読後の私的評価(満点=5.0)
(1)事件や背景の設定について ☆☆☆半(3.5)
スコットランド(Scotland)のハイランド(Highland - スコットランド北部にある地方行政区画)に所在するブレーデルン城(Braedern Castle)を所有する大地主で、ウイスキー蒸留所を経営する大実業家であるサー・ロバート・マクラーレン(Sir Robert McLaren)の義理の娘イスラ・マクラーレン(Isla McLaren)によるシャーロック・ホームズ訪問(彼女達が居住するブレーデルン城に、サー・ロバート・マクラーレンの亡くなった妻であるレディーマクラーレン(Lady McLaren)の幽霊が出没する件とメイドのフィオナ・ペイズリー(Fiona Paisley)が失踪した件を相談)、ホームズがスコットランドのキャムフォード(Camford)にある高校に寄宿していた際の同級生オーヴィル・セント・ジョン(Orville St. John)による度重なるホームズ襲撃、そして、マイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)からの依頼(フランスのブドウ園に寄生虫がばら撒かれたため、フランスにおけるワインの生産が75%落ち込んでおり、その容疑者として、スコットランドのウイスキー蒸留元3箇所を挙げられていることの調査)の3つの事件が物語の序盤に発生し、それらのどれもが、ホームズとジョン・H・ワトスンの二人を、スコットランドのブレーデルン城へと誘っていく。そして、3つの事件は、最終的に、一つに集約され、その根幹には、ホームズがスコットランドのキャムフォードにある高校に寄宿していた際に起きたある事件が横たわっている。ホームズは、彼の過去の悪夢と対峙することになる。
(2)物語の展開について ☆☆半(2.5)
序盤(約50ページ)を経ると、物語の舞台は、南フランスのニース(Nice)へ移るが、150ページ目辺りから、マクラーレン一家が住むスコットランドのブレーデルン城へと、更に移る。
序盤やニースにおける話は、それなりに進展し、マクラーレン一家が宿泊するニースの「Grand Hotel du Cap」での夕食会の際、デザートのプレートに、先日、スコットランドのブレーデルン城から姿を消したメイドのフィオナ・ペイズリーの冷凍された首が供されていたというショッキングな事件が発生した時点で、ある意味、本作品のクライマックスを迎えたと言える。
本作品は、全体で約500ページあるが、物語の舞台がスコットランドのブレーデルン城へと移った後、事件の解決に至るまでの約300ページにわたり、ある理由のため、ホームズの推理力が冴えないこともあり、事件の捜査が遅々として進まず、また、更なる大事件が発生する訳でもないので、300ページを読み進めるには、非常に歯痒い。
(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆☆(3.0)
物語の序盤より、ある理由のため、ホームズが膜(=彼の過去の悪夢)に覆われてしまい、物語の全般を通して、鋭敏な推理力に
冴えが全く見られない。理由は判るものの、推理力が冴えないホームズをずーっと読まされるのは、全然面白くない。
物語の終盤、相棒のワトスンが、一旦、ブレーデルン城を出るが、ホームズの過去の悪夢を突き止め、再度、ブレーデルン城へと戻り、ホームズが過去の悪夢を払拭する手助けをする。
本来であれば、3点よりも低いが、ワトスンによるホームズへの友情を考慮して、3点とした。
(4)総合評価 ☆☆☆(3.0)
作者の第1作目である「シャーロック・ホームズの冒険 / 芸術家の血(A Sherlock Holmes Adventure / Art in the Blood → 2022年4月17日 / 4月23日 / 4月30日付ブログで紹介済)」(2015年)において、ホームズのライバルとなるフランス人探偵のジャン・ヴィドック(Jean Vidocq)が登場するが、単なる顔見せ程度の悪役という役割しか、果たしていない。第1作目での出番はかなり多かったが、第2作目では、いきなり、単なる顔見せ程度という格下げを受けている。今回のメインテーマは、ホームズが彼の過去の悪夢と対峙する話なので、ライバルの登場は余計なのかもしれない。第3作目以降も、ジャン・ヴィドックは登場するが、どんどん出番は減って行き、第4作目では、一切登場しない。第1作目で登場させたものの、役柄的に、ホームズの推理力に対抗するような人物ではないので、扱いづらいのだろう。
上記の通り、本作品は、ホームズが彼の過去の悪夢と対峙する話である一方、ある理由により、ホームズの推理力が全く冴えを見せず、500ページを読み通すのは、正直ベース、なかなか大変であった。
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