2024年12月23日月曜日

木原敏江作「それは常世のレクイエム~夢みるゴシック~(Gothicism - dreaming by Toshie Kihara)」- その2


前回(→ 2024年12月16日付ブログで紹介済)に引き続き、日本の漫画家 / イラストレーターである木原敏江(Toshie Kihara:1948年ー)2012年に株式会社秋田書店からプリンセスコミックス(Princess Comics)として出版した漫画「それは常世のレクイエム~夢みるゴシック~(Gothicism - dreaming)」に収録されている物語について、個別に紹介したい。


まず一つ目は、「それは怪奇なセレナーデ」である。

「それは怪奇なセレナーデ」は、前編と後編に別れており、前編は、2012年プリンセス GOLD 2月号に、また、後編は、2012年プリンセス GOLD 3月号に掲載された。



物語は、19世紀初期の英国において、ポーリーン・レミントンが、親友のグレイス・ロイスの葬儀に立ち会う場面から始まる。


ポーリーン・レミントンは、地主階級出身の名門の末娘であるヘレン・レミントンが、親の反対を押し切り、ジャンブラーであるブライアン・フィールズと駆け落ち結婚をして生まれた一人娘で、12歳の時、事故に巻き込まれて、建物の下敷きになった。その際、彼女の両親が自分達の身体の下に彼女をかばった。両親のおかげで、彼女は無事に建物の瓦礫の中から無事に生還したが、それと引き換えに、両親を失ってしまう。その後、彼女は、孤児院へと入れられた。

ヘレン・レミントンの父で、ポーリーン・レミントンの祖父に該る当主はには、3人の子供が居たが、2人の息子は、結婚前に軍に入隊し、ナポレオン戦争で戦死。また、末娘であったヘレンも既に亡くなっていたため、レミントン家の跡取りとなる孫娘のポーリーンの行方を捜索していた。

孤児院に引き取られ、3年が経過して、14歳になっていたポーリーン・レミントンは、祖父の依頼に基づき、彼女を探していた弁護士により、孤児院で発見され、レミントン家へと戻ることになったが、祖父から「全力でレミントン家を守り立てていく務めがある。」と連日言われ続ける。


3年前の15歳の時、ポーリーン・レミントンは、某家の婚約発表パーティーに出席していた。退屈なパーティーと退屈な人達に閉口していた彼女に、成金の娘であるグレイス・ロイスが話しかけた。

パーティーを抜け出した2人は、読書好きなこともあって、それが縁となり、大の親友になるまでに、時間はかからなかった。



半年程前、ポーリーン・レミントンは、グレイス・ロイスから、「いま、とても素敵な方と恋をしているの。もうじき、正式に婚約したら、全部話すから、それまでは誰にも秘密よ!お母様達にもね。」と告白される。

ところが、先週、ポーリーン・レミントンがグレイス・ロイスの元を訪ねたところ、グレイス・ロイスの顔は真っ青で、異様な憔悴ぶりだった。更に、グレイス・ロイスは、「怪物は、この世にいるかもしれないわ。例えば、人の心を乱すロマンチックな恋人の姿をして。」と呟いた。


そして、その数日後、グレイス・ロイスは、18歳と言う若い生涯を終えた。

噂によると、彼女は、急に「気分が悪い。」と言うと、部屋をとび出して、階段を踏み外し、転落した、とのことだった。



グレイス・ロイスを埋葬する際、葬儀の出席者達から、一人の美貌の青年が進み出た。

彼は、英国のロマン派詩人である第6代バイロン男爵ジョージ・ゴードン・バイロン(George Gordon Byron, 6th Baron Byron:1788年ー1824年 → 2021年5月9日および2024年8月24日 / 8月30日付ブログで紹介済)で、グレイス・ロイスへの献詩を申し出るのであった。


バイロン卿(Lord Byron)がグレイス・ロイスの恋人だったのではないかと疑うポーリーン・レミントンであったが、葬儀から帰宅すると、グレイス・ロイスからの手紙が届いていた。そこには、「本の中の怪物が、私の恋人だったわ。怪奇、それとも、幻想のトレミー。私は恐ろしい。ああ神様。」と言う謎の言葉が書かれていたのである。


後日、ポーリーン・レミントンが、グレイス・ロイスのお墓を訪れると、彼女の墓碑にすがって泣く線の細い綺麗な青年の姿を見かけた。

ポーリーン・レミントンに気づいた青年は、「美しいグレイス嬢と愛し合っていたのです。」と告げる。

彼は、社交界でも指折りの名門である若きトレミー・ブランドン伯爵だった。


日本の出版社である東京創元社から刊行されている
メアリー・シェリー作「フランケンシュタイン」(創元推理文庫)の表紙
(表紙のデザインは、松野光洋氏が担当)-
レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci:1452年 - 1519年)が
1485年 - 1490年頃に描いた「ウィトルウィウス的人体図(Uomo vitruviano)」が、
デザインのベースになっていると思われる。


本作品「それは怪奇なセレナーデ」は、英国のロマン派詩人で、SF の先駆者と見做される英国の小説家メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィン・シェリー(Mary Wollstonecraft Godwin Shelley:1797年ー1851年 → 2021年3月9日 / 3月16日付ブログで紹介済)が1818年に発表したゴシック小説「フランケンシュタイン、或いは、現代のプロメテウス(Frankenstein; or, the Modern Prometheus. → 2021年3月24日付ブログで紹介済)」に登場する「フランケンシュタインの怪物」を題材にしている。


           

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