前回の「それは怪奇なセレナーデ(→ 2024年12月23日付ブログで紹介済)」に引き続き、日本の漫画家 / イラストレーターである木原敏江(Toshie Kihara:1948年ー)が2012年に株式会社秋田書店からプリンセスコミックス(Princess Comics)として出版した漫画「それは常世のレクイエム~夢みるゴシック~(Gothicism - dreaming)」に収録されている物語について、個別に紹介したい。
二つ目は、「それは常世のレクイエム」である。
「それは常世のレクイエム」は、前編と後編に別れており、前編は、2012年プリンセス GOLD 8月号に、また、後編は、2012年プリンセス GOLD 10月号に掲載された。
主人公のポーリーン・レミントンは、地主階級出身の名門の末娘であるヘレン・レミントンが、親の反対を押し切り、ジャンブラーであるブライアン・フィールズと駆け落ち結婚をして生まれた一人娘で、12歳の時、事故に巻き込まれて、建物の下敷きになった。その際、彼女の両親が自分達の身体の下に彼女をかばった。両親のおかげで、彼女は無事に建物の瓦礫の中から無事に生還したが、それと引き換えに、両親を失ってしまう。その後、彼女は、孤児院へと入れられた。
ヘレン・レミントンの父で、ポーリーン・レミントンの祖父に該る当主はには、3人の子供が居たが、2人の息子は、結婚前に軍に入隊し、ナポレオン戦争で戦死。また、末娘であったヘレンも既に亡くなっていたため、レミントン家の跡取りとなる孫娘のポーリーンの行方を捜索していた。
孤児院に引き取られ、3年が経過して、14歳になっていたポーリーン・レミントンは、祖父の依頼に基づき、彼女を探していた弁護士により、孤児院で発見され、レミントン家へと戻ることになった。
レミントン家へと引き取られていくポーリーン・レミントンの姿を空からじっと見つめる謎の目があった。
そして、その4年後、フランス第一帝政の皇帝であるナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte:1769年ー1821年)が失脚して、エルバ島(Elba)へと流刑される噂が流れる19世紀初期(1814年)の英国ロンドンにおいて、物語が本格的に始まる。
英国のロマン派詩人である第6代バイロン男爵ジョージ・ゴードン・バイロン(George Gordon Byron, 6th Baron Byron:1788年ー1824年 → 2021年5月9日および2024年8月24日 / 8月30日付ブログで紹介済)が住むロンドンの邸宅を、彼がスコットランドに保有する領地の管理人であるフィッツジェラルドが訪れる。
フィッツジェラルドは、バイロン卿(Lord Byron)に対して、「1年前に発生した猟奇殺人事件は、残念ながら、まだ未解決でして。」と報告する。
事件の被害者は、地主の若妻で、美人で評判だった。彼女の首には、咬まれたような傷があり、身体中の血が無くなっていた。一連の状況から、村の老人達は、吸血鬼の仕業だと騒いでいた。
フィッツジェラルドからの報告を聞いたバイロン卿は、吸血鬼の話を一笑に付して、「血に飢えた変質者の仕業だろう。」と答える。
フィッツジェラルドは、被害者の側に落ちていた古い銀の腕輪をバイロン卿に託すと、邸宅を辞去した。
バイロン卿と一緒に、リージェント宮殿付属庭園へ散歩に出かけたポーリーン・レミントンは、彼から突然言い寄られるが、なんとかうまくあしらって、庭園をあとにする。
バイロン卿から言い寄られて、気持ちが揺れるポーリーン・レミントンが視線を横に向けると、陽が陰って急に暗くなった樹木の下闇に、一際黒々とした人の姿があった。
その人物が、樹木の下から歩み出て来て、アルバ・グレンモアの領主であるエドレッド・リッズデイルと自己紹介すると、ポーリーン・レミントンに対して、「ずーっと君に会いたかった。」と告げる。
彼は、蝋人形のように青白い美貌に加えて、とても赤い唇をしていた。
日本の出版社である東京創元社から刊行されている ブラム・ストーカー作「吸血鬼ドラキュラ」(創元推理文庫)の表紙 (表紙のオブジェは、松野光洋氏が造形) |
本作品「それは常世のレクイエム」は、アイルランド人の小説家であるブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、エイブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)が1897年に発表したゴシック小説 / ホラー小説「吸血鬼ドラキュラ(Dracula → 2017年12月24日 / 12月27日付ブログで紹介済)」に登場する「ドラキュラ伯爵(Count Dracula)」を題材にしている。
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