2024年11月21日木曜日

アガサ・クリスティー作「春にして君を離れ」(’Absent in the Spring’ by Agatha Christie)- その3

日本の出版社である早川書房から
クリスティー文庫の1冊として出版されている
アガサ・クリスティー作「春にして君を離れ」の表紙(部分)
Photograph : CORBIS / amana images
Cover Design : Hayakawa Design

1930年代、主婦であるジョーン・スカダモア(Joan Scudamore)は、急病になった末娘(次女)であるバーバラを見舞うために、英国のクレイミンスターからバグダッド(当時、英国の勢力圏内)に来ていた。

ジョーンの手当で、次女のバーバラは、無事に回復期へ入った。

急病となったバーバラと全く頼りにならない夫のウィリアムの2人により混乱した家庭を、ジョーンは、万事怠り無く立て直したものと満足していた。


ところが、次女のバーバラが急病になった原因が、何故かハッキリとしない上に、バーバラとウィリアムに加えて、彼らの主治医までが、ジョーンに対して、非常に余所余所しい態度をみせる。

更に、バーバラが回復期に入ったため、ジョーンが英国へ引き上げようとするそぶりを見せると、バーバラとウィリアムの2人は、ジョーンを引き留めようとは、全くしなかった。寧ろ、どちらかと言うと、2人は、ジョーンに早く帰って欲しそうだった。それが、ジョーンには、非常に奇妙に思えたのである。


バーバラとウィリアムの2人の態度がよく判らないものの、ジョーン・スカダモアは、バグダッドから英国への帰路に着いた。

ジョーンは、悪天候の中、汽車と自動車を乗り継いで、イラクとトルコの国境に到着し、砂漠の真っ只中にあるテル・アブ・ハミド駅の鉄道宿泊所(レストハウス)に宿泊する。

テル・アブ・ハミド駅は、イラクとトルコの国境近くにあるトルコ鉄道の終着駅で、トルコ領内にあった。一方、ジョーンが宿泊することになった鉄道宿泊所は、イラク領内にあり、テル・アブ・ハミド駅とレストハウスの間には、国境の鉄条網が設置されていた。


ジョーンは、鉄道宿泊所において、聖アン女学院の同級生だったブランチ・ハガードと偶然再会する。

ブランチ・ハガードは、現在の夫である鉄道技師(ドノヴァン氏)が住むバグダッドへと向かう途上にあった。

聖アン女学院在籍当時、ブランチ・ハガードは、ジョーンを含め、女生徒達の憧れの的だったが、その後、恋愛事件も何度も引き起こしており、イラクでの再会時点では、すっかりと老け込んでいた。更に、ブランチ・ハガードが語る彼女自身の奔放な人生の話を聞いて、ジョーンは、彼女の零落を憐れむ。


悪天候の影響は続き、交通網は寸断され、本来であれば、翌朝、イスタンブール駅からテル・アブ・ハミド駅に到着する予定だった列車が着かなかった。

鉄道宿泊所には、インド人の管理人、アラブ少年の使用人とコックが居たが、管理人によると、悪天候のため、イスタンブール駅からの列車が到着する見込みが全くたたない、とのことだった。


こうして、ジョーン・スカダモアは、イスタンブール駅からの列車が来るあてのないまま、砂漠の真っ只中にある鉄道宿泊所に、たった一人、何日も留まることを余儀なくされる。

彼女の朝食と昼食の内容は、以下の通り。

<朝食>

コーヒー / ミルク(缶入り)/ 卵の目玉焼き / 固く小さなトースト数枚 / ジャム / 怪しげなスモモを煮たもの

<昼食>

オムレツ / 卵のカレー炒め / 缶詰の鮭 / ベークドビーンズ / 缶詰の桃

夕食も、朝食や朝食と似たような内容で、毎日、同じメニューの繰り返しで、ジョーンは飽きてしまう。

また、ジョーンは、「ダイサード夫人回想録」、推理小説と「パワーハウス」の本3冊を持って来ていたが、鉄道宿泊所に滞在している間に、全て読み切ってしまった。


何もすることがなくなったジョーン・スカダモアは、自分の今までの人生を回想し始めた。

そして、やがて、ジョーンは、これまでの親子関係(長男:トニー / 長女:エイヴラル / 次女:バーバラ)と夫婦の愛情(夫:ロドニー)にかかる自分の認識に疑念を抱き、今まで判らなかった真実に気付くのであった。


