英国で出版された「ストランドマガジン」 1923年3月号に掲載された挿絵(その5) - プレスベリー教授の屋敷の厩舎の近くで、 首輪がスッポリと抜けたウルフハウンド犬のロイが、 プレスベリー教授の喉元に噛み付く場面が描かれている。 画面後方の人物は、左側から、 トレヴァー・ベネット、シャーロック・ホームズ、 そして、ジョン・H・ワトスンである。 |
英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が制作した「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)において、第5シリーズ(The Casebook of Sherlock Holmes)の第6エピソード(通算では第32話)として TV ドラマ化されたサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「這う男(The Creeping Man → 2022年11月6日 / 11月18日 / 11月20日付ブログで紹介済)」は、コナン・ドイルの原作とは異なり、類人猿の売買業者であるウィルコックス(Wilcox)とジェンキンス(Jenkins)、そして、類人猿の場面から始まる。
続いて、ある日の深夜、ケンフォード大学(Camford University)の生理学者(physiologist)であるプレスベリー教授(Professor Presbury)の娘エディス(Edith Presbury)が寝室で眠っていると、何者かが彼女の寝室の窓に張り付く場面へと移る。窓の外に何者かの影を認めたエディスは、気絶してしまう。
翌朝、エディスが、プレスベリー教授の助手で、彼女の婚約者でもあるトレヴァー・ベネット(Trevor Bennett)に対して、昨夜のことを話した結果、トレヴァーが、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズのところへ事件の相談を持ち込むことに繋がって行く。
コナン・ドイルの原作の場合、トレヴァー・ベネットは、プレスベリー教授にかかる奇行の数々を心配して、ホームズの元に事件の相談を持ち込んだ後、何者かがエディスの寝室の窓の外に張り付く事件が発生するが、英国 TV ドラマ版の場合、順番が逆になっている。
また、コナン・ドイルの原作の場合、エディスの寝室の窓の外に張り付いたのが、彼女の父親であるプレスベリー教授であることが判明しているが、英国 TV ドラマ版の場合、エディスの寝室の窓の外に張り付いたのが、何者であるかについては、この時点において、ハッキリしていない。
その後、コナン・ドイルの原作通り、ジョン・H・ワトスンが、ホームズからの電報を受け取り、ベイカーストリート221B へと呼び出される場面へとなる。
ただし、コナン・ドイルの原作の場合、ワトスンは、ホームズからの電報を受け取った後、文句の一つも言わず、ベイカーストリート221B へと駆け付けているが、英国 TV ドラマ版の場合、ワトスンは、ベイカーストリート221B へとやって来るが、ホームズに対して、「ホームズ、私には、非常に重要な手術をあるんだ。(I have a full surgery, Holmes.)」と、不平を漏らしている。
コナン・ドイルの原作の場合、トレヴァー・ベネットとエディス・プレスベリーの依頼に基づき、ホームズとワトスンは、直接、プレスベリー教授に面会を申し入れて、追い返されているが、英国 TV ドラマ版の場合、トレヴァー・ベネットとエディス・プレスベリーの依頼に基づき、ホームズとワトスンは、プレスベリー教授の外出中に、エディスの寝室を調べていると、教授が戻って来て、追い返されるという展開になっている。
コナン・ドイルの原作の場合、プレスベリー教授が飼っている忠実なウルフハウンド犬のロイが、教授に噛み付いた日付は、「7月2日」、「7月11日」および「7月20日」となっているが、英国 TV ドラマ版の場合、ホームズとトレヴァー・ベネットの間の会話からすると、「9月2日」と「9月15日(「1回目から13日後。」と、ホームズが話している)」となっており、日付がかなり異なっている。
コナン・ドイルの原作の場合、スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)は登場しないが、英国 TV ドラマ版の場合、ホームズとワトスンが本件に関与することを好まないプレスベリー教授からの要請を受けて、レストレード警部が、ベイカーストリート221B を訪れて、ホームズに対して、本件から手を引くよう、要請を行う。
英国 TV ドラマ版では、その後、トレヴァー・ベネットは、深夜、プレスベリー教授の屋敷の階段において、黒い影を見かけるが、何者であるかについては、判らなかった。
コナン・ドイルの原作の場合、トレヴァーは、深夜、教授が這うようにして廊下を歩き、そして、トレヴァーと一悶着あった後、階段を降りて行ったので、この点についても、異なっている。また、この場面に関しては、コナン・ドイルの原作の場合、トレヴァーがホームズに事件の相談を持ち込む前の出来事であるが、英国 TV ドラマ版の場合、トレヴァーがホームズに事件の相談を持ち込んだ後の出来事へと変更されている。
コナン・ドイルの原作にはないが、(1)ホームズが、新聞で類人猿盗難事件の記事を見つける場面、(2)プレスベリー教授の同僚で、比較解剖学の議長を務めるモーフィー教授(Professor Morphy)の娘で、プレスベリー教授の婚約者であるアリス・モーフィー(Alice Morphy)が、プレスベリー教授の元を訪れて、年齢差を理由に、婚約指輪を返す場面、そして、(3)ホームズとワトスンの2人が、コマーシャルロード(Commercial Road)にあるA・ドーラック(A. Dorak)の店へ侵入する場面が、ここで追加されている。
コナン・ドイルの原作の場合、事件のクライマックスは、プレスベリー教授の屋敷の厩舎の近くで、ウルフハウンド犬のロイは、首輪がスッポリと抜けた後、教授の喉元に喰らいつく場面に訪れるが、英国 TV ドラマ版の場合、プレスベリー教授が、元婚約者となってしまったアリスの部屋へと侵入して、彼女を襲おうとするが、放たれたウルフハウンド犬のロイが、教授に襲い掛かるという場面に変更されている。
コナン・ドイルの原作の場合、事件のクライマックスの日付について、明確に特定されていないものの、(1903年)9月の中旬から下旬にかけての日付だと思われるが、英国 TV ドラマ版の場合、「10月21日」と言及されている。
コナン・ドイルの原作の場合、事件のクライマックスの後、プレスベリー教授の書斎において、ホームズは、ワトスンとトレヴァー・ベネットに対して、事件の真相を語るが、英国 TV ドラマ版の場合、ベイカーストリート221B において、ホームズは、ワトスンとレストレード警部に対して、事件の真相を語る。レストレード警部が辞去した後、ワトスンは、ホームズに対して、「If I may say so, you went too far in allowing Lestrade all the credit.」と言って、事件解決の手柄をレストレード警部に譲ることに異を唱えるが、ホームズは、「Not at all, Watson. You can file it away in our archives. One day, the entire truth can be fold.」と返事して、意に介さなかったのである。
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