2026年8月30日日曜日

アガサ・クリスティー作「スペイン櫃の謎」<英国 TV ドラマ版>(The Mystery of the Spanish Chest by Agatha Christie )- その3

第27話「スペイン櫃の謎」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 3 ケースの表紙 -
第32話「大空の死(Death in the Clouds)」において、

サー・デイヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet)が
演じるエルキュール・ポワロ(画面左側)と
Sarah Woodward が演じるジェーン・グレイ(Jane Grey:画面右側)の二人が、
パリの街角を歩いているシーンが使用されている。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「スペイン櫃の謎(The Mystery of the Spanish Chest)」(1960年)は、1932年に発表された短編「バグダッドの大櫃の謎(The Mystery of the Baghdad Chest)」を改稿した中編で、短編集「クリスマスプディングの冒険(The Adventure of the Christmas Pudding)」(1960年)に収録されている。


英国の HarperCollinsPublishers 社から以前に出版されていた
アガサ・クリスティー作短編集「クリスマスプディングの冒険」の
ペーパーバック版の表紙 -
中編「スペイン櫃の謎」が収録されている。


アガサ・クリスティー作「スペイン櫃の謎」の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第27話(第3シリーズ)として、1991年2月17日に放映されている。英国の俳優であるサー・デヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet:1946年ー)が、名探偵エルキュール・ポワロを演じている。


アガサ・クリスティー作「スペイン櫃の謎」の TV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が引き続き見受けられる。


<原作>

ある日の朝、エルキュール・ポワロが秘書フェリシティー・レモン(Miss Felicity Lemon)にその日の仕事を指示する際、持参した朝刊の見出しにある記事「スペイン櫃の謎(SPANISH CHEST MYSTERY)」に興味を持ち、彼女に対して、事件の詳細を調べるよう、頼むところから、物語が始まる。つまり、物語の冒頭、事件は発生しており、ポワロは事後に事件に関与する形を採っている。


<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、原作とは異なり、ポワロは事件の発生前から関係者達に出会い、物語の中盤に事件が発生して、ポワロが事件の調査を行うと言う形へ変更されている。


エドワード・クレイトン(Edward Clayton - 原作のアーノルド・クレイトン(Arnold Clayton)に相当)が、ジョン・リッチ(陸軍)少佐(Major John Rich - 原作のチャールズ・リッチ(陸軍)少佐(Major Charles Rich)に相当)の自宅の居間に置かれた「スペイン櫃(Spanish Chest)」内で刺殺された経緯は、 英国 TV ドラマ版と原作の間で、異なっている。


(4)


<英国 TV ドラマ版>

帰宅したエドワード・クレイトンは、妻のマーガリート・クレイトン(Marguerite Clayton - 原作のマーガリータ・クレイトン(Margharita Clayton)に相当)に対して、「今夜、急用でエディンバラ(Edinburgh)へ出かけることになった。ジョン・リッチ少佐のパーティーには出席できなくなったので、一人で出かけてほしい。エディンバラへ出かける前、午後4時まではクラブに居る予定。」と告げる。


エドワード・クレイトンの帰宅時間は不明だが、妻マーガリートとの会話から、クラブへの移動時間を考慮すると、遅くても午後3時以前だと思われる。

また、エドワード・クレイトンの職業については、明確に言及されていないが、物語におけるセリフから推測すると、弁護士のように思われる。エディンバラへ出かける要因になった急用が、公用なのか、私用なのか、ハッキリしないものの、おそらく、公用だと推測される。


英国 TV ドラマ版の場合、クレイトン夫妻の家として、ロンドンの特別区の一つで、ロンドン南西部郊外のリッチモンド・アポン・テムズ区(London Borough of Richmond upon Thames)のリッチモンド(Richmond → 2018年3月17日 / 3月24日付ブログで紹介済)内に所在するリッチモンドグリーン(Richmond Green → 2026年7月24日付ブログで紹介済)と呼ばれる大きな緑地帯の南側、南北に延びるオールドパレステラス通り(Old Palace Terrace)と東西に延びるキングストリート(King Street)が交差する場所に建つキングストリート18番地(18 King Street)の「オークハウス(Oak House → 2026年8月7日 / 8月13日付ブログで紹介済)」の建物外観が、撮影に使用されている。


キングストリート18番地に建つ「オークハウス」
<筆者撮影>



<原作>

帰宅したアーノルド・クレイトンは、妻のマーガリータ・クレイトンに対して、「自分が所有する不動産の件で、今夜、急用でスコットランド(Scotland)へ出かけることになった。チャールズ・リッチ少佐のパーティーには出席できなくなったので、一人で出かけてほしい。」と告げる。行き先として、スコットランドとのみ言及されており、エディンバラとまでは特定されていない。


