2023年9月2日土曜日

エドワード・ヘンリー・マスターマン(Edward Henry Masterman)

シティー・オブ・ロンドン内にあるフライアーストリート(その1)
<筆者撮影> -
「オリエント急行の殺人」において、
米国人の実業家であるサミュエル・エドワード・ラチェットの
執事を務めているエドワード・ヘンリー・マスターマンの住所は、
クラーケンウェル地区フライアーストリート21番地となっているが、
現在の住所表記上、存在していないので、架空の住所だと思われる。


「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)」は、アガサ・クリスティーが1934年に発表した作品で、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が執筆した長編としては、第14作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第8作目に該っている。


シティー・オブ・ロンドン内にあるフライアーストリート(その2)
<筆者撮影>

オリエント急行の乗客の一人である米国人の実業家は、サミュエル・エドワード・ラチェット(Samuel Edward Ratchett)と名乗っていたが、その名前は偽名であった。実は、彼は、5年前に、米国において、幼いデイジー・アームストロング(Daisy Armstrong)を誘拐して殺害した犯人カセッティ(Cassetti)だったのだ。


シティー・オブ・ロンドン内にあるフライアーストリート(その3)
<筆者撮影>

サミュエル・エドワード・ラチェット殺人事件が発生した寝台車輌(車掌 - ピエール・ポール・ミシェル(Pierre Paul Michel / フランス人))には、様々な国籍の人達が乗車していた。


シティー・オブ・ロンドン内にあるフライアーストリート(その4)
<筆者撮影>

*1号室(一等寝台席):エルキュール・ポワロ

*2号室(一等寝台席):サミュエル・エドワード・ラチェット

*3号室(一等寝台席):キャロライン・マーサ・ハバード夫人(Mrs. Caroline Martha Hubbard / 米国人)

*4号室(二等寝台席):エドワード・ヘンリー・マスターマン(Edward Henry Masterman / 英国人)

*5号室(二等寝台席):アントニオ・フォスカレリ(Antonio Foscarelli / 米国に帰化したイタリア人)

*6号室(二等寝台席):ヘクター・ウィラード・マックイーン(Hector Willard MacQueen / 米国人)

*7号室(二等寝台席):空室

*8号室(二等寝台席):ヒルデガード・シュミット(Hildegarde Schmidt / ドイツ人)

*9号室(二等寝台席):空室

*10号室(二等寝台席):グレタ・オルソン(Greta Ohisson / スウェーデン人)

*11号室(二等寝台席):メアリー・ハーマイオニー・デベナム(Mary Hermione Debenham / 英国人)

*12号室(一等寝台席):エレナ・マリア・アンドレニ伯爵夫人(Countess Elena Maria Andrenyi / ハンガリー人)

*13号室(一等寝台席):ルドルフ・アンドレニ伯爵(Count Rudolf Andrenyi / ハンガリー人)

*14号室(一等寝台席):ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人(Princess Natalia Dragomiroff / フランスに帰化したロシア人)

*15号室(一等寝台席):アーバスノット大佐(Colonel Arbuthnot / 英国人)

*16号室(一等寝台席):サイラス・ベスマン・ハードマン(Cyrus Bethman Hardman / 米国人)


シティー・オブ・ロンドン内にあるフライアーストリート(その5)
<筆者撮影>

英国人なのは、(1)4号室のエドワード・ヘンリー・マスターマン、(2)11号室のメアリー・ハーマイオニー・デベナムと(3)15号室のアーバスノット大佐の3名で、ポワロとの質疑応答において、英国内の具体的な住所が言及されるのは、エドワード・ヘンリー・マスターマンの場合のみである。


シティー・オブ・ロンドン内にあるフライアーストリート(その6)
<筆者撮影>

エドワード・ヘンリー・マスターマンは、何者かに殺害されたサミュエル・エドワード・ラチェットの執事(valet)で、ポワロの質問に対して、


・年齢:39歳

・住所:クラーケンウェル地区(Clerkenwell)フライアーストリート21番地(21 Friar Street)

・前職:グローヴナースクエア(Grosvenor Square → 2015年2月22日付ブログで紹介済)に住むサー・ヘンリー・トムリンスン(Sir Henry Tomlinson)の執事


と答えた。



「オリエント急行の殺人」が映画や TV ドラマ版として映像化される場合、年配の俳優がエドワード・ヘンリー・マスターマンを演じる印象が強いが、アガサ・クリスティーの原作によると、実際には、壮年である。


クラーケンウェル地区は、イズリントン・ロンドン特別区(London Borough of Islington)内にあるが、現在の住所表記上、クラーケンウェル地区には、フライアーストリートは存在していないので、架空の住所だと思われる。

なお、現在の住所表記上、フライアーストリートは、シティー・オブ・ロンドン(City of London → 2018年8月4日 / 8月11日 / 8月18日付ブログで紹介済)内に所在するセントポール大聖堂(St. Paul’s Cathedral → 2018年8月18日 / 8月25日 / 9月1日付ブログで紹介済)の近くにある。


広場内から見たグローヴナースクエアの北側


また、エドワード・ヘンリー・マスターマンが以前に執事として働いていたグローヴナースクエアは、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)によるシャーロック・ホームズシリーズ短編の「独身の貴族(The Noble Bachelor)」(出版社によっては、「花婿失踪事件(A Case of Identity)」との対比から、「花嫁失踪事件」と訳しているケースあり)において、ロバート・ウォルシンガム・ド・ヴェア・セント・サイモン卿(Lord Robert Walsingham de Vere St Simon)の邸宅がある場所として記録されている。


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