物語の最後、バグダッドから英国のクレイミンスターへとなんとか辿り着いたジョーン・スカダモアは、久し振りに、夫のロドニーの元へ帰ったが、彼女を出迎えたロドニーが、彼女にかけた言葉とは裏腹に、心の中で呟く言葉は、(通常の推理小説で発生するような殺人事件等は、本作品内では発生しないものの、)非常に恐ろしい内容だった。


                                        

2024年11月19日火曜日

ベアトリス・ポター生誕150周年記念切手 - その4

英国のファンタジー / SF / 推理作家であるフィリップ・パーサー=ハラード(Philip Purser-Hallard:1971年ー)が2023年に発表した「シャーロック・ホームズ / 湖の怪物」(Sherlock Holmes / The Monster of the Mere → 2024年10月30日付ブログで紹介済)は、英国の湖水地方(Lake District)を舞台にしている。

湖水地方と言うと、思い出されるのが、英国の絵本作家であるヘレン・ベアトリス・ポター(Helen Beatrix Potter:1866年ー1943年)と彼女が生み出したピーターラビット(Peter Rabbit)である。


2016年7月28日に、ヘレン・ベアトリス・ポターの生誕150周年を記念した切手10種類が、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から発行されているので、11月7日、11月9日および11月13日に引き続き、紹介したい。



今回は、ヘレン・ベアトリス・ポターが1902年に発表した「ピーターラビットのおはなし(The Tale of Peter Rabbit)」(1902年)にかかる記念切手4種類である。


ある時、寡婦となった母親うさぎが、子供達(ピーターラビットと娘3匹)に対して、
「お父さんは畑に入って、マグレガーおじさんに捕まり、パイにされてしまった。
だから、マグレガーおじさんの畑には絶対入らないように。」と忠告する。


ピーターラビットは、1893年9月4日に、ヘレン・ベアトリス・ポターが彼女の家庭教師で友人のアニー・ムーア(Annie Moore)の息子である病床のノエル少年(Noel - 5歳)に対して送った絵手紙が原型となっている。

1900年に、アニー・ムーアに勧められたヘレン・ベアトリス・ポターは、上記の絵手紙をベースにした絵本の執筆に入る。執筆を終えたヘレン・ベアトリス・ポターは、「ピーターラビットとマグレガーおじさんの畑」と言うタイトルの原稿を各出版社宛に送ったが、残念ながら、彼女の原稿は各出版社から断られてしまった。

そこで、自費出版を決意したヘレン・ベアトリス・ポターは、1901年12月16日、「ピーターラビットのおはなし」を自分で250冊印刷して、家族や友人達に配ったのである。


子供達のうち、娘うさぎの3匹は、母親うさぎの忠告通り、
マグレガーおじさんの畑には入らず、ブラックベリーを摘みに出かけた。
一方、悪戯好きなピーターラビットは、母親うさぎの忠告を聞かず、
マグレガーおじさんの畑に入り、おやつに畑の野菜を勝手に食べてしまう。


フレデリック・ウォーン社(Frederick Warne & Co.)は、当初、ヘレン・ベアトリス・ポターの原稿を断った出版社の1社であったが、彼女の作品が他の児童書と競合できるのではないかと考え、再検討を行った。そして、フレデリック・ウォーン社は、ヘレン・ベアトリス・ポターに対して、白黒の挿絵ではなく、色付きの挿絵を入れることを求めた。

フレデリック・ウォーン社の創業者の息子3人のうち、一番下で編集者であるノーマン・ウォーン(Norman Warne:1868年ー1905年)による協力の下、原稿を完成させたヘレン・ベアトリス・ポターは、1902年6月、5000冊を発行することで、同社と正式な出版契約を締結する。

そして、1902年10月、「ピーターラビットのおはなし」が出版され、初版8000冊が直ぐに売り切れとなった。更に、最初の出版から1年後には、56000冊以上が印刷され、商業的な成功を収めたのである。


