2024年8月12日月曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その4

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2024年に発行されている「ミス・マープルの世界(The World of Miss Marple)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズの登場人物や各作品に関連した68個の手掛かりについて、前回に引き続き、順番に紹介していきたい。


(5)レイモンド・ウェスト(Raymond West)


ジズソーパズル中央のやや左側の位置で、
テラス用の椅子に座り、頭に帽子を被り、
左手に紅茶カップを、そして、右手に受け皿を持った
背広姿の男性が、レイモンド・ウェストである。

レイモンド・ウェストは、ミス・マープルの甥で、有名な小説家である。

レイモンド・ウェストの登場作品は、以下の通り。

<長編>
*「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage → 2022年10月30日 / 10月31日付ブログで紹介済)」(1930年)

*「パディントン発4時50分(4:50 from Paddington)」(1957年)

*「スリーピングマーダー(Sleeping Murder)」(1976年)


<短編>

*「火曜クラブ / 火曜ナイトクラブ(The Tuesday Night Club)」(1927年)→ 実質的には、本編が、ミス・マープルの初登場作品である。

*「アスタルテの祠 / アスターテの祠(The Idol House of Astarte)」(1928年)

*「金塊事件 / 金塊(Ingots of Gold)」(1928年)

*「舗道の血痕 / 血に染まった敷石(The Bloodstained Pavement)」(1928年)

*「動機対機会(Motive v Opportunity)」(1928年)

*「聖ペテロの指のあと / 聖ペテロの指の跡(The Thumb Mark of St Peter)」(1928年)

*「グリーンショウ氏の阿房宮(Greenshaw's Folly)」(1960年)


なお、レイモンド・ウェスト自身は登場しないものの、以下の長編4作品において、ミス・マープルが事件に遭遇するキッカケを提供している。


*長編「予告殺人(A Murder is Announced)」(1950年)

物語の舞台となるチッピングクレグホーン村(Chipping Cleghorn)の近くのメデナムウェルズにある「ロイヤルスパホテル(Royal Spa Hotel)」に、セントメアリーミード村(St. Mary Mead)に住むミス・マープルは、滞在していた。甥のレイモンド・ウェストが、彼女のために、リューマチの湯治を手配してくれたのであった。


*短編「教会で死んだ男(Sanctuary)」(1954年)

ある日の早朝、牧師の妻である「バンチ(Bunch)」こと、ダイアナ・ハーモン(Diana Harmon)は、チッピングクレグホーン(Chipping Cleghorn)の教会に入って行き、教会内に菊の花を生けようとしたところ、祭壇の前に、見窄らしい身なりをした中年の男が倒れているのを発見する。彼女は、一目見て、男が撃たれていて、瀕死の状態であることが判った。ダイアナ・ハーモンが男の弱々しい脈を調べていると、その男は、「サンクチュアリ(sanctuary)」と、震えるような囁き声で、そう言い残すと、息を引き取った。

グリフィス医師と村のヘイズ巡査部長が現場に呼ばれて、男の持ち物を調べるが、男の身元も、彼が教会で何をしていたのかも、残念ながら、判明しなかった。また、静かな村であるチッピングクレグホーンに住む人達も、男が言い残した「サンクチュアリ」の意味を、誰も判らなかった。

まもなく、男の親族を名乗る夫婦が、男の遺体を引き取りにやって来るが、彼らの態度に怪しさを感じたダイアナ・ハーモンは、死んだ男が着ていた背広に縫い込んであった荷札の預かり証のことを話さなかったし、渡しもしなかった。

そこで、ダイアナ・ハーモンは、自分の名付け親であるミス・ジェイン・マープルのところへ、相談に赴く。

この時、甥のレイモンド・ウェストと彼の妻のジョーン・ウェストの2人は、2週間程、米国へ出かける予定があったため、ミス・マープルは、レイモンド・ウェストから、「留守の間、自分のアパートへ来て、ロンドンでの生活を満喫し、気分転換でもしたらどうですか?」と勧められ、レイモンド・ウェストが住むロンドンのアパートに滞在していたのである。


