ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く ミス・マープルシリーズの長編第9作目である 「カリブ海の秘密」の一場面 |
ビル・ブラッグ氏によるイラストには、 ある女性(モリー・ケンダル?)が、部屋のベランダに佇み、 椰子(ヤシ)/ 棕櫚(シュロ)の樹越しに、 カリブ海を眺めているシーンが描かれている。 Harper Collins Publishers 社から出版されている 「カリブ海の秘密」のペーパーバック版の表紙には、 ビル・ブラッグ氏によるイラストが、 棕櫚の葉の形に切り取られているものが使用されている。 |
今回、物語の舞台となるのは、いつも通りのロンドン郊外にあるセントメアリーミード村(St. Mary Mead)ではなく、カリブ海のサントノーレ島(St. Honore)にあるリゾートホテル「ゴールデンパーム(Golden Palm)」である。セントメアリーミード村に住むミス・マープルは、現在、このリゾートホテルに滞在していた。
実は、ミス・マープルは、前の冬に罹患した肺炎のため、ここのところ、体調を崩しており、そのため、甥のレイモンド・ウェスト(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)が、彼女のために、カリブ海での転地療養を手配してくれたのである。
ミス・マープルは、滞在客の一人であるパルグレイヴ少佐(Major Palgrave)から、あまり面白くない懐古話をよく聞かされて、少しばかり閉口していた。ミス・マープルとしては、パルグレイヴ少佐が披露する新聞が騒ぎ立てるような事件よりも、セントメアリーミード村で起きるような、平凡な人々の殺人事件の方に、より興味があった。
ある日、パルグレイヴ少佐は、ミス・マープルに対して、見たところ普通の男が新婚の若妻を殺したという話をしており、ミス・マープルも、彼の話を熱心に聞き入っていた。パルグレイヴ少佐は、ミス・マープルに、「その殺人犯の写真を見たいか?」と尋ねると、財布の中からその写真を取り出そうとした。
ところが、有閑階級の人々の取り留めのないのないおしゃべりが聞こえてくると、パルグレイヴ少佐は、彼が話題にした殺人犯の写真を彼女に見せてくれることはなく、突然、話題を変えてしまった。不思議に感じたミス・マープルが顔をあげると、二人の近くに、数人の人達が居るのが、目に入った。
翌朝、パルグレイヴ少佐が自室で無くなっているのを、ホテルのメイドであるヴィクトリア・ジョンスン(Victoria Johnson)が発見した。リゾートホテルに居る人達は、口を揃えて、パルグレイヴ少佐は高齢な上、高血圧だったことを死因だと指摘したが、ミス・マープルとしては、彼が殺されたことを確信した。
ミス・マープルは、パルグレイヴ少佐の検死を行った地元のグラハム医師(Dr. Graham)に依頼し、前の日にパルグレイヴ少佐が一旦は見せようとしていた写真を探してもらったが、残念ながら、見つからなかった。果して、その写真は、何処へ行ったのか?
ミス・マープルは、早速、リゾートホテルの人達への聞き込みを始めるのであった。
*ティム・ケンダル(Tim Kendal):リゾートホテルのオーナー
*モリー・ケンダル(Molly Kendal):リゾートホテルのオーナー / ティムの妻
*ジェレミー・プレスコット(Jeremy Prescott):牧師
*ジョーン・プレスコット(Joan Prescott):牧師の妹
*グレゴリー・ダイスン(Gregory Dyson):米国人
*ラッキー・ダイスン(Lucky Dyson):グレッグが再婚した妻
*エドワード・ヒリンドン(Edward Hillingdon):植物学者 / ラッキーと不倫中。
*エヴリン・ヒリンドン(Evelyn Hillingdon):植物学者 / エドワードの妻
*ジェイスン・ラフィール(Jason Rafiel → 2024年8月14日付ブログで紹介済):車椅子に乗った実業家(イングランド北部でスーパーマーケットの大チェーン店を経営)
*エスター・ウォルターズ(Esther Walters):ラフィール氏の秘書
*アーサー・ジャクスン(Arthur Jackson):ラフィール氏の看護師兼付き人
*セニョーラ・デ・カスペアロ(Senora de Caspearo):ミス・マープルが海岸で出会った休暇中の女性
パルグレイヴ少佐を殺害した犯人は、一体、誰なのか?
被害者は、パルグレイヴ少佐だけにとどまらず、更に続くのであった。
(47)義眼(glass eye)
最初の被害者となるパルグレイヴ少佐の左目には、義眼が入っている。
(48)プランターパンチ(Planter’s Punch)
自分を保身しようとする犯人に危険視されたパルグレイヴ少佐は、プランターパンチ(カクテル)が入ったグラスに毒を混入されて、殺害された。
(49)フェイスクリームの瓶(jar of face cream)
物語の後半、アーサー・ジャクスンは、あることを調べるために、リゾートホテルのオーナーであるティム・ケンダルとモリー・ケンダルが住むバンガローに侵入する。そして、彼が洗面台の上の棚を物色して、フェイスクリームの瓶を手に持って立っている現場を、ミス・マープルにおさえられる。
ミス・マープルがフェイスクリームの瓶を調べさせたところ、ベラドンナがフェイスクリームに入れられており、これを顔に塗ったモリー・ケンダルは、犯人の計画通り、一時的な記憶喪失に見舞われたのである。
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