18番目に紹介するアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)による長編作品のグラフィックノベル版は、「青列車の秘密(The Mystery of the Blue Train)」(1928年)である。
HarperCollinsPublishers から出ている アガサ・クリスティー作「青列車の秘密」の グラフィックノベル版の表紙 (Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)- 南フランスのリヴィエラへ向かう途中、 何者かに殺害されたルース・ケタリングが乗車していた 青列車が描かれている。 |
物語は、1928年6月のパリから始まる。 |
米国の大富豪であるルーファス・ヴァン・オールディンは、 法外な値段にもかかわらず、 ロシア人の外交官から、「炎の心臓」と呼ばれるルビーを手に入れた。 |
ルーファス・ヴァン・オールディンが、ロシア人の外交官からルビーを買い取ってから10分も経たないうちに、彼は二人組の暴漢に襲われるが、なんとか事なきを得る。実は、2人の暴漢は、「侯爵(Monsieur Le Marquis)」と呼ばれる男が差し向けた手の者だった。この「侯爵」は、国際的な宝石泥棒で、英国人にしては、フランス語を非常に流暢に話すことができた。「侯爵」は、珍しい骨董品ばかりを取り扱うパポポラス(Papopolous)の店を訪れると、「暴漢による襲撃は失敗したが、次の計画は失敗する筈がない。」と豪語するのであった。
二人組の暴漢による襲撃によるルビー「炎の心臓」の強奪に失敗した 国際的な宝石泥棒である「侯爵」は、 パポポラスの店を訪れ、「次の計画で、必ずルビーを手に入れる。」と豪語した。 |
ルーファス・ヴァン・オールディンが、法外な値段にもかかわらず、不気味な伝説を伴うルビーを手に入れたのは、彼の人生で唯一愛する娘のルース・ケタリング(Ruth Kettering)のためだった。このルビーで、結婚に失敗した娘の気を紛らわせることができるのであれば、ルーファス・ヴァン・オールディンは、金に糸目を全くつけなかったし、如何なる危険も顧みなかったのである。
ルーファス・ヴァン・オールディンの娘のルースは、将来、レコンバリー卿(Lord Leconbury)となるデリク・ケタリング(Derek Kettering)と結婚していた。ルースと結婚する前のデリク・ケタリングは、派手なギャンブルや出鱈目な生活等で、一家の財産を食い潰してきたが、結婚を機にして、その暮らしぶりを改めるのではないかと思われた。ところが、周囲の期待とは裏腹に、デリク・ケタリングの暮らしぶりが改まることはなく、それに加えて、悪名高いダンサーであるミレーユ(Mirelle)を愛人にしていた。
パリからロンドンへと戻ったルーファス・ヴァン・オールディンは、 秘書のリチャード・ナイトン少佐(Major Richard Knighton)に対して、 パリで手に入れたルビー「炎の心臓」を見せて、驚かせる。 |
パリからロンドンへと戻ったルーファス・ヴァン・オールディンは、早速、ルビーを娘のルースにプレゼントするとともに、ろくでなしの夫デリクとの離婚を勧めるのであった。当初、妙に躊躇うそぶりを見せるルースであったが、ルーファス・ヴァン・オールディンは、「デリクは、金目当てに、お前と結婚した」ことをルースに認めさせ、離婚の手続を進めることに同意させた。
ルーファス・ヴァン・オールディンは、 結婚に失敗した娘のルース・ケタリングにルビー「炎の心臓」をプレゼントして、 彼女の気を紛らわせようとする。 近いうちに、南フランスのリヴィエラへ向かうルースは、ルビーを持参しようとするが、 父のルーファスは、銀行の貸金庫に預けるよう、強く警告した。 |
ルースは、南フランスのリヴィエラ(Riviera)で冬のシーズンを過ごすため、近いうちに、ロンドンを発つ予定だった。ルーファス・ヴァン・オールディンは、ルースに対して、ルビーをリヴィエラへ持参するリスクは避けて、銀行の貸金庫に保管しておくよう、強く警告する。
しかしながら、残念なことに、ルーファス・ヴァン・オールディンの警告は、無視されることとなった。そして、それが、ルースにとって、悲劇を呼ぶことになる。ルースは、代償として、自分の命を落とすことになるのであった。
0 件のコメント:
コメントを投稿