現在、エルサムパレスを管理しているイングリッシュヘリテージが 発行しているエルサムパレスのプログラムの表紙(筆者所有) - 英国 TV 版では、リネット・リッジウェイの屋敷の内部として、 エルサムパレスの内部が撮影に使用されており、 ジャクリーン・ド・ベルフォールが、 失業した婚約者のサイモン・ドイルのために、 リネットを訪問する場面が、 扉の奥にある部屋で撮影されている。 |
英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第52話(第9シリーズ)として、2004年4月12日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「ナイルに死す(Death on the Nile)」(1937年)の TV ドラマ版の場合、原作対比、以下の差異が見受けられる。
(1)
<原作>
ジャクリーン・ド・ベルフォール(Jacqueline De Bellefort - 通称:ジャッキー(Jackie))が、学生時代の古い友人であるリネット・リッジウェイ(Linnet Ridgeway)に対して、「失業した婚約者のサイモン・ドイル(Simon Doyle)をリネットが住む屋敷の管理人にしてほしい。」と頼み込むのは、電話を介してである。
<英国 TV ドラマ版>
ジャッキーは、リネットの屋敷を訪問の上、リネットに頼み込んでいる。映像的には、電話経由での会話よりも、直接の会話の方が、印象が強いので、そのように変更したのではないかと思われる。
ジャッキーが単独でリネットの屋敷を訪問した際とジャッキーがサイモンを連れてリネットの屋敷を訪れた際の2回とも、リネットの横には、リネットの友人であるジョアナ・サウスウッド(Joana Southwood)が同席している。
なお、リネットの屋敷として、エルサムパレス(Eltham Palace → 2014年7月23日付ブログで紹介済)の外観と内部が、撮影に使用されている。
(2)
<原作>
物語の主な舞台となるのは、アスワン(Aswan)を出帆して、ナイル河を遡る遊覧船「Karnak」の船上である。
<英国 TV ドラマ版>
アガサ・クリスティーの原作と同様に、物語の主な舞台となるのは、遊覧船「Karnak」の船上であるが、実際の撮影に使用されたのは、「PS Sudan」と言う遊覧船である。ただし、遊覧船の横には、原作通り、「Karnak」の表示が施されている。
夕暮れの中、駐車場から遠方のエルサムパレスを望む |
(3)
アガサ・クリスティーの原作の場合、遊覧船 Karnak の乗船客の数がかなり多いため、英国 TV 版の場合、時間の関係上、あまり重要ではない登場人物は、整理されている。
具体的には、以下の乗船客は、英国 TV ドラマ版には登場していない。
*バウァーズ(Miss Bowers - マリー・ヴァン・スカイラーの看護婦)
*ジム・ファンソープ(Jim Fanthorp - 弁護士)
*ギド・リケティ(Guido Richetti - 考古学者)
周囲の堀越しに、エルサムパレスを望む。 画面右端に見えるのは、駐車場から建物へと向かう North Stone Bridge。 英国 TV 版「ナイルに死す」に出てくるエルサムパレスの外観は、 掘に沿って、画面左の方向へかなり回り込んだところから撮影されている。 |
(4)
<原作>
遊覧船がアブ・シンベル(Abu Simbel)に停泊して、乗船客が現地を観光していた時、崖の上から落ちてきた大きな岩で、リネットとサイモンの二人は、危うく押し潰されそうになるが、なんとか命拾いする。
<英国 TV ドラマ版>
遊覧船がアブ・シンベルに停泊して、乗船客が神殿を観光していた時、神殿の上から落ちてきた大きな岩(=神殿の一部)で、リネットとサイモンの二人は、危うく押し潰されそうになるが、なんとか命拾いする。
(5)
<原作>
アブ・シンベルにおいて、リネットとサイモンの二人の命を狙った犯人として、ジャッキーが疑われるが、ジャッキーには、遊覧船に居たというアリバイがあり、彼女に対する疑いは晴れる。
<英国 TV ドラマ版>
アブ・シンベル神殿において、リネットとサイモンの二人の命を狙った犯人として、ジャッキーが疑われるが、ジャッキーは、リネットとサイモンの近辺に居り、エルキュール・ポワロも、彼女を目撃していた。従って、ジャッキーが、リネットとサイモンの二人の命を狙い、神殿の上から大きな岩を落とした後、直ぐに二人の近辺に姿を現わすことは、物理的に不可能なため、彼女に対する疑いは晴れる。
夕暮れが迫るエルサムパレス。 建物内の明かりが、妖しく浮かぶ。 画面中央のやや左側の部分が、建物への入口に該る。 |
(6)
<原作>
ワディ・ハルファ(Wadi Halfa)で、英国特務機関員で、ポワロの友人であるレイス大佐(Colonel Race )が、途中から遊覧船に乗り込んで来る。レイス大佐は、ポワロに対して、「遊覧船の乗船客の中に入り込んでいる殺人犯を捜索中だ」と伝える。
<英国 TV ドラマ版>
上記(3)でも述べた通り、遊覧船の乗船客をある程度整理したことに伴い、物語を複雑化させることを避けるためだと思われるが、レイス大佐が遊覧船に乗り込んで来たのは、「エジプトで休暇を楽しむ友人であるポワロと一緒に、単に遊覧を楽しむため」という説明に変更されている。
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