今回は、英国の推理作家であるジョセフィン・テイ(Josephine Tey:1896年ー1952年)が1951年に発表した「時の娘(The Daughter of Time)」について、紹介したい。
なお、「ジョセフィン・テイ」はペンネームで、本名は「エリザベス・マッキントッシュ(Elizabeth MacKintosh)」。
エリザベス・マッキントッシュは、1896年7月25日、スコットランドのインヴァネス(Inverness)に、果物商(fruiterer)の父コリン・マッキントッシュ(Colin MacKintosh)と母ジョセフィン・マッキントッシュ(Josephine MacKintosh)の長女として出生。
エリザベス・マッキントッシュは、当初、芸術を志して、インヴァネス王立アカデミー(Inverness Royal Academy)で学ぶが、家庭の事情により、これを断念。
1914年に入り、バーミンガム(Birmingham)の郊外に所在する体育学校(Anstey Physical Training College)で学び、卒業後は、体育教師となった。
エリザベス・マッキントッシュは、第一次世界大戦(1914年-1918年)中、イングラントとスコットランドにおいて、体育教師として勤務するとともに、看護師としても奉仕。その際に知り合った兵士とのロマンスもあったが、彼を1916年のソンムの戦い(Battle of the Somme)で亡くしてしまう。
その後、1923年に、母親の看病のため、体育教師を辞して、実家に戻るものの、同年、母親は亡くなり、それ以降、彼女は実家にとどまって、父親と一緒に暮らすことにした。
インヴァネスの実家に戻ったエリザベス・マッキントッシュは、詩や小説を書き始め、1929年にゴードン・ダヴィオット(Gordon Daviot)名義で長編推理小説「Kif: An Unvarnished History」を発表。
エリザベス・マッキントッシュは、同年、ゴードン・ダヴィオット名義で、スコットランドヤードのアラン・グラント警部(Inspector Alan Grant)を主人公とする長編推理小説「列のなかの男(The Man in the Queue (or Killer in the Crowd)」を発表。これが、アラン・グラント警部シリーズの第1作目となり、以降、
*第2作目「蝋燭(ロウソク)のために1シリングを(A Shilling for Candles)」(1936年)
*第3作目「フランチャイズ事件(The Franchise Affair)」(1948年)
*第4作目「美の秘密(To Love and Be Wise)」(1950年)
*第5作目「時の娘」(1951年)
*第6作目「歌う砂(The Singing Sands)」(1952年)
を、アラン・グラント警部シリーズとして刊行している(なお、第2作目以降は、ジョセフィン・テイ名義で発表)。
上記のうち、第5作目に該る「時の娘」は、歴史ミステリー / Bed Detective の分野における先駆的な作品として評価されており、著者の代表作として、英米のみならず、日本のミステリー作家にも影響を与えた。実際、同作品は、英国の推理作家協会(British Crime Writers’ Association)により、1990年の時点で、「史上最高の推理小説100冊の第1位(number 1 in the Top 100 Crime Novels of All Time)」に選出されている。
推理小説以外にも、数多くの戯曲、ラジオドラマや TV ドラマ等を執筆したエリザベス・マッキントッシュは、1952年2月13日、肝臓癌(liver cancer)のため、ロンドンに住む妹メアリー(Mary)宅で死去。
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