2022年11月3日木曜日

アガサ・クリスティー作「アクロイド殺し」<グラフィックノベル版>(The Murder of Roger Ackroyd by Agatha Christie )- その2

キングスアボット村(King's Abbot)に住むジェイムズ・シェパード医師(Dr. James Sheppard)は、

同村のキングスパドック館(King's Paddock)に住むド裕福な未亡人である

ドロシー・フェラーズ夫人(Mrs. Dorothy Ferrars)が睡眠薬の過剰摂取で亡くなったことを、

噂好きな姉のキャロライン・シェパード(Caroline Sheppard)に話す。


「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd)」(1926年)は、元々、1925年7月16日から同年9月16日にかけて、「ロンドン イーヴニング ニュース(London Evening News)」紙上に、「Who Killed Ackroyd?」というタイトルで、54話の連載小説として掲載され、その後、1冊の書籍として刊行された。


外出したシェパード医師は、

同村のもう一人の富豪であるロジャー・アクロイド(Roger Ackroyd)と偶然出会い。

彼から「相談したいことがある。」と言われ、

彼が住むフェルンリーパーク館(Fernly Park)での夕食に招待された。


シェパード姉弟が住む家の隣りに、新しい住民が引っ越して来た。
後に判明するが、それは、エルキュール・ポワロだった。


本作品を未読の方も居ると思われるので、詳細な説明を省くが、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)は、読者から犯人を秘匿するために、既に前例はあったものの、あるトリックを使用しており、本作品の発表時に、フェア・アンフェア論争を引き起こしている。


フェルンリーパーク館での夕食が終わると、
ロジャー・アクロイドは、シェパード医師を書斎へと招き入れると、驚くべきことを語る。
彼との再婚が噂されていたドロシー・フェラーズ夫人が、
酒好きで、だらしのない夫アシュリー・フェラーズ(Ashley Ferrars)を殺害したのだが、
そして、彼女は、何者かに恐喝されていたと言うのである。


本作品の発表前の段階で、アガサ・クリスティーは、


(1)長編「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affairs at Styles)」(1920年):エルキュール・ポワロシリーズ第1作目

(2)長編「秘密機関(The Secret Adversary)」:トマス・ベレズフォード(Thomas Beresford - 愛称:トミー(Tommy))/ プルーデンス・カウリー(Prudence Cowley - 愛称:タペンス(Tuppence)シリーズ第1作目

(3)長編「ゴルフ場殺人事件(The Murder on the Links)」(1923年):エルキュール・ポワロシリーズ第2作目

(4)長編「茶色の服の男(The Man in the Brown Suit)」(1924年)

(5)短編集「ポワロ登場(Poirot Investigates)」(1925年)

(6)長編「チムニーズ館の秘密(The Secret of Chimneys)」(1925年)


長編5作と短編集1作を既に発表していたが、推理作家としての彼女の知名度は、今ひとつだった。しかしながら、このフェア・アンフェア論争により、アガサ・クリスティーの知名度は大きく高まり、ベストセラー作家の仲間入りを果たしたのである。


ドロシー・フェラーズ夫人を虚喝していた人物の正体を知りたいと語る
ロジャー・アクロイドのところへ、執事のパーカー(Parker)が手紙を届ける。
それは、
ドロシー・フェラーズ夫人が、亡くなる直前に、
ロジャー・アクロイド宛に出したものだった。

「ドロシー・フェラーズ夫人から受け取った手紙の内容を、一人で読みたい。」と話す
ロジャー・アクロイドを書斎に残すと、
シェパード医師は、フェルンリーパーク館を徒歩で後にする。
途中、シェパード医師は、フェルンリーパーク館へと向かう人物に、道を尋ねられる。



「アクロイド殺し」のグラフィックノベル版を担当したベルギー出身のイラストレーターであるブルーノ・ラチャード(Bruno Lachard)は、2種類の赤色、オレンジ色、黄色、黄緑色、緑色、水色、青色、そして、紫色等を用いて、物語の全編を通し、セピア調の色彩で彩っており、とても印象深い。個人的には、特に、赤色や紫色で彩られたシーンは、読者に対して、非常に強く訴えかけているように思われる。



自宅へと戻ったシェパード医師は、
「執事のパーカーから、「ロジャー・アクロイドが殺害された。」と言う電話連絡があった。」と、
姉のキャロラインに伝えると、車で
フェルンリーパーク館へと急行する。
フェルンリーパーク館に着いたシェパード医師が、執事のパーカーに尋ねると、
彼は、「そんな電話をした覚えはない。」と言う。
不審を感じたシェパード医師とパーカーが、鍵が掛かった書斎のドアを破ると、
ロジャー・アクロイドが、首筋を短剣で刺されて、殺されているのを発見した。


また、前述の通り、アガサ・クリスティーは、物語の中で、読者に対して、あるトリックを仕掛けているが、トリックの内容故に、映画、TV やグラフィックノベル等の「視覚化」が、非常に困難である。本グラフィックノベル版の場合、イラストレーターは、アガサ・クリスティーによるトリックの内容をうまく視覚化の上、あまり目立たないよう、物語の各シーンの中に、うまく溶け込ませていると言える。

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