2024年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された アガサ・クリスティー作「ゼロ時間へ」の 愛蔵版(ハードカバー版)の裏表紙 (Cover design by HarperCollinsPublishers Ltd. / Cover illustration : Courtesy of the Mill at Sonning Theatre) |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1944年に発表した長編推理小説である第34作目「ゼロ時間へ(Towards Zero)」の場合、金持ちの未亡人で、寝たきりのカミラ・トレシリアン夫人(Lady Camilla Tressilian - 70代初め)が、夏の間、ソルトクリーク(Saltcreek)の海辺の邸宅である「ガルズポイント(Gull’s Point)」に避暑客を招くところから、物語が始まる。
カミラ・トレシリアン夫人の亡き夫の被後見人で、テニス選手であるネヴィル・ストレンジ(Nevile Strange - 33歳)は、例年通り、彼女を訪問するが、今回はいつもと異なることがあった。
ネヴィル・ストレンジは、カミラ・トレシリアン夫人に対して、新妻のケイ・ストレンジ(Kay Strange - 23歳)と前妻のオードリー・ストレンジ(Audrey Strange - 32歳)の2人を、「ガルズポイント」に招待したいと提案したのであった。ネヴィル・ストレンジの新妻ケイと前妻オードリーの2人が性格的に相容れないと考えたカミラ・トレシリアン夫人ではあったが、ネヴィル・ストレンジの提案を不承不承に了承する。
また、オードリー・ストレンジの従兄弟で、彼女に対して、長年の間、想いを寄せているトーマス・ロイド(Thomas Royde)も、休暇を取得して、マレーシアでの海外勤務から帰国し、「ガルズポイント」を訪れる。
更に、ケイ・ストレンジの友人であるテッド・ラティマー(Ted Latimer)と、トレシリアン夫妻と長年の友人で、元弁護士であるトリーヴス氏(Mr. Treves - 約80歳)も近くのホテルに滞在していた。
2024年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された アガサ・クリスティー作「ゼロ時間へ」の愛蔵版(ハードカバー版)に付されている カミラ・トレシリアン夫人の邸宅「ガルズポイント」とその周辺の地図 |
ネヴィル・ストレンジから提案を受けた当初から、カミラ・トレシリアン夫人が懸念していた通り、「ガルズポイント」で開催されたパーティーは、非常に居心地の悪いものだった。やはり、ネヴィル・ストレンジの新妻ケイと前妻オードリーの2人は、どうしても相容れなかったのである。
「ガルズポイント」の夕食会に招かれた元弁護士のトリーヴス氏は、参加者に対して、昔の事件の話を始めた。それは、ある子供が友達を弓矢で撃ってしまった事故だが、トリーヴス氏によると、友達を弓矢で撃ってしまった子供が事前に弓矢の練習をしている現場を、近所の男性が目撃した、とのことだった。さらに、トリーヴス氏は、友達を弓矢で撃ってしまった子供には、身体的な特徴があり、今会っても、直ぐに判ると語る。
「ガルズポイント」における夕食会の席上、唐突に奇妙な話を語ったトリーヴス氏であったが、翌朝、ホテルの部屋で亡くなっているのが見つかったのである。
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