2022年11月27日日曜日

アガサ・クリスティー作「ゴルフ場殺人事件」<英国 TV ドラマ版>(The Murder on the Links by Agatha Christie )- その2

第44話「ゴルフ場殺人事件」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 4 の裏表紙

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「ゴルフ場殺人事件(The Murder on the Links → 2022年11月14日付ブログで紹介済)」(1923年)に基づいて、英国の TV 会社 ITV 社が「Agatha Christie’s Poirot」の第44話(第6シリーズ)として制作した TV ドラマ版は、アガサ・クリスティーの原作とは異なり、ニュース映画の録音場面から始まる。

そのニュース映画では、アーノルド・ベロルディー氏(Mr. Arnold Beroldy)殺害の罪で、妻のジャンヌ・ベロルディー(Jeanne Beroldy - 後に、マルグリット荘(Villa Marguerite)の主人であるベルナデッテ・ドーブルーユ(Bernadette Daubreuil)として登場)が逮捕されて、裁判に掛けられる経緯が語られる。また、共犯者であるジョージ・コナー(George Connor - 後に、ジュネヴィエーヴ荘(Villa Genevieve)の主人で、南米で富を築いた大富豪であるポール・ルノー(Paul Renauld)として登場)は、逮捕を逃れて、国外(南米)へ逃亡したことも追加される。


アガサ・クリスティーの原作の場合、ポール・ルノーがベロルディー氏の殺害に関与したのは、22年前になっているが、英国 TV ドラマ版の場合、10年前に変更されている。また、ポール・ルノーの正体について、アガサ・クリスティーの原作の場合、フランス風の「Georges Conneau」となっているが、英国 TV ドラマ版の場合、英国風の「George Connor」へと変更されている。更に、マルト・ドーブルーユ(Marthe Daubreuil - ドーブルーユ夫人の娘)が、母親の裁判に出廷している設定も追加されている。


アガサ・クリスティーの原作の場合、事件の舞台は、ノルマンディー海岸のメルランヴィル(Merlinville-sur-Mer → 架空の町)に設定されているが、英国 TV ドラマ版の場合、ノルマンディー海岸のドーヴィル(Deauville → 港、別荘、カジノやホテル等を擁するリゾートで、実在の町)へと変更されている。


英国 TV ドラマ版では、(1936年、)エルキュール・ポワロとアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)は、ドーヴィル駅に到着すると、タクシーでホテルへと向かう。タクシーを降りて、「Hotel du Golf」というホテル名を見たポワロは、ゴルフバックを抱えたヘイスティングス大尉が、何故、このホテルに決めたのかを即座に理解して、「ゴルフは嫌いだ!」と不平を漏らす。ポワロの不平を聞いたヘイスティングス大尉は、「どこのホテルも予約で一杯で、ここしか空いていなかったんだ。」と、嘯くのであった。


ホテルの玄関口で、ポール・ルノーと彼の秘書であるガブリエル・ストーナー(Gabriel Stonor)は、ポワロとヘイスティングス大尉を見かける。

ポワロを見かけたポール・ルノーは、その日の夜、ディナー後、ホテルのホールで寛いでいるポワロの元を訪れて、「自分には、命の危険が迫っている。(I believe I am in danger of my life.)」と相談する。ポール・ルノーは、ポワロとヘイスティングス大尉に対して、「このホテルとゴルフコースも、私が所有している。」と付け加えた。そして、ポール・ルノーは、ポワロに対して、翌日、ジュネヴィエーヴ荘への来訪を依頼するとともに、そこまでの行き方も伝えた。


英国 TV ドラマ版の場合、事件の依頼は、ポール・ルノーからポワロに対して、事件の舞台となるドーヴィルにおいて、直接、口頭で行われているが、アガサ・クリスティーの原作の場合、事件の依頼は、直接ではなく、手紙で行われており、彼からの手紙をポワロはロンドンのフラットにおいて読んでいる。ポワロとヘイスティングス大尉が、事件の舞台となるメルランヴィルに駆け付けた時点で、残念ながら、ポール・ルノーは既に殺害された後であり、従って、ポワロは、生前のポール・ルノーには会っていない。


英国 TV ドラマ版の場合、ポール・ルノーがポワロの元を訪れる前、ディナー後、ホテルのホールにおいて、ポワロとヘイスティングス大尉が寛いでいると、司会者に紹介された歌手であるベラ・デュヴィーン(Bella Duveen - ジャック・ルノー(Jack Renauld - ポール・ルノーの義子で、エロイーズ・ルノーの実子)の元恋人)が登場する。ベラ・デュヴィーンを見たヘイスティングス大尉は、彼女に一目惚れしてしまう。


アガサ・クリスティーの原作の場合、ヘイスティングス大尉が恋心を抱く相手は、双子姉妹のうち、シンデレラ(Cinderella)と自称するダルシー・デュヴィーン(Dulcie Duveen)であるが、英国 TV ドラマ版の場合、その相手は、もう一人のベラ・デュヴィーンに変更されている。

また、アガサ・クリスティーの原作の場合、ベラ・デュヴィーン(事件当夜、ルノー家を訪れたと思しき謎の女性)とダルシー・デュヴィーン(ヘイスティングス大尉が恋心を抱く相手)の双子の姉妹という設定になっていたが、英国 TV ドラマ版の場合、双子の姉妹という設定は全くなくなり、二人の設定が一人に集約され、ベラ・デュヴィーンのみが残り、ジャック・ルノーの元恋人で、かつ、ヘイスティングス大尉が恋心を抱く相手という設定になっている。

更に、アガサ・クリスティーの原作の場合、ジャック・ルノーは、ポール・ルノーの実子になっているが、英国 TV ドラマ版の場合、ポール・ルノーがベロルディー氏の殺害に関与したのが、22年前ではなく、10年前に変更されている関係上、ジャック・ルノーは、エロイーズ・ルノーの実子ではあるものの、ポール・ルノーの義子に変更されている。


0 件のコメント:

コメントを投稿