2022年11月26日土曜日

アガサ・クリスティー マープル 2023年カレンダー(Agatha Christie - Marple - Calendar 2023)- 「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage)

ビル・ブラッグ氏が描く
ミス・マープルシリーズの長編第1作目「牧師館の殺人」の一場面


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2023年カレンダーのうち、2番目を紹介したい。


(2)「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage)」


「牧師館の殺人」は、1930年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第1作目である。


本作品の語り手を務めるのは、ロンドン郊外のセントメアリーミード(St. Mary Mead)という小さな村にある教会の司祭(vicar)であるレナード・クレメント牧師(Reverend Leonard Clement)。

ある水曜日の午後、牧師館において、クレメント牧師は、若き妻のグリゼルダ(Griselda)と甥のデニス(Dennis)と一緒に、昼食をとっていたが、その際、彼らの話題は、ルシアス・プロセロウ大佐(Colonel Lucius Protheroe)のことでもちきりだった。プロセロウ大佐は、治安判事かつセントメアリーミード村の教区委員で、次の日の午後、牧師館にやって来て、教会の献金袋から盗まれた1ポンド紙幣の件について、クレメント牧師と話し合うことになっていた。

プロセロウ大佐は、クレメント牧師を困らせることを何よりも至上の楽しみにしていたので、昼食の席上、クレメント牧師は、思わず、「誰でもいいから、プロセロウ大佐をあの世へ送ってくれたら、世の中は随分と良くなるだろう。」と口走ってしまう。


昼食後、クレメント牧師は、セントメアリーミードに滞在中の肖像画家であるローレンス・レディング(Lawrence Redding)のアトリエへと出向く。牧師館の庭の一画に小屋があり、彼は、この小屋をアトリエとして使用していた。

クレメント牧師は、このアトリエ内でローレンス・レディングとプロセロウ大佐の妻であるアン・プロセロウ(Anne Protheroe)の二人が情熱的なキスを交わしている現場を、偶然見かけてしまう。クレメント牧師の跡を追って、牧師館の書斎まで追いかけてきたアン・プロセロウに対して、クレメント牧師は、軽はずみな関係はできる限り早く終わらせるよう、諭す。


その夜、ローレンス・レディングは、牧師館の夕食に招かれていた。

夕食後、牧師館の書斎において、クレメント牧師は、ローレンス・レディングに対して、厳しく叱責するとともに、できるだけ早く村を立ち去るよう、忠告する。ところが、ローレンス・レディングは、クレメント牧師の忠告を全く受け入れず、「プロセロウ大佐が死んでくれれば、いい厄介払いになる。」とうそぶくと、「自分は、25口径のモーゼル銃を持っている。」と、恐ろしいことを口にする。


翌朝、セントメアリーミードのハイストリートにおいて、クレメント牧師は、プロセロウ大佐と偶然出会った際、耳が遠くなりかけている人にありがちで、自分以外の人間も耳が遠いと思い込んでいるプロセロウ大佐は、当日の午後の約束を大声で念押ししつつ、約束の時間も午後6時15分へと変更された。

クレメント牧師が牧師館に戻ると、ローレンス・レディングが立ち寄って、「(プロセロウ大佐の妻である)アンとの不倫関係を清算して、明日、村を去るつもりだ。」と、クレメント牧師に告げる。


その日の午後5時半頃、クレメント牧師は電話を受け、「ロウアーファーム(Lower Farm)のアボット氏(Mr. Abbott)が危篤状態なので、側に居てほしい。」と頼まれる。クレメント牧師は、今からロウアーファームまで出かけると、プロセロウ大佐との約束の午後6時15分までに牧師館へ戻ることは難しいと判断して、プロセロウ大佐には書斎で待っていてもらうよう、メイドに頼むと、急いでロウアーファームへと向かった。


クレメント牧師がロウアーファームのアボット氏の元を訪れると、驚くことに、本人は全くピンピンとしていて、先程の電話は悪戯であったことが判明する。

午後7時頃、クレメント牧師が牧師館へと戻った際、非常に取り乱した様子のローレンス・レディングが大慌てで牧師館から立ち去るところだった。不思議に思ったクレメント牧師が書斎に入ると、プロセロウ大佐が拳銃で後頭部を撃たれて、牧師の書き物机の上に突っ伏してたまま、息絶えているのを発見したのである。


メルチェット大佐(Colonel Melchett)とスラック警部(Inspector Slack)が率いる地元警察が捜査を進める中、ローレンス・レディングとアン・プロセロウの二人がそれぞれに、プロセロウ大佐の殺害を自供した。

ところが、ローレンス・レディングは、正確ではない犯行時刻を主張する一方、アン・プロセロウの場合、犯行時刻の頃、彼女が牧師館を訪れるのを、隣りに住むミス・マープルが見かけており、アン・プロセロウは、拳銃のような大きさのものが入ったバッグ等を持っていなかったと、ミス・マープルは明言する。

地元警察は、不倫関係のため、プロセロウ大佐の殺害動機があると疑われたローレンス・レディングとアン・プロセロウの二人が、お互いに庇い合っているものと考えて、一旦、二人を無罪放免とし、他に容疑者を求めることになった。


果たして、クレメント牧師の牧師館の書斎において、プロセロウ大佐の後頭部を拳銃で撃って、彼を殺害した犯人は、一体、誰なのか?



カレンダーには、レナード・クレメント牧師が司祭を務める牧師館の書斎において、何者かに後頭部を拳銃で撃たれて殺害されたルシアス・プロセロウ大佐から流れ出た血が、クレメント牧師の机の上に広がり、そして、床へと滴り落ちる場面が描かれている。

背後の窓の右側の壁には、ミス・マープルと思われる人物の影が映っている。それとも、プロセロウ大佐を殺害した真犯人の影であろうか?


Harper Collins Publishers 社から出版されている「牧師館の殺人」のペーパーバック版の表紙には、ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、プロセロウ大佐の殺害に使用された拳銃の形に切り取られているものが使用されている。


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