*長編「鏡は横にひび割れて(The Mirror Crack'd from Side to Side)」(1962年)

物語の冒頭、気管支炎に罹患して、身体がひどく衰弱したミス・マープルのことを心配したヘイドック医師(Dr. Haydock)の進言もあり、甥のレイモンド・ウェストが手配したミス・ナイト(Miss Knight)が、ミス・マープルに対して、付き添いの介護をしている。また、彼がミス・ナイトの給料も負担している。


*長編「カリブ海の秘密(A Caribbean Mystery)」(1964年)

物語の舞台となるのは、カリブ海のサントノーレ島(St. Honore)にあるリゾートホテル「ゴールデンパーム(Golden Palm)」である。ミス・マープルは、現在、このリゾートホテルに滞在していた。実は、ミス・マープルは、前の冬に罹患した肺炎のため、ここのところ、体調を崩しており、そのため、甥のレイモンド・ウェストが、彼女のために、カリブ海での転地療養を手配してくれたのであった。


*「バートラムホテルにて(At Bertram’s Hotel)」(1965年)

ミス・マープルは、甥のレイモンド・ウェストの厚意で、ロンドンのバートラムホテル(Bertram’s Hotel)に、2週間の予定で滞在していた。実は、ミス・マープルは、若い頃、このホテルに宿泊したことがあったので、今回の滞在を懐かしく感じていた。


(6)ジョーン・ウェスト(Joan West)


ジズソーパズル中央のやや左側の位置で、
テラス用の椅子に座り、水色と白色の横ボーダー柄の服を着た女性が、
レイモンド・ウェストの妻のジョーン・ウェストである。


ジョーン・ウェストは、レイモンド・ウェストの妻で、画家である。


ジョーン・ウェストの登場作品は、以下の通り。

<長編>

*「スリーピングマーダー」(1976年)


<短編>

*「火曜クラブ / 火曜ナイトクラブ」(1927年)

*「アスタルテの祠 / アスターテの祠」(1928年)

*「金塊事件 / 金塊」(1928年)

*「舗道の血痕 / 血に染まった敷石」(1928年)

*「動機対機会」(1928年)

*「聖ペテロの指のあと / 聖ペテロの指の跡」(1928年)

*「グリーンショウ氏の阿房宮」(1960年)


短編「火曜(ナイト)クラブ」を皮切りに、1927年12月から雑誌「スケッチ誌」に掲載された短編13作品が、ミス・マープルシリーズの長編第1作目に該る「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage → 2022年10月30日 / 10月31日付ブログで紹介済)」(1930年)に遅れること、2年後の1932年に短編集「The Thirteen Problems(ミス・マープルと13の謎)<米題: The Tuesday Club Murders(火曜クラブ)>」として出版されているが、当該短編集の「第1話 - 第6話」に登場する女流画家で、後にレイモンド・ウェストの妻となる人物の名前が、ジョイス・ランプリエール(Joyce Lempriere)となっており、不整合が発生している。


ミス・マープルシリーズの長編第4作目「予告殺人」(1950年)において、ミス・マープルは、ジョーン・ウェストについて、「あの子の妻と言うのが、また絵描きさんで、名前が売れ始めておりますの。枯れかかっている花瓶と窓台にある壊れた櫛 - と言ったような絵なんですよ。そりゃあ、私、彼女に何も申しません。」(田村隆一訳)と述べている。


ミス・マープルシリーズの長編第9作目「カリブ海の秘密」(1964年)において、カリブ海のサントノーレ島にあるリゾートホテル「ゴールデンパーム」で転地療養するミス・マープルは、ジョーン・ウェストから、超薄物の服を買うように勧められ、「いとも深い思いやりのこもった態度で、”わずかな額の小切手”を受けとってくれるよういい含められていた。」(永井 淳訳)


                                          

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