2022年9月5日月曜日

ポール・W・ナッシュ作「シャーロック・ホームズの遺稿」(The Remains of Sherlock Holmes by Paul W. Nash) - その1

英国の Strawberry Books 社から2011年に出版された
ポール・W・ナッシュ作
「シャーロック・ホームズの遺稿」のカバー表紙
(Dust-jacket design by Armand Dill /
Wood^engraving by Paul W. Nash)

本作品「シャーロック・ホームズの遺稿(The Remains of Sherlock Holmes)」は、英国の歴史家、作家で作曲家でもあるポール・W・ナッシュ(Paul W. Nash)により2010年に執筆され、Strawberry Books 社から2011年に出版された。ポール・W・ナッシュは、ジョン・H・ワトスンと同じように、医師でもある。


チャリングクロス16番地(16 Charing Cross)にあるロイズ銀行(Lloyd’s Bank Ltd.)の地下金庫に預けられていたジョン・H・ワトスンの未発表事件記録は、第二次世界大戦時(1941年)、ドイツ軍によるロンドン爆撃により、当該建物が破壊されたため、焼失したものと思われた。

ところが、ワトスンは、1930年3月、マリルボーンハイストリート(Marylebone High Street)にあるロンドン&ウェストミンスター銀行(London and Westminster Bank)にも、未発表事件記録を預けていたのである。ワトスンの遺言により、80年間開封が禁じられていたが、その禁が解かれた2010年4月1日に封を開けたところ、56件もの未発表事件記録が見つかった。

本作品(短編集)は、その中から選ばれた7件の事件で構成されている。



ある土曜日の午後に撮影した
マリルボーンハイストリート

(1)サリー州の巨人の冒険(The Adventure of the Surrey Giant)


1882年春先の事件である。

当時、ある偽造事件を追っていたシャーロック・ホームズは、レストレード警部(Inspector Lestrade)からの連絡を受け、高飛びしようとする犯人を捕らえるために、ワトスンと一緒に、馬車でベイカーストリート221B221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)から東インドドック(East India Dock)へ向かおうとしていた。

その馬車の前に、ある男性が身を投げ出して、ホームズとワトスンの二人を停めようとする。彼は、サリー州(Surrey)のワートンホルム(Wartonholm)に住むフェザーストーン・モロイ(Featherstone Molloy)で、その村にある学校に勤める校長の娘ソフィア・カーター(Sophia Carter)と結婚の約束をしていた。

ところが、ある夜、彼女が住むコテージの寝室の窓が破壊された上に、彼女は頭蓋骨を何か非常に重いもので殴られて死亡したのである。地元警察は、当初、居直り強盗の線で事件を捜査しようとしたが、彼女の寝室の窓の下にある花壇に巨大な足跡を発見した。

この村には、人間に迫害された巨人クラドック(Craddock)の言い伝えが残されていた。果たして、ソフィアは、この巨人クラドックによって殺されたのだろうか?


(2)カムデンローズの謎(The Mystery of the Camden Rose)


1882年10月に発生した事件である。

ある月曜日の朝、ホームズとワトスンは、ルーシー・レノックス(Lucy Lennox)と名乗る女性の訪問を受ける。

彼女は、舞台女優で、同じ舞台俳優のトム・レノックス(Tom Lennox)と結婚しているが、夫との婚姻を解消しようとしていた。何故なら、彼女は、共演する舞台俳優のロバート・コラル(Robert Corrall)と恋仲になっていたからである。

それを知った夫のトムは、土曜日の午前中、突然失踪してしまい、当日の午後の舞台に穴を空けてしまった。その後、夫の行方が判らないルーシーは、ホームズに対して、夫を見つけ出してほしいと依頼する。

果たして、トムは何処に姿を消してしまったのだろうか? 

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