2025年4月10日木曜日

ミシェル・バークビー作「ベイカー街の女たち」(The House at Baker Street by Michelle Birkby)- その3

英国の Pam Macmillan 社から2016年に出版された
ミシェル・バークビー作「ベイカー街の女たち」
ペーパーバック版の内扉 -
作者であるミシェル・バークビーのサイン付き


1889年4月のある日、マーサ・ハドスン夫人(Mrs. Martha Hudson)は、ワトスン夫人(Mrs. Watson)となったメアリー・モースタン(Mary Morstan)と一緒に、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)の明るい地下の台所において、大きなテーブルに静かについていた。

その日、シャーロック・ホームズの元には、新しい依頼人がやって来ていた。それは、小柄で内気そうな若い女性だった。

実は、ハドスン夫人とメアリー・ワトスン(Mary Watson)の2人が居る台所の通気口は、2階にあるホームズの居間と繋がっており、通気口の蓋を開くと、ホームズの居間での会話を聞くことができたのである。マーサ・ハドスンとメアリー・ワトスンは、ホームズと新しい依頼人の会話に聞き耳を立てていた。

ちなみに、メアリーの夫であるジョン・H・ワトスンは、急な呼び出しを受けて、往診に出かけており、給仕のビリー(Billy)は、用事を言いつけられて、外へ出ていた。


生憎と、ホームズは親切に対応できる気分ではない上に、依頼人は萎れた菫の花のようで、それが更にホームズをイライラとさせた。

ホームズが依頼人に対して訪問の理由を尋ねたが、彼女は「強請(ゆすり)でしょうか?」と消え入りそうな声で曖昧な返事をするだけだった。ホームズが相談の内容を何度訊いても、彼女は「お話しできません。」と蚊の鳴くような声で答えるのみで、自分の名前についても、明らかにしなかった。


常日頃、依頼人に対して隠し事を許さない性分の上、今日は御機嫌斜めだったホームズは、「事情を話していただけないのであれば、私は力になれません。お引き取り願います。」と言うと、彼女を自分の居間から追い出してしまう。

階段をのろのろと下りてくる彼女を、台所から玄関ホールへと走り出たハドスン夫人が、お茶へと誘った。


彼女はローラ・シャーリー(Mrs. Laura Shirley)と言う名前で、彼女によると、自分の身に覚えのない不貞を告発する手紙を、今までに3通既に受け取っている、とのこと。

残念ながら、1通目と2通目の手紙については、夫の目に触れないよう、彼女は封筒も一緒に燃やしてしまっていた。

3通目の手紙に関しては、まだ手元にあったため、メアリー・ワトスンが彼女から受け取って、ハドスン夫人に読んで聞かせた。謎の告発者は、次の手紙の中で、ローラ・シャーリーに対する要求を伝えると書いていた。


苛立つホームズから断られたローラ・シャーリーのことを気の毒に思い、謎の強請者に対して怒りを覚えたハドスン夫人とメアリー・ワトスンは、ローラ・シャーリーを手助けすることを約束。そして、2人は、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンには内緒で、ローラ・シャーリーに対する強請事件に乗り出す。


ハドスン夫人とメアリー・ワトスンの2人は、ベイカーストリート不正規隊(Baker Street Irregulars)の助けを借りることにした。

ハドスン夫人とメアリー・ワトスンは、ベイカーストリート不正規隊のリーダーであるウィギンズ(Wiggins)に対して、ローラ・シャーリーと彼女の夫の尾行を依頼。


ある日、ウィギンズが、尾行のコツを教えることも兼ねて、給仕のビリーを連れて、ローラ・シャーリーの夫を尾行していた。

彼は、波止場において、船乗り風の格好をした男性と話をしていたが、突然、その男性にテムズ河(River Thames)へと突き落とされる。

土手にビリーを待たせて、波止場までローラ・シャーリーの夫を尾行して来たウィギンズも、その男性に見つかってしまい、階段の一番上から下へと投げ落とされて、怪我を負ってしまう事件が発生し、ハドスン夫人とメアリー・ワトスンの2人は、いきなり追い詰められてしまうのである。


0 件のコメント:

コメントを投稿