2025年4月3日木曜日

アガサ・クリスティー作「エッジウェア卿の死」<英国 TV ドラマ版>(Lord Edgware Dies by Agatha Christie )- その5

日本の株式会社 早川書房から現在出版されている
クリスティー文庫7「エッジウェア卿の死」の表紙
 < Photograph : CORBIS / amana images
Cover Design : Hayakawa Design >


英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第47話(第7シリーズ)として、2000年1月19日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「エッジウェア卿の死(Lord Edgware Dies)」(1933年)のTV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が見受けられる。


(16)

<原作>

スローンスクエア(Sloane Square)のローズデューマンションに部屋を借りている女芸人であるカーロッタ・アダムズ(Carlotta Adams)がヴェロナール(Veronal)の過剰摂取により死亡しているのが発見された後、割合と早い段階で、エルキュール・ポワロとアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)の2人は、


*リージェントゲート(Regent Gate → 2025年3月23日付ブログで紹介済)にある邸の書斎で刺殺されたエッジウェア卿(Lord Edgware)と先妻の娘であるジェラルディン・マーシュ(Geraldine Marsh)

*エッジウェア卿の甥であるロナルド・マーシュ(Ronald Marsh)


と別個に会って、事情聴取をしている。


カーロッタ・アダムズが住むフラットとして、
アディスランドコート(Addisland Court → 2016年2月7日付ブログで紹介済)が
撮影に使用されている。


<英国 TV ドラマ版>

ポワロとヘイスティングス大尉の2人は、事情聴取のために、ジェラルディン・マーシュ / ロナルド・マーシュと個別に会うのは、物語の後半以降であるし、2人と一緒に会っている。

ただし、ポワロがホワイトヘイヴンマンションズ(Whitehaven Mansions)を不在にしている間、ヘイスティングス大尉、ミス・フェリシティー・レモン(Miss Felicity Lemon)とスコットランドヤードのジャップ主任警部(Chief Inspector Japp)の3人が、


*ロナルド・マーシュ:多額の借金を抱えている / エッジウェア卿のタイトルを狙っている。

*ジェラルディン・マーシュ:エッジウェア卿に離婚された後、失意のうちに亡くなった母親のことで、エッジウェア卿のことを恨んでいる。


と言う話をしている。


(17)

<英国 TV ドラマ版>

マウントストリートガーデンズ(Mount Street Gardens → 2016年5月1日付ブログで紹介済)内を散歩しながら、ポワロは、エッジウェア卿の妻で、舞台女優であるジェーン・ウィルキンスン(Jane Wilkinson)から、


*夫であるエッジウェア卿と不仲になった後、映画俳優のブライアン・マーティン(Bryan Martin)とは、恋愛関係にあったこと

*マートン公爵(Duke of Merton)とは、結婚を考えていること


を告げられる。


ポワロとジェーン・ウィルキンスンが外で個別に会う場所として、
マウントストリートガーデンズが撮影に使用されている。


<原作>

原作には、このような場面はない。


(18)

<英国 TV ドラマ版>

ポワロ、ヘイスティングス大尉とジャップ主任警部の3人は、エッジウェア卿の秘書ミス・キャロル(Miss Carroll)によって、リージェントゲートのエッジウェア卿邸へと呼び出される。

彼女によると、エッジウェア卿が書斎の金庫内に保管していたフランスフラン紙幣(→ フランスの美術品の買付のために使用する予定だった)が失くなっていること、また、エッジウェア卿の執事アルトン(Alton)が行方不明になっていることを告げられる。


リージェンツパーク内に設置されている
リージェンツパークの俯瞰地図


<原作>

原作には、このような場面はない。


(19)

<英国 TV ドラマ版>

カーロッタ・アダムズの妹であるルシー・アダムズ(Lucie Adams)が、カーロッタ・アダムズのフラットを訪ねて来る。対応に出て来たカーロッタ・アダムズのメイドであるアリス(Alice)から、カーロッタ・アダムズが亡くなったことを告げられる。

<原作>

原作の場合、カーロッタ・アダムズの妹であるルシー・アダムズは米国に居て、ポワロとは手紙のやりとりを行うのみで、英国を訪れることはない。


(20)

<英国 TV ドラマ版>

ポワロとヘイスティングス大尉の2人は、カーロッタ・アダムズの友人であるペニー・ドライヴァー(Penny Driver )が営む帽子店へ呼び出される。

帽子店の上階に、カーロッタ・アダムズの妹ルシー・アダムズが居た。ポワロとヘイスティングス大尉は、ルシー・アダムズから、「姉(カーロッタ・アダムズ)から受け取った手紙の中で、姉は2千ドルで仕事を請け負った話をしている。また、その仕事は、劇場のプロデューサー(theatrical producer)であるロナルド・マーシュから依頼された。」との話を聞く。


ペニー・ドライヴァーが営む帽子店として、
デュークスロード(Duke's Road → 2017年6月18日付ブログで紹介済)沿いに建つ建物が
撮影に使用されている。


<原作>

カーロッタ・アダムズがヴェロナールの過剰摂取により亡くなった後、ポワロとヘイスティングス大尉の2人は、カーロッタ・アダムズの友人であるジュヌヴィエーヴ・ドライヴァー(Genevieve Driver / 愛称:ジェニー(Jenny))が経営する帽子店を訪れ、カーロッタ・アダムズの妹ルシー・アダムズからではなく、ジュヌヴィエーヴ・ドライヴァー本人から、「カーロッタ・アダムズが、ジェーン・ウィルキンスンの身代わりを務める仕事を請け負った」話を聞いている。


(21)

<英国 TV ドラマ版>

ポワロ、ヘイスティングス大尉とジャップ主任警部の3人は、ジェラルディン・マーシュ / ロナルド・マーシュと会い、彼らから「エッジウェア卿が刺殺された当夜、早急にお金が必要だったので、ロイヤルオペラハウス(Royal Opera House → 2015年8月29日付ブログで紹介済)からリージェントゲートのエッジウェア卿邸までタクシーで向かった。ジェラルディンが邸からネックレスを持って来る間、ロナルドは外で待っていた。その際、映画俳優のブライアン・マーティンがエッジウェア卿邸から出て来るのを見かけた。」と言う告白を引き出す。


ボウストリート(Bow Street)の南側から見たロイヤルオペラハウス

<原作>

エッジウェア卿が刺殺された当夜、ジェラルディン・マーシュとロナルド・マーシュの2人がロイヤルオペラハウスからリージェントゲートのエッジウェア卿邸まで向かったことについて、ポワロ達はタクシーのドライバーからの証言を得ており、ジェラルディン・マーシュ / ロナルド・マーシュから直接告白を受けた訳ではない。


(22)

<英国 TV ドラマ版>

エッジウェア卿が書斎の金庫内に保管していたフランスフラン紙幣を盗み出した執事のアルトンがブエノスアイレスへ飛行機で向かう情報が入る。

ポワロ、ヘイスティングス大尉とジャップ主任警部の3人は飛行場へと向かい、搭乗する直前のアルトンを発見。

フランスフラン紙幣が入った鞄を持って逃げ回るアルトンは、最後には、飛行場の建物の屋上から転落して死亡する。

<原作>

原作には、このような場面はない。


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