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日本の出版社である東京創元社から、 創元推理文庫として出版されている イーデン・フィルポッツ作「赤毛のレドメイン家」(旧訳版)の裏表紙 カバー: 日下 弘 |
被害者の妻であるジェニー・ペンディーン(Jenny Pendean)から手助けを求める手紙を受け取った彼は、あまり気が進まなかったが、その日の釣りを諦めると、プリンスタウンのステーションコテージ3号に住む彼女の元を訪れた。
ジェニー・ペンディーンの姿を見たマーク・ブレンドンは、驚きの余り、声を失った。彼女こそ、数日前に、夕焼けの中、彼がフォギンター採石場跡近くですれ違った鳶色の髪の美女だったのである。
稲妻に打たれたようなマーク・ブレンドンに対して、ジェニー・ペンディーンは、自分の生い立ちから話し始めた。
オーストラリア南部のヴィクトリア州に住むジョン・レドメイン(John Redmayne)は、牧羊でひと財産を築いた。彼は、妻のジェニー(Jenny)との間に、7人の息子と5人の娘を授かったが、生き延びたのは、4人の息子だけだった。
*長男:ヘンリー・レドメイン(Henry Redmayne)- 英国に父親の代理店を設立して、羊毛販売を営む。
*次男:アルバート・レドメイン(Albert Redmayne)- 書籍蒐集家 / 現在は、引退して、イタリアに居住。
*三男:ベンディゴー・レドメイン(Bendigo Redmayne) - 貨物船の元船長 / 現在は、引退して、デヴォン州に居住。
*四男:ロバート・レドメイン(Robert Redmayne)- 元大尉
ジェニー・ペンディーン(旧姓:レドメイン)は、長男ヘンリー・レドメインの一人娘で、彼女が15歳の時、彼女の両親は、祖父母に会うために、オーストラリアへ向かう船旅の途中、船が沈没し、彼女一人が残された。
彼女は、学校を卒業した後、英国を離れ、オーストラリアの祖父と同居する予定だったが、3つの大事件が起きたのである。
(1)第一次世界大戦(1914年ー1918年)の勃発
(2)祖父ジョン・レドメインの死去
祖父ジョンが残した遺言に基づき、祖父の遺産(15万ポンド)の全ては、存命中で一番年長者であるアルバート・レドメインが管理し、彼が妥当と思う割合で、二人の弟(ベンディゴー・レドメイン+ロバート・レドメイン)と分割することになった。
また、ジェニー・レドメインについては、上記のうちから2万ポンドを別にして、結婚の際、あるいは、結婚していないようであれば、25歳の誕生日に与えるように支持されていた。なお、彼女は、3人の叔父達の庇護下に置かれ、夫候補が現れた際には、アルバート・レドメインの承認を得る必要があった。
(3)ジェニー・レドメインとマイケル・ペンディーン(Michael Pendean - 元貿易商)の婚約
第一次世界大戦の勃発に伴い、ベンディゴー・レドメインは、海軍予備役に所属して、掃海艇の指揮を執り、ロバート・レドメインは、志願兵となり、騎兵隊に入隊。
一方、マイケル・ペンディーンは、心臓から異音が聞こえるため、入隊許可がおりなかった。
それを知ったロバート・レドメインは激昂し、「マイケル・ペンディーンは、入隊を免れるために、医者をお金で抱き込んだ。」と強く非難した。
残りの2人の叔父(アルバート・レドメイン+ベンディゴー・レドメイン)もこれに同調した結果、マイケル / ジェニー・ペンディーン夫妻と3人の叔父達の関係は、非常に悪化してしまった。
戦争が半ばを過ぎた頃、英国全国民に対して動員がかけられ、マイケル / ジェニー・ペンディーン夫妻は、プリンスタウン に建設された外傷の手当に使う苔の巨大な集積所での作業に参加。
先週、ジェニー・ペンディーンが郵便局から出て来た時、オートバイに乗ったロバート・レドメインの再会。
彼は、終戦の数週間前にガス攻撃を受け、傷病兵として退役。それ以前にも、戦争神経症を患い、本人は軽症だと言うものの、直ぐに興奮し、それが極端だった。
戦友と会ってきたロバート・レドメインは、プリマスへ向かう予定だったが、マイケル / ジェニー・ペンディーン夫妻は、ロバート叔父を自分達のバンガローに滞在するよう、頼み込んだ。
ペンディーン夫妻宅に滞在することになったロバート・レドメインは、マイケル・ペンディーンと一緒に、日が長い中、フォギンター採石場跡でのバンガロー建設を楽しそうに進めた。
昨日、ロバート・レドメインとマイケル・ペンディーンは、早めのお茶の後、オートバイに2人乗りして、バンガローへ出かけた。ジェニー・ペンディーンは、同行しなかった。
夕食の時刻になっても、更に、夜半に差し掛かる頃になっても、ロバート・レドメインとマイケル・ペンディーンの2人は、戻って来なかったため、ジェニー・ペンディーンは、プリンスタウン警察のハーフヤード署長(警部補)を訪ねて、
*叔父ロバート・レドメインと夫マイケル・ペンディーンが、フォギンター採石場跡から戻って来ないこと
*2人に何かあったのではないかと心配していること
を伝えたのであった。

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