2024年12月26日木曜日

森見登美彦作「シャーロック・ホームズの凱旋(The Triumphant Return of Sherlock Holmes by Tomihiko Morimi)」- その1

日本の中央公論社英から2024年1月に刊行されている
森見登美彦作「シャーロック・ホームズの凱旋」(ハードカバー版)の表紙
(装画:森 優 / 装幀:岡本歌織 <next door design>)


今回は、日本の小説家である森見登美彦(Tomihiko Morimi:1979年ー)が、2014年1月に中央公論社から出版した「シャーロック・ホームズの凱旋(The Triumphant Return of Sherlock Holmes)」について、紹介したい。


本作品の場合、「小説 BOC」の3号~6号、8号および10号(2016年10月ー2018年7月)に連載された「シャーロック・ホームズの凱旋」が、単行本化に際して、全面改稿されている。

なお、本作品は、作者の着想後7年がかりで、スランプでもがく自分をモデルにして、深刻なスランプに陥ったシャーロック・ホームズを小説化している、とのこと。


森見登美彦が描く「シャーロック・ホームズの凱旋」の舞台は、ヴィクトリア朝時代の英国ロンドンから現代の京都府京都市へと移されている。また、シャーロック・ホームズが住む下宿も、ロンドンのベイカーストリート221B(221B Baker Street)から京都市の寺町通221B へと変更となっている。

ただし、時代自体は、ヴィクトリア女王が統治するヴィクトリア朝時代のままである。


主要な登場人物は、以下の通り。


(1)シャーロック・ホームズ:洛中洛外にその名を轟かせた名探偵で、京都市の寺町通221B に住んでいる。「赤毛連盟」事件での失敗を機にして、現在、深刻なスランプ中。

(2)ジョン・H・ワトソン:シャーロック・ホームズの相棒、かつ彼が手掛けた事件の記録者であり、冒険譚を雑誌「ストランド・マガジン」に発表して、洛中洛外の探偵小説愛好家達を熱狂させている。京都市の下鴨本通に自宅兼診療所を構える医師でもある。ホームズのスランプによる巻き添いを食って、現在、ホームズ譚の連載は、無期限休止を余儀無くされている上に、診療所の経営も、破綻の危機に瀕している。

(3)ハドソン夫人:シャーロック・ホームズが住む寺町通221B の家主で、いろいろな不動産物件に投資して、うまく運用している。

(4)メアリ・モースタン:4年前にシャーロック・ホームズが解決した「四人の署名」事件をきっかけに、ジョン・H・ワトソンと結婚して、彼の妻となる。ホームズのスランプを機にして、崩壊寸前の危機に陥った自分達の新婚家庭と夫の診療所よりも、ホームズの再起を優先しようとする夫を快く思っておらず、ホームズに対して、強く反発している。

(5)ジェイムズ・モリアーティ:百万遍の東、吉田山の麓に所在する大学の応用物理学研究所の教授を務めている。「万国博覧会」や「月ロケット計画」等の国家的なプロジェクトに名を連ね、ベストセラーとなった通俗的な自己啓発本「魂の二項定理」の著者である。現在、シャーロック・ホームズが下宿する寺町通221B の上階に住んでいる。

(6)アイリーン・アドラー:京都市の南座の大劇場に出演していた舞台女優で、昨年の秋に電撃的に引退。現在、シャーロック・ホームズが下宿する寺町通221B の反対側の建物(ハドソン夫人が所有)において、探偵事務所を開業。

(7)レストレード警部:シャーロック・ホームズが名探偵としてその名を天下に轟かせていた時は、京都警視庁(スコットランドヤード)のエースだったが、ホームズが深刻なスランプになったことに伴い、彼も長期的な不調に陥る。現在、ホームズとモリアーティ教授と一緒に、寺町通221B において、「負け犬同盟」の集会を開いている。


本作品「シャーロック・ホームズの凱旋」は、以下の章立てになっている。


*プロローグ

*第1章 ジェイムズ・モリアーティの彷徨

*第2章 アイリーン・アドラーの挑戦

*第3章 レイチェル・マスグレーヴの失踪

*第4章 メアリ・モースタンの決意

*第5章 シャーロック・ホームズの凱旋

*エピローグ


次回以降、各章の内容を個別に紹介していきたい。


          

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