ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く ミス・マープルシリーズの長編第10作目である 「バートラムホテルにて」の一場面 |
ビル・ブラッグ氏によるイラストには、 若き遺産相続人であるエルヴィラ・ブレイクが、旅行鞄を持って、 バートラムホテルのレセプションの前に佇んでいるシーンが描かれている。 Harper Collins Publishers 社から出版されている 「バートラムホテルにて」のペーパーバック版の表紙には、 ビル・ブラッグ氏によるイラストが、 ルームキーの形に切り取られているものが使用されている。 |
なお、バートラムホテル(Bertram’s Hotel)は、架空の場所であるが、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)がロンドンを訪れた際によく宿泊していた「ブラウンズホテル(Brown’s Hotel → 2015年5月10日付ブログで紹介済)」から、本作品の着想を得たと、一般に言われている。
ブラウンズホテルの表玄関 (住所:33 Albemarle Street, Mayfair, London W1S 4BP) |
ただし、アガサ・クリスティーの遺族公認の伝記「アガサ・クリスティーの生涯(Agatha Christie : A biography)」を執筆したジャネット・モーガン(Janet Morgan)が、バートラムホテルのモデルになったのは、「ブラウンズホテル」ではなく、「フレミングス メイフェア ホテル(Flemings Hotel → 2015年5月17日付ブログで紹介済)」であると主張しており、現在、2説に分かれている。
フレミングス メイフェア ホテルの玄関 (住所:7 - 12 Half Moon Street, Mayfair, London W1J 7BH) |
ミス・マープルは、甥のレイモンド・ウェスト(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)の厚意で、ロンドンのバートラムホテルに、2週間の予定で滞在していた。実は、ミス・マープルは、若い頃、このホテルに宿泊したことがあったので、今回の滞在を懐かしく感じていた。
バートラムホテルは、第二次世界大戦(1939年ー1945年)後に改装されて、エドワード朝時代における独特の雰囲気を再び取り戻していた。一方で、現代的な設備と最高のスタッフも揃っていた。
バートラムホテルには、ミス・マープル以外にも、次のような人物が宿泊していた。
*レディー・セリーナ・ヘイジー(Lady Selina Hazy):ミス・マープルの友人
*レディー・ベス・セジウィック(Lady Bess Sedgwick):有名な女性冒険家
*エルヴィラ・ブレイク(Elvira Blake):ベス・セジウィックの娘で、イタリアでの留学を終えて、英国に帰国。
*デレク・ラスカム大佐(Colonel Derek Luscombe):エルヴィラ・ブレイクの後見人
*ペニファザー牧師(Cannon Pennyfather):古代言語と死海文書に精通する学者肌の聖職者であるが、物忘れが激しい。
*ラディスラウス・マリノスキー(Ladislaus Malinowski):レーシングドライバーで、エルヴィラ・ブレイクが恋に落ちる。
エルヴィラ・ブレイクの遺産を管理する3人の管財人のうちの1人である弁護士のリチャード・エジャートン(Richard Egerton)によると、彼女は、21歳に達すると、父親(レディー・ベス・セジウィックの2番目の夫であるコニストン卿(Lord Coniston - エルヴィラが2歳の時に、レディー・セジウィックが彼の元を去り、エルヴィラが5歳の時に、死去))から莫大な遺産を相続することになっていた。
エドワード朝時代の雰囲気を保つバートラムホテル、その裏で、事件の影が既に蠢いていた。
エルヴィラ・ブレイクは、あることを調べるために、イタリア留学時代の友人であるブリジット(Bridget)と一緒に、アイルランドへと向かった。
それと同じ日に、ペニファザー牧師は、ルツェルン(Lucerne - スイスの都市)での会議に出席することになっていた。本来であれば、彼は、前日中に空港からルツェルンへ向かう必要があったが、いつもの物忘れが原因で、会議の開催日当日に、空港へ行ってしまい、そこで初めて自分の誤りに気付くという体たらくだった。
ルツェルンまでのチケットが無駄になってしまったペニファザー牧師は、已む無く、真夜中に空港からバートラムホテルへと戻って来たが、自分の部屋に居た侵入者に襲われて、4日後に、ロンドンから遠く離れた家で目を覚ますという事態となったのである。
(50)ヴァイオレットクリーム(violet creams)
ヴァイオレットクリームは、バートラムホテル内において供されるお菓子である。
(51)ホテルのドアマン(doorman)
アイルランド人のマイケル・ゴーマン(Michael Gorman)が、バートラムホテルのドアマンとして登場する。
彼と有名な女性冒険家であるレディー・ベス・セジウィックは、アイルランドで結婚しており、彼女の家族が2人を別れさせたものの、2人の結婚は、以前として、法的に有効であり、その結果、レディー・ベス・セジウィックがその後に行った4回の結婚は、いずれも重婚になってしますことが、物語の中盤に、判明する。
ミス・マープルがバートラムホテルで過ごす最後の日、マイケル・ゴーマンは、ホテルの外で、何者かに銃で撃たれて、死亡してしまうのである。
(52)マフィンとシードケーキ(muffins and seed cake)
マフィンとシードケーキも、ヴァイオレットクリームと同じように、バートラムホテル内において供されるお菓子である。
0 件のコメント:
コメントを投稿