2026年2月23日月曜日

カーター・ディクスン作「仮面荘の怪事件 / メッキの神像」(The Gilded Man by Carter Dickson)- その1

東京創元社から、創元推理文庫の一冊として出版されている
カーター・ディクスン作「仮面荘の怪事件」の表紙
(カバー : 村山 潤一) -
「仮面荘」と呼ばれる富豪ドワイト・スタンホープ(Dwight Stanhope)の
別邸ワルドミア荘(Waldemere)内に陳列されている名画を盗むために
侵入した覆面の泥棒が描かれている。

今回は、カーター・ディクスン(John Dickson Carr:1906年ー1977年)作「仮面荘の怪事件(東京創元社)/ メッキの神像(早川書房)(The Gilded Man)」について、紹介したい。

「仮面荘の怪事件 / メッキの神像」は、米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が、カーター・ディクスン名義で、1942年に発表したヘンリー・メルヴェール卿(Sir Henry Merrivale)を探偵役とするシリーズ長編第13作目に該る。

東京創元社から、創元推理文庫の一冊として出版されている
ジョン・ディクスン・カー作
「カー短編全集2 妖魔の森の家」の表紙
(カバー : アトリエ絵夢 志村 敏子) -
「軽率だった夜盗」(宇野 利奏訳)において、
夜盗がクランレイ荘に侵入した際、
「その(懐中電燈の)光が、食器棚に沿って匍っていくと、
銀色にきらめくものがあった。果物鉢である。
鉢の中のリンゴに、まるでそれが人間の胴であるかのように、
小型ナイフが不気味につき刺さったままだ。」や
「銀の食器類が一そろい、食器棚の前に散乱していた。
果物鉢も転げ落ちていた。
オレンジとリンゴ、そして葡萄の粒が潰れているあいだに、
死体が仰向けに倒れている。」と言う記述があるので、
表紙のデザインは、同作の内容を参考しているものと思われる。


ジョン・ディクスン・カーは、元々、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)シリーズの短編として、1940年に「軽率だった夜盗(A Guest in the House / The Incautious Burglar → 2025年9月9日付ブログで紹介済)」を発表しており、「仮面荘の怪事件 / メッキの神像」の場合、ギディオン・フェル博士シリーズの短編である「軽率だった夜盗」をベースにして、ヘンリー・メルヴェール卿シリーズの長編を執筆の上、カーター・ディクスン名義で1942年に出版したのである。

ギディオン・フェル博士シリーズの短編「軽率だった夜盗」とヘンリー・メルヴェール卿シリーズの長編「仮面荘の怪事件 / メッキの神像」では、以下の違いがある。

(1)探偵役

*「軽率だった夜盗」:ギディオン・フェル博士

*「仮面荘の怪事件 / メッキの神像」:ヘンリー・メルヴェール卿


(2)事件の発生時期

*「軽率だった夜盗」:真夏

*「仮面荘の怪事件 / メッキの神像」:年末(1938年12月末)


(3)犠牲者の生死

*「軽率だった夜盗」:死亡

*「仮面荘の怪事件 / メッキの神像」:瀕死の重傷


(4)泥棒に狙われた絵画

*「軽率だった夜盗」:

(a)レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン(Rembrandt Harmenszoon van Rijn:1606年ー1669年 / ネーデルラント連邦共和国(現オランダ王国)の画家 → 2025年9月26日 / 10月2日付ブログで紹介済)


ロンドンのナショナルギャラリー(National Gallery)に所蔵 / 展示されている
レンブラント・ファン・レイン作
「34歳の自画像(Self Portrait at the Age of 34)」
Oil on canvas / Bought by National Gallery in 1861
<筆者撮影>


(b)アンソニー・ヴァン・ダイク(Anthony van Dyck:1599年ー1641年 / バロック期のフランドル出身の画家 → 2025年9月27日 / 10月4日 / 10月8日 / 10月13日付ブログで紹介済)


ナショナルポートレートギャラリーで販売されている
アンソニー・ヴァン・ダイクの肖像画の葉書
(Sir 
Anthony van Dyck / 1640年頃 / Oil on panel
560 mm x 460 mm) 


*「仮面荘の怪事件 / メッキの神像」:

(a)エル・グレコ(El Greco:1541年ー1614年 / 現在のギリシア領クレタ島出身の画家で、スペインで活動)

(b)ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルヴァ・イ・ヴェラスケス(Diego Rodriguez de Silva y Velazquez:1599年ー1660年 / バロック期のスペインの画家)

(c)バルトロイ・エステバン・ペレス・ムリーリョ(Bartolome Esteban Perez Murillo:1617年ー1682年 / バロック期のスペインの画家)

(d)フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス(Francisco Jose de Goya y Lucientes:1746年ー1828年 / スペインの画家)


上記の相違点を除くと、ギディオン・フェル博士シリーズの短編「軽率だった夜盗」とヘンリー・メルヴェール卿シリーズの長編「仮面荘の怪事件 / メッキの神像」は、ストーリーやトリックは同じである。


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