2022年11月12日土曜日

アガサ・クリスティー作「青列車の秘密」<グラフィックノベル版>(The Mystery of the Blue Train by Agatha Christie )- その1

HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「青列車の秘密」の
グラフィックノベル版の表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-
画面中央には、青列車内で殺害されたルース・ケタリングが、
画面左上には、彼女が向かった南フランスのリヴィエラが、
そして、画面左下と画面右下には、
彼女の父親であるルーファス・ヴァン・オールディンが
彼女にプレゼントしたルビー「炎の心」が描かれている。

18番目に紹介するアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)による長編作品のグラフィックノベル版は、「青列車の秘密(The Mystery of the Blue Train)」(1928年)である。


HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「青列車の秘密」の
グラフィックノベル版の表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-
南フランスのリヴィエラへ向かう途中、
何者かに殺害されたルース・ケタリングが乗車していた
青列車が描かれている。


本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては第8作目に、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編としては第5作目に該っている。

物語は、1928年6月のパリから始まる。


本作品のグラフィックノベル版は、元々、クロアチア出身のイラストレーターである Marc Piskic が作画を担当して、2005年にフランスの Heupe SARL から「Le Train blue」というタイトルで出版された後、2007年に英国の HarperCollinsPublishers から英訳版が発行されている。


米国の大富豪であるルーファス・ヴァン・オールディンは、
法外な値段にもかかわらず、
ロシア人の外交官から、「炎の心臓」と呼ばれるルビーを手に入れた。


1928年6月、フランスのパリにおいて、米国の大富豪であるルーファス・ヴァン・オールディン(Rufus Van Aldin)は、ロシア人の外交官から、悲劇と暴力の長い歴史に彩られた「炎の心臓(Heart of Fire)」と呼ばれる傷一つないルビーを手に入れた。

ルーファス・ヴァン・オールディンが、ロシア人の外交官からルビーを買い取ってから10分も経たないうちに、彼は二人組の暴漢に襲われるが、なんとか事なきを得る。実は、2人の暴漢は、「侯爵(Monsieur Le Marquis)」と呼ばれる男が差し向けた手の者だった。この「侯爵」は、国際的な宝石泥棒で、英国人にしては、フランス語を非常に流暢に話すことができた。「侯爵」は、珍しい骨董品ばかりを取り扱うパポポラス(Papopolous)の店を訪れると、「暴漢による襲撃は失敗したが、次の計画は失敗する筈がない。」と豪語するのであった。


二人組の暴漢による襲撃によるルビー「炎の心臓」の強奪に失敗した
国際的な宝石泥棒である「侯爵」は、
パポポラスの店を訪れ、「次の計画で、必ずルビーを手に入れる。」と豪語した。

ルーファス・ヴァン・オールディンが、法外な値段にもかかわらず、不気味な伝説を伴うルビーを手に入れたのは、彼の人生で唯一愛する娘のルース・ケタリング(Ruth Kettering)のためだった。このルビーで、結婚に失敗した娘の気を紛らわせることができるのであれば、ルーファス・ヴァン・オールディンは、金に糸目を全くつけなかったし、如何なる危険も顧みなかったのである。

ルーファス・ヴァン・オールディンの娘のルースは、将来、レコンバリー卿(Lord Leconbury)となるデリク・ケタリング(Derek Kettering)と結婚していた。ルースと結婚する前のデリク・ケタリングは、派手なギャンブルや出鱈目な生活等で、一家の財産を食い潰してきたが、結婚を機にして、その暮らしぶりを改めるのではないかと思われた。ところが、周囲の期待とは裏腹に、デリク・ケタリングの暮らしぶりが改まることはなく、それに加えて、悪名高いダンサーであるミレーユ(Mirelle)を愛人にしていた。


パリからロンドンへと戻ったルーファス・ヴァン・オールディンは、
秘書のリチャード・ナイトン少佐(Major Richard Knighton)に対して、
パリで手に入れたルビー「炎の心臓」を見せて、驚かせる。


パリからロンドンへと戻ったルーファス・ヴァン・オールディンは、早速、ルビーを娘のルースにプレゼントするとともに、ろくでなしの夫デリクとの離婚を勧めるのであった。当初、妙に躊躇うそぶりを見せるルースであったが、ルーファス・ヴァン・オールディンは、「デリクは、金目当てに、お前と結婚した」ことをルースに認めさせ、離婚の手続を進めることに同意させた。


ルーファス・ヴァン・オールディンは、
結婚に失敗した娘のルース・ケタリングにルビー「炎の心臓」をプレゼントして、
彼女の気を紛らわせようとする。
近いうちに、南フランスのリヴィエラへ向かうルースは、ルビーを持参しようとするが、
父のルーファスは、銀行の貸金庫に預けるよう、強く警告した。


ルースは、南フランスのリヴィエラ(Riviera)で冬のシーズンを過ごすため、近いうちに、ロンドンを発つ予定だった。ルーファス・ヴァン・オールディンは、ルースに対して、ルビーをリヴィエラへ持参するリスクは避けて、銀行の貸金庫に保管しておくよう、強く警告する。

しかしながら、残念なことに、ルーファス・ヴァン・オールディンの警告は、無視されることとなった。そして、それが、ルースにとって、悲劇を呼ぶことになる。ルースは、代償として、自分の命を落とすことになるのであった。


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