マグレガーおじさんの畑の野菜を食べ過ぎて、
お腹が痛くなったピーターラビットは、パセリを探しに行った。


「ピーターラビットのおはなし」は、大変な悪戯っ子であるピーターラビットが、母親から「マグレガーおじさん(Mr. McGregor)の畑には、絶対行かないように。」といつも注意を受けているものの、母親の言い付けを守らず、畑へ忍び込んで、マグレガーおじさんに見つかってしまい、なんとか逃げ切ると言う話をその内容としており、現在、40近くの言語に翻訳され、世界的なベストセラーの1冊となっている。


マグレガーおじさんに見つかったピーターラビットは、
ジャケットと靴が脱げる程の勢いで、逃げ出したのである。


なお、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)も、彼の子供が欲しがったため、同作品を購入した1人であり、内容について、非常に高い評価を与えている。


                                    

2024年11月18日月曜日

アガサ・クリスティー作「ゼロ時間へ」<小説版(愛蔵版)>(’Towards Zero’ by Agatha Christie )- その1

2024年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「ゼロ時間へ」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design by 
HarperCollinsPublishers Ltd. /
Cover illustration : Courtesy of the Mill at Sonning Theatre) 


「ゼロ時間へ(Towards Zero)」は、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1944年に発表した長編推理小説である。

今年(2024年)、「ゼロ時間へ」の発表80周年を記念して、英国の HarperCollinsPublishers 社から同作品の愛蔵版(ハードバック版)が出版されているので、今回、紹介致したい。


「ゼロ時間へ」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第34作目にに該っている。


「ゼロ時間へ」の場合、通常の作品とは異なり、犯人が殺人の計画を策定する時間から始まって、犯行の瞬間である「ゼロ時間」へと遡っていくと言う独特の叙述法が採用されている。


「ゼロ時間へ」には、エルキュール・ポワロ 、ミス・ジェイン・マープルやトミー&タペンス・ベレズフォードのシリーズ探偵は登場せず、その代わりに、スコットランドヤード(ロンドン警視庁)のバトル警視(Superintendent Battle)が探偵役を務める。


英国の Laurence King Publishing Group Ltd. より、
2023年に発行されたアガサ・クリスティーをテーマにしたトランプのうち、
3 ♠️「バトル警視(Superintendent Battle)」


バトル警視は、スコットランドヤードの警視で、主に政治に関係する重要な問題を取り扱う。大柄の体格、彫りが深くて無表情な顔、そして、エルキュール・ポワロに匹敵する口髭が特徴。

バトル警視には、妻のメアリー(Mary Battle)との間に、5人の子供が居て、末娘の名前は、シルヴィア(Sylvia Battle)である。また、甥には、バトル警視と同じく、スコットランドヤードに所属するジェイムズ・リーチ警部(Inspector James Leach)が居る。


登場作品

<長編>

*「チムニーズ館の秘密(The Secret of Chimneys)」(1925年)

*「七つの時計(The Seven Dials Mystery)」(1929年)

*「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)- エルキュール・ポワロ シリーズ

*「殺人は容易だ(Murder is Easy)」(1939年)

*「ゼロ時間へ」(1944年) 


                                        

2024年11月16日土曜日

テイト・ブリテン美術館にあるジョスリン・バーバラ・ヘップワース彫刻作品(Sculptures by Jocelyn Barbara Hepworth at Tate Britain in London)

「翼がある形(Winged Figure → 2024年11月6日付ブログで紹介済)」、「サギ(Heron → 2024年11月8日付ブログで紹介済)」、「天空の石柱(Monolith-Empyrean = Heavenly Stone → 2024年11月11日付ブログで紹介済)」およびセントアイヴス(St. Ives)にある彫刻作品(→ 2024年11月14日付ブログで紹介済に続き、英国の芸術家 / 彫刻家で、英国コンウォール州(Cornwall)にあるセントアイヴスに住む芸術家のコミュニティーにおいて、主導的な役割を果たした人物であるジョスリン・バーバラ・ヘップワース(JocelynBarbara Hepworth:1903年ー1975年 → 2024年10月1日 / 10月31日 / 11月2日付ブログで紹介済)による彫刻作品のうち、ロンドンにあるテイト・ブリテン美術館(Tate Britain → 2018年2月18日付ブログで紹介済)に所蔵されている作品について、紹介したい。


