2025年4月26日土曜日

ミシェル・バークビー作「ベイカー街の女たち」(The House at Baker Street by Michelle Birkby)- その4

日本の出版社である KADOKAWA から、
角川文庫として出版されている

ミシェル・バークビイ作「ベイカー街の女たち
ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1」の表紙

       カバーイラスト: いとう あつき
 カバーデザイン: 西村 弘美

読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆半(3.5)


シャーロック・ホームズの同居人で、相棒でもあるジョン・H・ワトスンが「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)を通じて出会ったメアリー・モースタン(Mary Morstan)と結婚して、約7ヶ月が経った1889年4月のある日から、物語が始まる。

本作品の主人公は、他のパスティーシュとは異なり、ホームズとワトスンではなく、2人が下宿するベーカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)の家主であるハドスン夫人(Mrs. Hudson)と呼ばれているマーサ・ハドスン(Martha Hudson)とワトスン夫人(Mrs. Watson)となったメアリー・ワトスン(Mary Watson)の2人で、ホームズとワトスンは脇役へとまわる。

なお、ハドスン夫人のファーストネームが「マーサ」となっているのは、コナン・ドイル作「最後の挨拶(His Last Bow → 2021年6月3日付ブログで紹介済)」に登場する老婦人のマーサは、ハドスン夫人であると言う作者ミシェル・バークビーによる想定に基づいている。

マーサ・ハドスンとメアリー・ワトスンは、ホームズの元を訪れるものの、相談内容の詳細を明らかにできなかったため、依頼を断られてしまったローラ・シャーリー(Mrs. Laura Shirley)に対して、手を差し伸べるところから、物語が動き出す。

事件の背後には、金銭目的ではなく、自分の支配力を誇示したいがために、大勢の女性を食い物にしている強請屋(ゆすりや)が関わってくる。


(2)物語の展開について ☆☆☆半(3.5)


マーサ・ハドスンとメアリー・ワトスンの2人は、ホームズとは異なり、事件捜査の専門家ではないので、ホームズとワトスンを主人公とする他のパスティーシュのようには、なかなかうまく行かず、何度も試行錯誤が続く。

ただし、マーサ・ハドスンとメアリー・ワトスンは、ホームズの捜査手法をある程度理解しているので、


*ベーカーストリート不正規隊(Baker Street Irregulars)のリーダーであるウィギンズ(Wiggins)

*ベーカーストリート221B の給仕であるビリー(Billy)

*ホームズが「あの女性(ひと)」と呼ぶアイリーン・ノートン(Irene Norton - 旧姓:アドラー(Adler))


のサポートを受けつつ、最後には、強請屋の正体に肉迫していくので、それ程もどかしい感じはしない。


日本の出版社である KADOKAWA から、
角川文庫として出版されている

ミシェル・バークビイ作「ベイカー街の女たち
ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1」の文庫本体

(3)マーサ・ハドスン / メアリー・ワトスンの活躍について ☆☆☆☆(4.0)


マーサ・ハドスンとメアリー・ワトスンの2人は、自分の立場を利用して得た情報を使い、金銭目的ではなく、自分の支配力を誇示したいがために、大勢の女性を自分の言いなりにしている強請屋に対して、激しい怒りを感じており、彼女達の立場を守る上で、ホームズとワトスンに、事件のことを一切相談せず、自分達の事件として、調べを進める。

そうは言っても、事件捜査の専門家ではないため、ウィギンズ、ビリーやアイリーン・ノートンの手助けを借りつつ、次第に、彼らとの間に、強い絆を築いていく。特に、マーサ・ハドスン/ メアリー・ワトスンとウィギンズ / ビリーの間に、信頼関係が次第に芽生えていく過程が、キチンと描かれている。

そして、マーサ・ハドスンとメアリー・ワトスンの2人が、何度も試行錯誤を繰り返しつつも、最後には、事件の背後に潜む強請屋の正体を明らかにするのである。


(4)総合評価 ☆☆☆半(3.5)


本作品は、マーサ・ハドスンとメアリー・ワトスンの2人を主人公とはしているものの、脇役ながら、


*シャーロック・ホームズ

*ジョン・H・ワトスン

*ウィギンズ

*ビリー


*マイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)

*スコットランドヤードのレストレイド警部(Inspector Lestrade)


*アイリーン・ノートン(旧姓:アドラー):「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia → 2022年12月18日 / 2023年8月6日 / 2023年8月9日 / 2023年8月19日付bログで紹介済)」に登場

*ラングデイル・パイク(Langdale Pike → 2021年7月17日付ブログで紹介済):「三破風館(The Three Gables → 2021年7月29日付ブログで紹介済)」に登場

*サー・ジョージ・バーンウェル(Sir George Burnwell):「緑柱石の宝冠(The Beryl Coronet)」に登場


と言ったサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)が生み出したキャラクターが登場して、関与の仕方に差異はあるが、物語に彩りを与えている。



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