掲載された挿絵(その5) -

ヘンリー・ベイカーからの話を聞いた後、

ジョン・ワトスンを伴い、アルファインへ赴いたシャーロック・ホームズは、

そこで主人のウィンディゲートから、

「問題のガチョウは、コヴェントガーデンマーケットにあるブレッキンリッジの店から仕入れた」ことを聞き付ける。

そこで、ホームズとワトスンの2人は、ブレッキンリッジの店へと向かった。

画面左側から、ジョン・H・ワトスン、シャーロック・ホームズ、
ブレッキンリッジ、そして、店仕舞いをする少年が描かれている。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)


サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「青いガーネット(The Blue Carbuncle)」は、ある年のクリスマスから2日目の朝(on the second morning after Christmas)である12月27日、ジョン・H・ワトスンがベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を訪れるところから、その物語が始まる。


ワトスンが部屋に入ると、紫色の化粧着を着て、ソファーの上で寛ぐシャーロック・ホームズは、ソファーの隣りに置かれた木製椅子の背もたれの角に掛けられている薄れてボロボロになった固いフェルト製帽子を、拡大鏡とピンセットで調べている最中だった。


ホームズによると、クリスマスの早朝、宴席から帰る途中の退役軍人(commissionaire)のピータースン(Peterson)が、トッテナムコートロード(Tottenham Court Road → 2015年8月15日付ブログで紹介済)とグッジストリート(Goodge Street → 2014年12月27日付ブログで紹介済)の角において発生した喧嘩の現場に残された帽子とガチョウを、彼の元に届けて来た、とのこと。

喧嘩の現場に残されていた帽子には、「H. B.」のイニシャルが、そして、ガチョウの左脚には、「ヘンリー・ベイカー夫人へ(For Mrs. Henry Baker)」と書かれた札が付いており、それらが今判る情報の全てだった。

帽子については、ホームズがピータースンから預かり、ガチョウに関しては、そのままの状態で長く保管しておくことができないため、ホームズはピータースンに持ち帰らせていた。


丁度そこへ、退役軍人のピータースンが慌てて駆け込んで来る。

料理するために、彼の妻がガチョウの腹を裂いたところ、その餌袋の中から、ホテルコスモポリタン(Hotel Cosmopolitan)に滞在していたモーカー伯爵夫人(Countess of Morcar)の元から12月22日に盗まれて、懸賞金がかかっている「青いガーネット(blue carbuncle)」が出てきたのだ。


喧嘩の現場に問題のガチョウを落とした後、居なくなったヘンリー・ベイカー(Mr. Henry Baker)が、今回の事件の鍵を握っていると考えたホームズは、ロンドン中の新聞(Globe / Star / Pall Mall / St. James’s Gazette / Evening News / Standard / Echo 等)に、ガチョウと帽子の持ち主を探す広告を載せたところ、ヘンリー・ベイカー本人が、ホームズの元に名乗り出て来た。


ヘンリー・ベイカーによると、大英博物館(British Museum → 2014年5月26日付ブログで紹介済)の近くにあるパブ「アルファイン(Alpha Inn → 2015年12月19日付ブログで紹介済)」の主人ウィンディゲート(Windigate)がガチョウクラブを始め、毎週数ペンスずつ積み立てていくと、各人クリスマスにガチョウを一羽ずつ受け取れる仕組みだと言う。

ホームズが話をした限りでは、ヘンリー・ベイカーが、ホテルコスモポリタンでの宝石盗難事件と無関係であることは、確実だった。


ジョン・ワトスンを連れて、アルファインに赴いたホームズは、そこで主人のウィンディゲートから、「問題のガチョウは、コヴェントガーデンマーケット(Covent Garden Market → 2016年1月9日付ブログで紹介済)にあるブレッキンリッジ(Breckinridge)の店から仕入れた」ことを聞き付ける。

そこで、2人はブレッキンリッジの店へと向かった。


ハイホルボーン通り(High Holborn)側から見た
エンデルストリート(Endell Street → 2015年12月26日付ブログで紹介済)


私達はホルボーンを横切り、エンデルストリートを下り、スラム街をジグザグに抜けて、コヴェントガーデンマーケットへと向かった。最も大きな店の一軒がブレッキンリッジという看板を掲げており、そこでは、きちんと整えた頬髭を生やして、鋭い顔つきをした馬面の経営者が店仕舞いをする少年を手伝っていた。

「こんばんは。今夜は冷え込むね。」と、ホームズは声をかけた。

経営者は頷いて、いぶかるような視線をホームズに向けた。

「ガチョウは全部売れ切れたようだね。」と、ホームズは空の大理石の台を指差して続けた。


エンデルストリートの北側は、
ロンドン・カムデン区(London Borough of Camden)に属している。

エンデルストリートの南側は、
シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)に属している。


We passed across Holborn, down Endell Street, and so through a zigzag of slums to Covent Garden Market. One of the largest stalls bore the name of Breckinridge upon it, and the proprietor, a horse-looking man, with a sharp face and trim-side-whiskers, was helping a boy to put up the shutters.

'Good-evening. It's a cold night,' said Holmes.

The salesman nodded and shot a questioning glance at my companion.

'Sold out of geese, I see,' continued Holmes, pointing at the bare slabs of marble.


サウザンプトンストリート(Southampton Street)沿いの建物壁面に架けられている
「コヴェントガーデンマーケット」の看板


ブレッキンリッジは、捻くれ者で、ガチョウの仕入れ先をなかなか教えてくれなかったが、賭け事にする手法で、ホームズは、彼から必要な情報を得ることができた。

なんと、その店には、もう一人、ガチョウの販売先を聞きに来ていた。その男は、ホテルコスモポリタンの客室係(upper-attendant at the hotel)のジェイムズ・ライダー(James Ryder)であった。


コヴェントガーデンマーケット内のクリスマス用装飾


事件の解決は、目前だった。


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