テイト・ブリテン美術館の建物正面を階段下から見上げたところ 

テイト・ブリテン美術館の正面玄関へと向かう階段の左脇の支柱


Seated Figure / 1932年ー1933年
Lignum vitae / 35.6 cm x 26.7 cm x 21.6 cm
Presented by the executors of the artist's estate in 1980
<テイト・ブリテン美術館で購入した葉書を使用>

Mother and Child / 1934年
Cumberland alabaster on marble base / 22 cm x 45.5 cm x 18.9 cm
Presented with assistance from the Friends of the Tate Gallery in 1993
<テイト・ブリテン美術館で購入した葉書を使用>

Pelagos / 1946年
Elm and strings on oak base / 43 cm x 46 cm x 38.5 cm
Presented by the artist in 1964
<テイト・ブリテン美術館で購入した葉書を使用>


なお、次の彫刻作品は、ロンドンのテイト・ブリテン美術館ではなk、ウェストヨークシャー州(West Yorkshire)ウェイクフィールド(Wakefield)にあるヘップワース・ウェイクフィールド(The Hepworth Wakefield)と言うギャラリーに所蔵されている。


Three Forms (Tokio) / 1967年
Plaster / Wakefield Permanent Art Collection
The Hepworth Family Gift Presented through the Art Fund
<テイト・ブリテン美術館で購入した葉書を使用>


                                             

2024年11月15日金曜日

アガサ・クリスティー作「春にして君を離れ」(’Absent in the Spring’ by Agatha Christie)- その2

日本の出版社である早川書房から
クリスティー文庫の1冊として出版されている
アガサ・クリスティー作「春にして君を離れ」の表紙(部分)
Photograph : CORBIS / amana images
Cover Design : Hayakawa Design

エルキュール・ポワロやミス・ジェイン・マープル等のシリーズ探偵を生み出したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が、メアリー・ウェストマコット(Mary Westmacott)名義で、第二次世界大戦(1939年ー1945年)中の1944年に発表した長編小説である「春にして君を離れ(Absent in the Spring)」の場合、1930年代、主婦であるジョーン・スカダモア(Joan Scudamore)が、急病になった末娘(次女)を見舞うために、英国のクレイミンスターからバグダッド(当時、英国の勢力圏内)に来ているところから、話が始まる。


ジョーン・スカダモアは、優しい夫と良き子供達(1男2女)に恵まれ、良き妻 / 良き母であると自負するとともに、自分の理想の過程を築き上げたことに、非常に満ち足りていたところだったが、次女が急病になった旨の連絡があり、急いで次女の元へとやって来たのであった。


<ロドニー・スカダモア>

ジョーン・スカダモアの夫で、クレイミンスターにおいて、オルダマン・スカダモア・ウィットニー法律事務所を経営。

法律事務所は、元々、ロドニーの伯父であるハリーが経営していたが、司法試験に合格したロドニーは、ハリー伯父から、共同経営者として迎え入れられた。当時、ロドニーは、自分を弁護士には向いていないと考えており、本当のところは、農場経営を夢見ていたが、ジョーンによる説得を受けて、最終的には、ハリー伯父の法律事務所へと入った。


<トニー・スカダモア>

スカダモア夫妻の初子で、長男。

農科大学を卒業後、アフリカのローデシアにおいて、オレンジ園を経営。

ダーバン出身の娘と結婚。


<エイヴラル・スカダモア>

スカダモア夫妻の長女で、非常に理知的な性格。

以前、妻帯者である年上の男性との間で、激しい恋愛に落ちて、スカダモア夫妻の気を揉ませたことがある。

現在、株式ブローカーで、物静かな、良い人柄で、非常に裕福なエドワード・ハリソン・ウィルモットと結婚して、ロンドンに居住。


<バーバラ・スカダモア>

スカダモア夫妻の末っ子で、次女

彼女は、スカダモア家を離れたがっており、レディー・ヘリオットを叔母に持つウィリアム・レイと結婚して、現在、バグダットに居住。

夫のウィリアムは、イラクの土木事業局に有力な地位を得ている。

レイ夫妻には、赤ん坊のモプシーが居る。


見舞いに訪れたジョーン・スカダモアの手当で、次女のバーバラは、無事に回復期へ入った。

急病となったバーバラと全く頼りにならないウィリアムの2人により混乱した家庭を、ジョーン・スカダモアは、万事怠り無く立て直したものと満足していた。


ところが、次女のバーバラが急病になった原因が、何故かハッキリとしない上に、バーバラとウィリアムに加えて、彼らの主治医までが、ジョーンに対して、非常に余所余所しい態度をみせる。

