ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く ミス・マープルシリーズの長編第4作目である 「予告殺人」の一場面 |
2016年9月15日に、アガサ・クリスティー没後40周年に際して、 英国のロイヤルメール(Royal Mail)が発行した記念切手6種類のうちの 1枚である「予告殺人」 - 厳密には、記念切手のように、 ルディー・シャーツの影が、壁に映ることはありえない。 |
チッピングクレグホーン村(Chipping Cleghorn)の地元紙朝刊「ギャゼット(Gazette)」の広告欄に、非常に変わった連絡が掲載された。「殺人をお知らせ致します。10月29日の金曜日、午後6時半にリトルパドックス館においてです。(A murder is announced and will take place on Friday, October 29th, at Little Paddocks, at 6:30 pm.)」と。
チッピングクレグホーン村の郊外にあるリトルパドックス館(Little Paddocks)の女主人であるレティシア・ブラックロック(Letitia Blacklock)は、この広告を見て困惑する。一方で、当日、好奇心旺盛な村の人々が、続々とリトルパドックス館に集まって来て、何が起きるのか、とても心待ちにしていた。
そして、時計が午後6時半を告げた時、室内の明かりが突然消えると、部屋の扉が開いて、懐中電灯を持った男が姿を現した。村の人々が何かの余興だと思った時、銃声が響く。
部屋の扉が閉まり、明かりが灯ると、そこには、突然部屋に侵入して来た男の死体が横たわっていたのである。レティシア・ブラックロックの親友であるドーラ・バンナー(Dora Bunner)によると、死んでいた男は、村の近くのメデナムウェルズ(Medenham Wells)にある「ロイヤルスパホテル(Royal Spa Hotel)」に勤める従業員のルディー・シャーツ(Rudi Scherz)とのこと。
警察が呼ばれ、クラドック警部(Inspector Craddock)が、その場に居合わせた村の人々を一人ずつ調べていく。状況としては、自殺、あるいは、事故のように思われるが、クラドック警部としては、どちらにも納得がいかなかった。
クラドック警部にとって非常に幸運なことに、死亡したルディー・シャーツが勤めていたホテルには、探偵好きな独身の老婦人ミス・マープルが、リューマチの湯治のため、滞在していたのである。
ミス・マープルの手腕を高く評価している警察の上層部から、クラドック警部は、事件の真相解明のために、ミス・マープルに協力を求めるよう、指示される。クラドック警部からの依頼を受けたミス・マープルは、驚くべき事件の真相を明らかにするのであった。
(27)スカーフ(scarf)
養鶏業者であるミス・ヒンチクリフ(Miss Hinchcliffe)とエイミー・マーガトロイド(Miss Amy Murgatroyd)の2人が、ルディー・シャーツの事件を振り返っていた際、エイミー・マーガトロイドは、事件発生時に、ある人物が部屋に見当たらなかったことを思い出す。エイミー・マーガトロイドが、ミス・ヒンチクリフに対して、その人物の名前を告げる前に、何者かによって、彼女が巻いていたスカーフで絞殺されてしまうのである。
(28)甘美なる死(Delicious Death)
「甘美なる死」は、リトルパドックス館のメイド / 料理人であるミッチー(Mitzi)がつくる特製のケーキで、同館の女主人であるレティシア・ブラックロックの再従弟(またいとこ)のパトリック・シモンズ(Patrick Simmons)が命名している。
(29)チッピングクレグホーン村の地元紙朝刊「ギャゼット」(Chipping Cleghorn Gazette)」
「ギャゼット」は、チッピングクレグホーン村の地元紙朝刊で、毎週金曜日に発行され、同村の全ての住民が購読している。この10月29日(金)付「ギャゼット」の広告欄に、リトルパドックス館における殺人予告が掲載されたのである。
(30)アヒル(ducks)
これら4羽のアヒルは、リトルパドックス館のアヒル小屋で飼われている。
(31)真珠の首飾り(pearl choker)
これは、リトルパドックス館の女主人であるレティシア・ブラックロックが身に着けている大粒の人造真珠の首飾りである。厳密に言うと、物語において、レティシア・ブラックロックは、真珠の首飾りを三重にして、首に巻いている。
(32)配給手帳(ration books)
物語の中盤、ルディー・シャーツの事件捜査を進めるダーモット・エリック・クラドック警部(Inspector Dermot Eric Craddock)が、「ほんとにわからないのだ。人々の外見と人柄は、配給手帳と身分証 - 写真も指紋もついていない、ただナンバーが付されていて要領よく記入されている身分証によって裏付けられているに過ぎないのだ。骨を折りさえしたら誰だって、適当な身分証明書ぐらいは手に入れることができるのだ。」(田村隆一訳)と考え込んでいる。
(33)アスピリンが入った瓶
物語の後半、リトルパドックス館の女主人であるレティシア・ブラックロックは、親友で同居人のドラ・バンナー(Dora Bunner)の誕生日パーティーを計画して、ルディー・シャーツの事件時に現場に居たほぼ全員を招待するメイド / 料理人のミッチーは、特製ケーキの「甘美なる死」を準備する。誕生日パーティー後、ドラ・バンナーは、頭痛を訴えたが、自分の部屋にあったアスピリンの瓶が見当たらなかったため、レティシア・ブラックロックの部屋のベッドの脇にあったアスピリンを服用する。実は、そのアスピリンには、麻酔性の毒薬が仕込まれており、翌朝、ドラ・バンナーは、ベッドの中で亡くなっているのが、発見されたのである。
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