英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2019年に出版された デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 殺しの操り人形」の内扉 |
第2の殺人(老女)に失敗した医者のグスタフ・カリガリ(Gustav Caligari)は、プラハ(Prague)からロンドンへと向かった。
ロンドンに着いたグスタフ・カリガリは、家主であるクレメンツ夫人(Mrs. Clements)と交渉の上、家賃を週8シリングから5シリングへ値切って、ケンジントン地区(Kensington → 2023年12月12日 / 12月17日付ブログで紹介済)内のセジウィックストリート34番地(34 Sedgwick Street - 現在の住所表記上、存在していないので、架空の住所と思われる)の家を借りると、そこに診療所を開いた。
ケンジントンスクエア(Kensington Square)の中央にある ケンジントンスクエアガーデン(Kensington Square Garden) |
グスタフ・カリガリが新聞広告を出すと、数日で金持ちで暇を持て余している中流階級の女性達が、彼の診療所に押し寄せた。6ヶ月も経たないうちに、彼の診療所の経営は軌道にのり、9ヶ月後には、数々の紳士クラブや催しにも招待されるようになった。
プラハの警察から逃げきったと確信したグスタフ・カリガリは、次のステージへと進む頃合いだと考えた。
グスタフ・カリガリは、バーモンジー(Bermondsey)の川の近くで見つけた浮浪者のロバート・ストラウス(Robert Straus - 身長180㎝)を薬でマインドコントロールして、自分の操り人形にしたのである。
ジョン・H・ワトスンは、アフガン戦争で負った傷が痛んだため、4日間、サリー州(Surrey)で療養した後、ロンドンのユーストン駅(Euston Station → 2015年10月31日付ブログで紹介済)へと戻って来る。1896年春の夕方だった。
ユーストン駅の駅舎正面 |
ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)に着いたワトスンを出迎えたシャーロック・ホームズは、茶色い皮の男性用手袋を見せた。
大したことが判らないワトスンに、ホームズは、手袋の内側を見せた。そこには、「S&W R357」と印されていた。
ホームズは、ワトスンに対して、
(1)「S&W」:ストランド通り(Strand → 2015年3月29日付ブログで紹介済)沿いにある Sawyer and Walters
(2)「R」:右側
(3)「357」:顧客番号
と説明。
ストランド通り沿いのアメリカ両替所(American Exchange)があった場所 - 背後に見えるのは、チャリングクロス駅(Charing Cross Station → 2014年9月20日付ブログで紹介済)の建物。 |
ホームズは、スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)からの依頼を受けて、サー・ジェフリー・ダムリー(Sir Jeffrey Damury)の邸宅からルビーが盗難された事件を捜査していた。
何者かがサー・ジェフリー・ダムリーの邸宅に侵入して、金庫に保管されていたルビーを奪い去ったのである。侵入者は、何故か、金庫のコンビネーションを知っていたようで、簡単に金庫を開錠していた。
そして、金庫の近くの床の上に、問題の手袋が落ちていたのだ。
ホームズが Sawyer and Walters に問い合わせたところ、手袋の持ち主は、サー・ジェフリー・ダムリーとのことだった。
レストレード警部が調べたところ、サー・ジェフリー・ダムリーは、直近6ヶ月間でカードゲームに大負けをして、多額の借金を負っていることが判明。
と言うことは、ルビーの盗難は、サー・ジェフリー・ダムリーによる自作自演で、保険金目的なのだろうか?
ホームズがワトスンに手袋の匂いを嗅がせると、薔薇の甘い香りがした。ホームズは、ワトスンに対して、「女性用香水で、非常に高価なものだ。」と告げる。
更に、ホームズは、ワトスンに、
(1)女性がこの手袋をはめており、その女性が、意図的に、あるいは、偶然に、手袋を落としていったと考えられる。
(2)そうすると、考えられる容疑者は、サー・ジェフリー・ダムリーの妻であるレディー・サラ(Lady Sarah)で、夫に盗難容疑を着せて、刑務所へ送るのが、目的だ。
と説明した。
画面奥に見えるのが、フリートストリート |
ところは、レディー・サラには、鉄壁のアリバイがあった。
ホームズは、「レディー・サラの不倫相手で、若い弁護士であるゴドフリー・フォーベス(Godfrey Forbes)が、実行犯だ。彼も、ケンジントン地区に住んでいるが、弁護士業はうまくいっておらず、借金塗れだ。今朝、彼は、フリートストリート(Fleet Street → 2014年9月21日付ブログで紹介済)にあるトマスクック(Thomas Cook)へ出かけて、ブラジル行きの船の予約をした。予約は自分の分だけなので、彼は、レディー・サラを見捨てて、一人で逃げるつもりだ。手袋に女性用香水の匂いを残したのも、レディー・サラに罪を全て着せるのが、目的だ。」と推理した。
ホームズとワトスンの2人は、ゴドフリー・フォーベスが住むケンジントン地区の家へ急ぎ、家の鍵をこじ開けると、居間のカーテンの陰に隠れて、ゴドフリー・フォーベスが帰って来るのを待った。
そして、戻って来たゴドフリー・フォーベスを捕まえて、ホームズは彼からサー・ジェフリー・ダムリーのルビーを無事取り返したのである。
事件が解決したため、レストレード警部のオフィスにおいて、ホームズ、ワトスンとレストレード警部の3人が祝杯を挙げていると、そこへ部下の巡査が駆け込んで来る。
「レディー・サラが、自宅において、何者かに絞殺された。」との知らせだった。
ストランド通り沿いに建つサヴォイ劇場(画面左側) - 画面中央奥に建つのが、サヴォイホテル |
グスタフ・カリガリが、自分の操り人形とした浮浪者のロバート・ストラウスに指示して、レディー・サラを殺害させたのである。
次のターゲットとして、グスタフ・カリガリは、サヴォイ劇場(Savoy Theatre → 2021年7月7日付ブログで紹介済)のオペラ「The Magic Rose」に出演しているルース・マーシャル(Ruth Marshall)に狙いを定める。ルース・マーシャルにとって、「The Magic Rose」が、ウェストエンド(West End)での初めての主役と言う非常に重要な局面に該っていた。
レディー・サラの殺害犯人を突き止めようとするホームズ / ワトスンの2人とグスタフ・カリガリは、こうして相見えることになる。
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