更に、バーバラが回復期に入ったため、ジョーンが英国へ引き上げようとするそぶりを見せると、バーバラとウィリアムの2人は、ジョーンを引き留めようとは、全くしなかった。寧ろ、どちらかと言うと、2人は、ジョーンに早く帰って欲しそうだった。それが、ジョーンには、非常に奇妙に思えたのである。


          

2024年11月14日木曜日

セントアイブスにあるジョスリン・バーバラ・ヘップワース彫刻作品(Sculptures by Jocelyn Barbara Hepworth in St. Ives)

「翼がある形(Winged Figure → 2024年11月6日付ブログで紹介済)」、「サギ(Heron → 2024年11月8日付ブログで紹介済)」および「天空の石柱(Monolith-Empyrean = Heavenly Stone → 2024年11月11日付ブログで紹介済)」に続き、英国の芸術家 / 彫刻家で、英国コンウォール州(Cornwall)にあるセントアイヴス(St. Ives)に住む芸術家のコミュニティーにおいて、主導的な役割を果たした人物であるジョスリン・バーバラ・ヘップワース(JocelynBarbara Hepworth:1903年ー1975年 → 2024年10月1日 / 10月31日 / 11月2日付ブログで紹介済)による彫刻作品のうち、セントアイブスに所在するバーバラ・ヘップワース美術館(Barbara Hepworth Museum)にある作品について、紹介したい。


Sea Form (Porthmeor) / 1958年
Plaster / 83 cm x 113.5 cm x 35.5 cm
On loan from the artist's estate
to the Barbara Hepworth Museum, St. Ives
<テイト・ブリテン美術館(Tate Britain
→ 2018年2月18日付ブログで紹介済)で購入した葉書を使用>

Corymb / 1959年
Bronze / 26.5 cm x 34.2 cm x 24.2 cm
Accepted by HM Government
in lieu of inheritance tax
and allocated to Tate 2005, accessioned 2006 
On display at 
Barbara Hepworth Museum
and Sculpture Gardern, St. Ives, Cornwall
<テイト・ブリテン美術館で購入した葉書を使用>

Sphere with Inner Formea Form / 1963年
Bronze / 90 cm x 90 cm x 88.5 cm
Presented by the executors of the artist's estate
in accordance with her wishes
On display at Barbara Hepworth Museum
and Sculpture Gardern, St. Ives, Cornwall
<テイト・ブリテン美術館で購入した葉書を使用>

River Form / 1965年
Bronze / 79 cm x 193 cm x 85 cm
On loan from the artist's estate
to the Barbara Hepworth Museum, St. Ives
<テイト・ブリテン美術館で購入した葉書を使用>

Four-Square (Walk Through) / 1966年
Bronze / 429 cm x 199 cm x 229.5 cm
On loan from the artist's estate
to the Barbara Hepworth Museum, St. Ives
<テイト・ブリテン美術館で購入した葉書を使用>


                                        

2024年11月13日水曜日

ベアトリス・ポター生誕150周年記念切手 - その3

英国のファンタジー / SF / 推理作家であるフィリップ・パーサー=ハラード(Philip Purser-Hallard:1971年ー)が2023年に発表した「シャーロック・ホームズ / 湖の怪物」(Sherlock Holmes / The Monster of the Mere → 2024年10月30日付ブログで紹介済)は、英国の湖水地方(Lake District)を舞台にしている。

湖水地方と言うと、思い出されるのが、英国の絵本作家であるヘレン・ベアトリス・ポター(Helen Beatrix Potter:1866年ー1943年)と彼女が生み出したピーターラビット(Peter Rabbit)である。


2016年7月28日に、ヘレン・ベアトリス・ポターの生誕150周年を記念した切手10種類が、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から発行されているので、前々回(11月7日)と前回(11月9日)に引き続き、紹介したい。


(5)こねこのトム(Tom Kitten)