アーノルド・クレイトンの帰宅時間は、妻マーガリータによると、「午後6時過ぎ」とのこと。

また、アーノルド・クレイトンの職業は、英国の大蔵省(Treasury)勤務で、スコットランドへ出かける要因になった急用は、自分が所有する不動産の件なので、私用である。


クレイトン夫妻の家は、ルーメインガーデンズ(Roumaine Gardens - 架空の場所)にあると言う設定になっている。


(5)


<英国 TV ドラマ版>

自宅を出たエドワード・クレイトンは、クラブに寄り、そこで友人のカーティス(陸軍)大佐(Colonel Curtiss - 原作のジョック・マクラーレン(海軍)中佐(Commander Jock McLaren)に相当)と一緒に、お酒を飲みながら、相談事(妻のマーガリートが、ジョン・リッチ少佐と不倫しているのではないか?)をしている。


<原作>

自宅を出たアーノルド・クレイトンは、クラブに寄り、そこで友人のジョック・マクラーレン中佐と一緒に、お酒を飲みながら、「自分が所有する不動産の件で、今夜、急用でスコットランドへ出かけることになったので、チャールズ・リッチ少佐のパーティーには出席できなくなった」旨を告げている。


(6)


<英国 TV ドラマ版>

クラブを出たエドワード・クレイトンは、キングスクロス駅(King’s Cross Station)へ行く前に、ジョン・リッチ少佐の自宅に寄り、リッチ少佐の執事であるウィリアム・バージェス(William Burgess)に会い、パーティーに出席できなくなった旨を告げる。

エドワード・クレイトンがジョン・リッチ少佐の自宅を訪れたのは、午後6時過ぎ。


<原作>

クラブを出たアーノルド・クレイトンは、キングスクロス駅(King’s Cross Station)へ行く前に、チャールズ・リッチ少佐の自宅に寄り、リッチ少佐の執事であるバーゴイン(Burgoyne)に会い、パーティーに出席できなくなった旨を告げる。

アーノルド・クレイトンがチャールズ・リッチ少佐の自宅を訪れたのは、午後7時55分頃。


(7)


<英国 TV ドラマ版>

クラブにおいて、カーティス大佐が、ジョン・リッチ少佐の元へ行き、エドワード・クレイトンから聞かされた相談事を踏まえて、警告を告げる。

つまり、エドワード・クレイトン、カーティス大佐とジョン・リッチ少佐の3人は、同じクラブの会員だと言うことが判る。


<原作>

原作では、このような場面はない。

原作の場合、エドワード・クレイトンとカーティス大佐の2人は、同じクラブの会員だと言うことが言及されているのみ。


(8)


<英国 TV ドラマ版>

ジョン・リッチ少佐の自宅で開催されたパーティーへの出席者は、以下の通り。

(主催者)

*ジョン・リッチ少佐

(招待客)

*エルキュール・ポワロ

*レディー・キャロライン・チャタートン(Lady Caroline Chatterton - マーガリートの友人 / ポワロの知人)

*エドワード・クレイトン → 欠席

*マーガリート・クレイトン

*カーティス大佐

*その他、大勢が出席


なお、ジョン・リッチ少佐の自宅として、ロンドンの特別区の一つであるカムデン区(London Borough of Camden)のホルボーン地区(Holborn → 2016年9月24日 / 2025年4月22日付ブログで紹介済)内にあるリンカーンズ・イン・フィールズ(Lincoln's Inn Fields → 2016年7月3日付ブログで紹介済)に面して建つリンカーンズ・イン・フィールズ29番地(29 Lincoln's Inn Fields → 2017年4月2日付ブログで紹介済)の建物外観が、撮影に使用されている。


リンカーンズ・イン・フィールズ29番地の建物の正面全景
<筆者撮影>


<原作>

チャールズ・リッチ少佐の自宅で開催されたパーティーへの出席者は、以下の通り。

(主催者)

*チャールズ・リッチ少佐

(招待客)

*アーノルド・クレイトン → 欠席

*マーガリート・クレイトン

*ジョック・マクラーレン中佐

*ジェレミー・スペンス(Jeremy Spence - リンダの夫)

*リンダ・スペンス(Linda Spence - ジェレミーの妻)

の4名のみ。


なお、チャールズ・リッチ少佐の自宅は、ロンドン中心部のシティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)の高級住宅街ベルグレイヴィア地区内にあると述べられている。


「Nicholson - Super Scale - London Atlas」から
ベルグレイヴィア地区の南側の地図を抜粋。


(9)


<英国 TV ドラマ版>

翌朝、ジョン・リッチ少佐の執事であるウィリアム・バージェスが、居間に置かれた「スペイン櫃」内で、エドワード・クレイトンの刺殺体を発見。


<原作> 

翌朝、チャールズ・リッチ少佐の執事であるバーゴインが、居間に置かれた「スペイン櫃」内で、アーノルド・クレイトンの刺殺体を発見。 


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