サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「青いガーネット(The Blue Carbuncle → 2025年1月1日 / 1月2日 / 1月3日 / 1月4日付ブログで紹介済)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、7番目に発表された作品で、英国の「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1892年1月号に掲載された。
英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が制作した「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)において、TV ドラマとして映像化され、第1シリーズ(The Adventures of Sherlock Holmes)の第7エピソード(通算では第7話)として、英国では、1984年6月5日に放映された「青いガーネット」の場合、帽子とガチョウの持ち主であるヘンリー・ベイカー(Henry Baker)が、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を訪れた以降も、コナン・ドイル作「青いガーネット」対比、以下の相違点がある。
(1)
<原作>
ベイカーストリート221B を訪れたヘンリー・ベイカーは、ホームズに対して、「昼間は、大英博物館で過ごしています。(we are to be found in the Museum itself during the day, you understand.)」と説明している。
<グラナダテレビ版>
ヘンリー・ベイカーは、ホームズに対して、「大英博物館で、他の人が調べものや探しものをするのを手伝って、お金を稼ぐことで、慎ましくとも、ちゃんとした生計を立てています。本については、結構詳しんです。(I made a humble and respectable living in the British Museum, helping others with their studies. I have a certain knowledge of books.)」と、原作よりもより踏み込んだ説明を行っている。
(2)
<原作>
ヘンリー・ベイカーからの話を聞いたホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、大英博物館(British Museum → 2014年5月26日付ブログで紹介済)の近くにあるパブ「アルファイン(Alpha Inn → 2015年12月19日付ブログで紹介済)」へと向かい、その経営者であるウィンディゲート(Windigate)から、問題のガチョウの仕入先が、コヴェントガーデンマーケット(Covent Garden Market → 2016年1月9日付ブログで紹介済)において、ガチョウの店を営んでいる「ブレッキンリッジ(Breckinridge)」だと言う情報を入手する。
<グラナダテレビ版>
「ブレッキンリッジ(Breckinridge)」の名前が、何故か、「ブレッケンリッジ(Breckenridge)」へと変更されている。
(3)
<グラナダテレビ版>
ホテルコスモポリタン(Hotel Cosmopolitan)に宿泊していたモーカー伯爵夫人(Countess of Morcar)の宝石箱から「青いガーネット(blue carbuncle)」を盗んだ犯人として逮捕された修理工であるジョン・ホーナー(John Horner:36歳)が居る留置場を、彼の妻であるジェニー・ホーナー(Jennie Horner)が、面会のため、訪れる場面が挿入される。
<原作>
原作上、ジョン・ホーナー(26歳)の妻は登場しないので、このような場面はない。
上記以降、コヴェントガーデンマーケット、そして、ベイカーストリート221B へと舞台を移して、ホテルコスモポリタンの客室係(hotel attendant)であるジェイムズ・ライダー(James Ryder)が、ホームズに対して、「青いガーネット」を盗んだことを白状した後、ホームズがジェイムズ・ライダーを追い出す場面までは、基本的に、原作 / グラナダテレビ版も、変わりはない。
(4)
<原作>
ホームズは、クレイパイプに手を伸ばしながら、言った。「ワトスン、結局のところ、僕は、警察の人員不足を補うために、雇われている訳じゃない。もしジョン・ホーナーが「青いガーネット」を盗んだ罪に問われるのであれば、話は違ってくるけどね。しかし、あの男(ジェイムズ・ライダー)が、ジョン・ホーナーの反対尋問のために、法廷に現れることはないだろうから、ジョン・ホーナーに対する公判は維持できないに違いない。僕は重罪を犯していると思うが、一方で、一つの魂を救ったとも言える。あいつは、もう二度と悪事には手を出さないだろう。何故ならば、心底から恐怖に怯えているからだ。ここで、あの男を監獄へ送れば、一生、監獄を行ったり来たりとなる。それに、今は丁度赦しの時期じゃないか。今回、偶然と言う依頼人が、非常に稀に見る風変わりな事件を、僕達に持ち込んでくれた訳だが、解決が僕達にとっての報酬と言える。ワトスン、そこのベルを鳴らして、ハドスン夫人に夕食を運んでくれるように頼んでくれないか。僕達も、別の調査に取り掛かろうじゃないか。こっちも、今回の事件と同様に、鳥が主役になるね。
‘After all, Watson,’ said Holmes, reaching up his hand for his clay pipe, ‘I am not rained by the police to supply their deficiencies. If Horner were in danger it would be another thing; but this fellow will not appear against him, and the case must collapse. I suppose that I am commuting a felony, but it is just possible that I am saving a soul. This fellow will not go wrong again; he is too terribly frightened. Send him to gaol now, and you make him a gaolbird for life. Besides, it is the season of forgiveness. Chance has put in our way a most singular and whimsical problem, and its solution is its own reward. If you will have the goodness to touch the bell, doctor, we will begin another investigation, in which also a bird will be the chief feature.’
上記の通り、原作の最後、事件が解決したこと、また、クリスマスシーズンであることもあって、ホームズの機嫌は非常に穏やかである。
<グラナダテレビ版>
ホームズが犯人であるジェイムズ・ライダーを見逃したことについて、ワトスンがやや意を唱えたところ、ホームズは非常に激昂している。
< Watson > I must confess, Holmes, to being al little surprised.
< Holmes > I am not retained by the police to supply their deficiencies !(激昂して、叫んでいる。)
< Watson > (無言)
< Holmes > Maybe I am committing a felony, but I may be saving a soul. Send him to jail, he’ll be a jailbird for life.(このセリフについては、静かに喋っている。)
< Watson > (ベイカーストリートの路上を走り去るジェイムズ・ライダーの姿を、窓越しに見ている。)
< Holmes > (机の引き出しの中に、「青いガーネット」を仕舞う。引き出しの中には、アイリーン・アドラー(Irene Adler)の写真も入っている。)It is the season of forgiveness.
< Watson > Midnight ! Merry Christmas, Holmes.
< Holmes > And to you, my dear friend.
< Watson > Just a minute. Holmes, I cannot contemplate eating while John Horner is still on remand. Do you suppose that Bradstreet or one of his colleagues might be there ?
< Holmes > Well .. You’re quite right, Watson, Come, let’s go.
こうして、クリスマスの食事を終えたホームズとワトスンの2人は、ベイカーストリート221B を出ると、ジョン・ホーナーが無実であることを説明するために、スコットランドヤードのブラッドストリート警部(Inspector Bradstreet - 原作には登場しない)の元へと向かったものと思われる。
そして、物語の最後、警察から釈放されたジョン・ホーナーを、妻のジェニー・ホーナーが出迎え、彼の元へ2人の子供達(姉と弟)が駆け寄って行く場面で終わっている。
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