「こねこのトムのおはなし(The Tale of Tom Kitten)」において、母親(Mrs. Tabitha Twitchit)がお友達を招いてお茶会を開く日、子猫のトムと妹達(Mittens / Moppet)は、母親におめかしをしてもらうが、残念ながら、彼らは、折角の素敵な洋服をダメしてしまう。

次作の「ひげねずみサミュエルのおはなし あるいは、ねんねこロール(The Tale of Samuel Whiskers or, The Rolv-Polv Pudding)」では、子猫のトムは、ネズミ達に捕まってしまい、夕食のねんねこロールにされてしまいそうになる。


<こねこのトムの登場作品>

*「こねこのトムのおはなし」(1907年)

*「ひげねずみサミュエルのおはなし あるいは、ねんねこロール」(1908年)


(6)ベンジャミンバニー(Benjamin Bunny)



ベンジャミンバニーは、ピーターラビット(Peter Rabbit)の従兄で、マグレガーおじさん(Mr. McGregor)の古い毛糸の帽子を冠っている。


ベンジャミンバニーが登場する「ベンジャミンバニーのおはなし(The Tale of Benjamin Bunny)」は、「ピーターラビットのおはなし(The Tale of Peter Rabbit)」(1902年)の続編で、母親の言い付けを守らず、マグレガーおじさんの畑へ忍び込んで、マグレガーおじさんに見つかり、上着と靴を忘れて来た大変な悪戯っ子であるピーターラビットは、従兄のベンジャミンバニーと一緒に、取り返しに行く。

ピーターラビットとベンジャミンバニーは、マグレガーおじさんの飼い猫に見つかってしまい、玉葱用の大きな籠に隠れるものの、その籠の上で猫が昼寝を始めてしまう事態に陥るのである。


<ベンジャミンバニーの登場作品>

*「ベンジャミンバニーのおはなし」(1904年)

*「フロプシーのこどもたち(The Tale of Flopsy Bunnies)」(1909年)

*「キツネのトッドのおはなし(The Tale of Mr. Tod)」(1912年)


                                    

2024年11月12日火曜日

ウィリアム・シェイクスピア作「ソネット集第98番」(’Sonnet 98 : From you have I been absent in the spring’ by William Shakespeare)

日本の出版社である株式会社 文藝春秋から
文春文庫として出版されている
「シェイクスピアのソネット」の表紙
装画:山本 容子(1952年ー : 日本の銅版画家)
デザイン:十河 岳男


エルキュール・ポワロやミス・ジェイン・マープル等のシリーズ探偵を生み出したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が、メアリー・ウェストマコット(Mary Westmacott)名義で、第二次世界大戦(1939年ー1945年)中の1944年に発表した長編小説「春にして君を離れ(Absent in the Spring → 2024年11月10日付ブログで紹介済)」は、ロマンス小説と分類される全6作のうち、第3作目に該る。


なお、メアリー・ウェストマコット名義で発表されたロマンス小説は、以下の通り。


(1)「愛の旋律(Giant’s Bread)」(1930年)

(2)「未完の肖像(Unfinished Portrait)」(1934年)

(3)「春にして君を離れ」(1944年)

(4)「暗い抱擁(The Rose and the Yew Tree)」(1948年)

(5)「娘は娘(A Daughter’s a Daughter)」(1952年)

(6)「愛の重さ(The Burden)」(1956年)


文春文庫「シェイクスピアのソネット」に挿入されている
ウィリアム・シェイクスピアの肖像画
絵:山本 容子

タイトルに関しては、英国(イングランド)の劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年)による「ソネット集第98番(Sonnet 98)」の一節である「From you have I been absent in the spring」から採られている。


今回は、「ソネット集第98番」の一節である「From you have I been absent in the spring」について、紹介したい。


文春文庫「シェイクスピアのソネット」のうち、
「ソネット集第98番」の挿絵
絵:山本 容子

Sonnet 98 : From you have I been absent in the spring

<小田島 雄志(1930年ー : 日本の英文学者 / 演劇評論家)訳>


From you have I been absent in the spring,

あなたから離れているあいだ、季節は春でした。


When proud-pied April, dressed in all his trim,

華やかなまだら模様の(晴着をつけた)四月が


Hath put a spirit of youth in everything,

万物に青春のはずむような息吹きを送りこんだので、


That heavy Saturn laughed and leaped with him.

