2025年4月28日月曜日

コナン・ドイル作「覆面の下宿人」<小説版>(The Veiled Lodger by Conan Doyle )- その2

英国で出版された「ストランドマガジン」
1927年2月号に掲載された挿絵(その2) -
プロの曲芸師(professional acrobat)であるレオナルド(Leonardo)と通じた
ロンダー夫人は、サーカスの団長で、凶暴な夫であるロンダーの殺害を計画。
レオナルドが五本爪の棍棒でロンダーの頭蓋骨を殴って、
サーカスで飼っているライオンの仕業に見せかけようとした。
ロンダー夫人が、ライオンの檻の掛け金を外したところ、
血の匂いで興奮していたライオンが、ロンダー夫人に向かって、
いきなり飛び掛かったのである。

サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「覆面の下宿人(The Veiled Lodger)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、55番目に発表された作品で、英国の「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1927年2月号に、また、米国の「リバティー(Liberty)」の1927年1月22日号に掲載された。

同作品は、同年の1927年に発行されたホームズシリーズの第5短編集「シャーロック・ホームズの事件簿(The Case-Book of Sherlock Holmes)」に収録されている。


コナン・ドイル作「覆面の下宿人」の場合、1896年の終わり頃のある午前中から、その物語が始まる。


ジョン・H・ワトスンは、シャーロック・ホームズから「ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)へ来て欲しい。」と言う速達を受け取る。

ワトスンが急いでホームズの元を訪れると、そこには、ホームズの他に、年配で母親を思わせる女家主タイプの女性が座っていた。

その女性は、サウスブリクストン(South Brixton)のメリロウ夫人(Mrs Merrilow)で、ある相談のために、ホームズを訪ねて来たのである。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1927年2月号に掲載された挿絵(その3) -
ロンダー夫人の告白を聞き終えた
シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、
彼女の元を辞去しようとした。
しかし、ロンダー夫人の声に滲む何かが、ホームズの注意を引いた。
ホームズは、彼女の方を振り向くと、
「あなたの命は、あなただけのものではありません。ですから、早まってはいけませんよ。
(Your life is not your own. Keep your hands off it.)」と
告げるのであった。
画面左側から、ジョン・H・ワトスン、シャーロック・ホームズ、
そして、黒いヴェールで顔を覆っているロンダー夫人。

メリロウ夫人によると、彼女の相談の対象は、彼女の家に7年前から下宿しているロンダー夫人(Mrs Ronder)で、いつもヴェールで顔を覆っていて、自分の素顔を見せようとはしなかった。

メリロウ夫人は、一度だけ、偶然にロンダー夫人の顔を見かけたことがあり、その顔は恐ろしく傷付いた状態で、ロンダー夫人が素顔のままで上階の窓から外を見ているのを、牛乳配達人がちらっと目にしたため、牛乳の缶を落として、全部前の庭にぶちまけてしまった程だった。


メリロウ夫人は、ロンダー夫人の過去を全く知らなかったが、知りたいとは思わなかった。

メリロウ夫人の家に下宿する際、ロンダー夫人は紹介状を持っていなかったものの、3ヶ月分の家賃を前金として現金で支払った上に、入居条件については、何も口を挟まなかった。ロンダー夫人以上に物静かで、いざこざを起こさない下宿人を見つけることは無理なので、メリロウ夫人は、現状に満足していた。


ところが、ここのところ、ロンダー夫人が次第に弱っており、メリロウ夫人としては、ロンダー夫人の健康を気にかけていた。

更に、夜になると、ロンダー夫人は、「人殺し!(Murder!)」とか、「この酷いケダモノ!この怪物!(You cruel beast! You monster!)」と叫び、それが家中に響き渡り、メリロウ夫人は全身震え上がった。


ロンダー夫人の健康状態に加えて、彼女の精神状態を心配したメリロウ夫人は、ロンダー夫人に対して、聖職者や警察への相談を打診したが、ロンダー夫人は、その申し出を拒否。

メリロウ夫人が諮問探偵のホームズの話をすると、ロンダー夫人は、その話に飛び付いた。そして、ロンダー夫人は、メリロウ夫人に対して、「ホームズさんが来てくれなそうであれば、自分は、野獣ショー(beast show)のロンダー(Ronder)の妻だと伝えて下さい。それに加えて、ホームズさんには、アッバス パルヴァ(Abbas Parva)の名前を言って下さい。」と告げた。


メリロウ夫人の話を聞いたホームズは、「午後3時頃、お宅にお伺いします。」と答えると、彼女はホームズの元を辞去した。

メリロウ夫人が帰った後、ホームズは、部屋の隅にある備忘録の山へと突進する。ホームズは、探していたものを見つけたようで、仏像のように足を交差させ、辺り一面に備忘録を散らかして、そのうちの1冊を膝の上で広げるのであった。


ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett:1933年ー1995年)を主人公のシャーロック・ホームズ役に据えて、英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が TV ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)を制作しているものの、残念ながら、「覆面の下宿人」に関しては、映像化されていない。


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