日本の東京創元社から 創元推理文庫として1980年に出版されている ジョン・ディクスン・カー作「血に飢えた悪鬼」の表紙 - ウィリアム・ウィルキー・コリンズの写真が使用されている。 |
彼が、ジョン・ディクスン・カー名義で発表した作品では、当初、パリの予審判事のアンリ・バンコラン(Henri Bencolin)が探偵役を務めたが、その後、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)が探偵役として活躍した。彼は、カーター・ディクスン(Carter Dickson)というペンネームでも推理小説を執筆しており、カーター・ディクスン名義の作品では、ヘンリー・メルヴェール卿(Sir Henry Merrivale)が探偵役として活躍している。
彼がウィリアム・ウィルキー・コリンズを探偵役にした推理小説は、1972年にジョン・ディクスン・カー名義で発表された歴史ミステリー「血に飢えた悪鬼(The Hungry Goblin - A Victorian Detective Novel)」である。
定期船(ニューヨーク → リヴァプール)と列車(リヴァプール → ユーストン(Euston Station → 2015年10月31日付ブログで紹介済))を乗り継いで、1869年10月29日(金)の夕方、ジャーナリストのクリストファー(キット)・ファレル(Christopher (Kit) Farrell)は、9年ぶりにロンドンへと戻って来た。
キット・ファレルは、ランガムホテル(Langham Hotel → 2014年7月6日付ブログで紹介済)に宿泊するのであるが、ロンドン到着早々に、奇怪な事態に次々と遭遇する。
彼が、ホテルの玄関前で四輪馬車から降りた際、ホテルの中から出て来た女性が、玄関前に横付けになった四輪馬車に乗り込むと、霧雨の中を走り去って行った。なんと、彼女は、米国で別れ別れになった彼の恋人パトリシア(パット)・デンビー(Patoricia (Pat) Denbigh)だった。米国に居る筈の彼女が、何故、ロンドンに居るのか?彼女の急いだ様子を見る限り、何か、彼には言えない秘密があるようだった。
また、彼の友人で、探検家のナイジェル・シーグレイヴ(Nigel Seagrave)は、キット・ファレルに対して、「妻のミュリエル(Muriel)を愛しているが、最近、全く同じ顔をした別人と入れ替わったみたいだ。」と告げる。
更に、銃弾がキット・ファレルの頭をかすめた。何者か、彼を殺害しようとしているのか?
そして、万聖節前夜(ハロウィーン)の夜、ユドルフォ荘の温室内において、ナイジェル・シーグレイヴが撃たれる事件が発生する。温室は、出入口には誰かが居る衆人環視の密室状況下にあり、ナイジェル・シーグレイヴを撃った犯人の姿は、どこにもなかった。
この謎に挑戦するのが、ジョン・ディクスン・カーが探偵役に据えたウィリアム・ウィルキー・コリンズその人である。
パリの予審判事のアンリ・バンコランが探偵役を務める処女作「夜歩く(It Walks by Night)」を1930年に発表した以降、不可能犯罪をテーマに取り組んできたジョン・ディクスン・カーによる最後の長編かつ遺作が、本作品である。
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