陰気な農耕神(サターン)さえいっしょに踊り浮かれたほどでした。


Yet nor the lays of birds, nor the sweet smell

だが小鳥たちの歌を聞いても、色とりどりに咲く


Of different flowers in odour and in hue,

花それぞれの甘い香りをかいでも、私は


Could make me any summer’s story tell,

楽しい夏物語を語る気にはなれなかったし、


Or from their proud lap pluck them where they grew:

咲き誇る花床から花を摘む気にもなれませんでした。


Nor did I wonder at the lily’s white,

また、純白の百合を讃嘆することもなく、


Nor praise the deep vermilion in the rose;

深紅のバラを称賛することもありませんでした。


They were but sweet, but figures of delight

この花々は甘く香るだけのもの、喜びの模写、


Drawn after you, – you pattern of all those.

あなたをモデルにして描いたあなたの似姿にすぎません。


 Yet seem’d it winter still, and, you away,

 だが私には永い冬に思われ、あなたがいないから


 As with your shadow I with these did play.

 あなたの影と思って花々とたわむれたのでした。


                                        

2024年11月11日月曜日

ロンドン市内にあるジョスリン・バーバラ・ヘップワース彫刻作品(Sculptures by Jocelyn Barbara Hepworth in London)- その3


前々回の「翼がある形(Winged Figure → 2024年11月6日付ブログで紹介済)」と前回の「サギ(Heron → 2024年11月8日付ブログで紹介済)」に続き、英国の芸術家 / 彫刻家で、英国コンウォール州(Cornwall)にあるセントアイヴス(St. Ives)に住む芸術家のコミュニティーにおいて、主導的な役割を果たした人物であるジョスリン・バーバラ・ヘップワース(JocelynBarbara Hepworth:1903年ー1975年 → 2024年10月1日 / 10月31日 / 11月2日付ブログで紹介済)による彫刻作品のうち、ロンドン市内にある分について、紹介したい。



3つ目は、ジョスリン・バーバラ・ヘップワースが1953年に制作した「天空の石柱(Monolith-Empyrean = Heavenly Stone)」で、ロンドン中心部にあるカムデン・ロンドン特別区(London Borough of Camden)区のハムステッド地区(Hampstead → 2018年8月26日付ブログで紹介済)内に所在している。




地下鉄ノーザンライン(Northern Line)が通る地下鉄ハムステッド駅(Hampstead Tube Station)の前を通り、ヒースストリート(Heath Street)を北上。




ヒースストリートは、地下鉄ゴルダースグリーン駅(Golders Green Tube Station)方面へと向かうノースエンドウェイ(North End Way)とハムステッドヒース(Hampstead Heath → 2015年4月25日付ブログで紹介済)沿いを通るスパニアーズロード(Spaniards Road)の2つに分岐する。



ハムステッドレーン(Hampstead Lane)へと名前を変えるスパニアーズロードを右折して、ケンウッドハウス駐車場(Kenwood Hose Car Park)を通り、ケンウッドハウス(Kenwood House → 2018年9月23日付ブログで紹介済)へと向かうと、ケンウッドハウスが建つ場所の横の芝生の上に、ジョスリン・バーバラ・ヘップワース作「天空の石柱」が設置されている。



ジョスリン・バーバラ・ヘップワース作「天空の石柱」は、以前、テムズ河(River Thames)南岸にあるサウスバンク(Southbank)内に設置されていたが、ロンドンカウンティーカウンシル(London County Council)が1959年に同彫刻作品を購入して、ハムステッドヒースへと移設され、現在に至っている。


2024年11月10日日曜日

アガサ・クリスティー作「春にして君を離れ」(’Absent in the Spring’ by Agatha Christie)- その1

日本の出版社である早川書房から
クリスティー文庫の1冊として出版されている
アガサ・クリスティー作「春にして君を離れ」の表紙
Photograph : CORBIS / amana images
Cover Design : Hayakawa Design


「春にして君を離れ(Absent in the Spring)」は、 エルキュール・ポワロやミス・ジェイン・マープル等のシリーズ探偵を生み出したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が、メアリー・ウェストマコット(Mary Westmacott)名義で、第二次世界大戦(1939年ー1945年)中の1944年に発表した長編小説である。


「春にして君を離れ」は、メアリー・ウェストマコット名義で発表されたロマンス小説と分類される全6作のうち、第3作目に該る。

なお、メアリー・ウェストマコット名義で発表されたロマンス小説は、以下の通り。


(1)「愛の旋律(Giant’s Bread)」(1930年)

(2)「未完の肖像(Unfinished Portrait)」(1934年)

(3)「春にして君を離れ」(1944年)

(4)「暗い抱擁(The Rose and the Yew Tree)」(1948年)

(5)「娘は娘(A Daughter’s a Daughter)」(1952年)

(6)「愛の重さ(The Burden)」(1956年)


アガサ・クリスティーの自伝によると、「春にして君を離れ」の構想については、長い間、頭の中で既に練り上がられていたので、僅か3日で執筆した、とのこと。

タイトルに関しては、英国(イングランド)の劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年)による「ソネット集第98番(Sonnet 98)」の一節である「From you have I been absent in the spring」から採られている。


「春にして君を離れ」は、英国において、コリンズ社(William Collins & Sons)から1944年8月に、また、米国において、Farrar & Rinehart 社から同年内に出版された。


「春にして君を離れ」の場合、厳密な意味では、事件を解決する推理小説ではないものの、本作品の日本語訳版を出版する早川書房(Hayakawa Publishing, Inc.)は、本作品を「ロマンチック・サスペンス」として紹介している。


2024年11月9日土曜日

ベアトリス・ポター生誕150周年記念切手 - その2

英国のファンタジー / SF / 推理作家であるフィリップ・パーサー=ハラード(Philip Purser-Hallard:1971年ー)が2023年に発表した「シャーロック・ホームズ / 湖の怪物」(Sherlock Holmes / The Monster of the Mere → 2024年10月30日付ブログで紹介済)は、英国の湖水地方(Lake District)を舞台にしている。

湖水地方と言うと、思い出されるのが、英国の絵本作家であるヘレン・ベアトリス・ポター(Helen Beatrix Potter:1866年ー1943年)と彼女が生み出したピーターラビット(Peter Rabbit)である。


2016年7月28日に、ヘレン・ベアトリス・ポターの生誕150周年を記念した切手10種類が、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から発行されているので、前回(11月7日)に引き続き、紹介したい。


(3)赤りすのナトキン(Squirrel Nutkin)




赤りすのナトキンは、従兄弟達と一緒に、湖を渡って、フクロウの島で木の実を探す。

従兄弟達に対してナゾナゾをだしてふざけるナトキンは、フクロウのブラウンじいさま(Old Brown)の怒りを買い、御仕置きを受ける羽目になり、尻尾を半分失ってしまう。


<赤りすのナトキンの登場作品>

*「赤りすナトキンのおはなし(The Tale of Squirrel Nutkin)」(1903年)


「ピーターラビットのおはなし(The Tale of Peter Rabbit)」(1902年)は、1893年9月4日に、ヘレン・ベアトリス・ポターが友人アニー・ムーア(Annie Moore)の息子である病床のノエル少年(Noel - 5歳)に対して送った絵手紙が原型であるが、「赤りすナトキンのおはなし」も同じように、彼女の絵手紙が元になっている。


(4)あひるのジマイマ(Jemima Puddle-Duck)



ジマイマは、ヘレン・ベアトリス・ポターが住んでいたカンブリア州(Cumbria)ニアソーリー(Near Sawrey)に所在するヒルトップ農場(Hill Top Farm)に実際に居たアヒルが、そのモデルとなっている。


あひるのジマイマは、自分で卵を孵すために、卵を抱く場所を農場から離れたところで見つけようとする。その時、ジマイマは、キツネの紳士(gentleman fox)に出会い、彼から「自分の夏の住まいを貸してあげよう。」と言われた。キツネの紳士の言葉を信じたジマイマは、彼に付いて行くが、大変な目に遭うことになる。


<あひるのジマイマの登場作品>

*「あひるのジマイマのおはなし(The Tale of Jemima Puddle-Duck)」(1908年)


「あひるのジマイマのおはなし」は、ヘレン・ベアトリス・ポターが住んでいたヒルトップ農場とその周辺が、舞台となっている。