アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1942年に発表した長編で、エルキュール・ポワロシリーズの第21作目に該る「五匹の子豚(Five Little Pigs)」は、彼女の手により戯曲版となって、1960年3月23日にロンドンのダチェス劇場(Duchess Threatre)において初演された。なお、「五匹の子豚」の戯曲版のタイトルは、「殺人をもう一度(Go Back for Murder)」へ変更されている。
2011年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された 「The Mousetrap and Other Plays」の表紙 (Cover Design : HarperCollinsPublishers 2011) |
「殺人をもう一度」における主な登場人物以下の通り。なお、登場人物の順番は、舞台上の出演順である。
(1)ジャスティン・フォッグ(Justin Fogg):法律事務所の弁護士(現在 - 35歳)
(2)カーラ・ルマルション(Carla Le Marchant):事件の依頼人(現在 - 21歳 / 事件当時 - 5歳)
(3)ジェフ・ロジャース(Jeff Rogers):カーラ・ルマルションの婚約者
(4)フィリップ・ブレイク(Philip Blake):アミアス・クレイルの親友 / 現在は、株式仲買人
(5)メレディス・ブレイク(Meredith Blake):-フィリップ・ブレイクの兄 / 現在は、隠居の上、薬草の研究に没頭
(6)エルサ・グリヤー(Elsa Greer):アミアス・クレイルの絵のモデルで、彼の愛人 / 現在は、メルクシャム卿夫人(Lady Melksham)(現在 - 35歳 / 事件当時 - 19歳)
(7)セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams):アンジェラ・ウォレンの家庭教師(現在 - 60歳台)
(8)アンジェラ・ウォレン(Angela Warren):カロリン・クレイルの異母妹 / 現在は、考古学者(現在 - 30歳 / 事件当時 - 14歳)
(9)カロリン・クレイル(Caroline Crale):アミアス・クレイルの妻 / 夫を毒殺した罪で起訴される
(10)アミアス・クレイル(Amyas Crale):画家で、カロリン・クレイルの夫
2011年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された 「The Mousetrap and Other Plays」の裏表紙 (Cover Design : HarperCollinsPublishers 2011)- 「殺人をもう一度」の戯曲版も、一番最後に含まれている。 |
アガサ・クリスティーの原作(小説版)に比べると、彼女の戯曲版における登場人物には、以下の違いが見受けられる。
(1)
<小説版>
カーラ・ルマルションが自分の母親の事件の再調査を依頼する相手は、「エルキュール・ポワロ」である。
<戯曲版>
カーラ・ルマルションが自分の母親の事件の再調査を依頼する相手が、「ジャスティン・フォッグ」へ変更されている。
なお、ジャスティン・フォッグの名前は、小説版の「クェンティン・フォッグ(Quentin Fogg - 法廷弁護士 / カロリン・クレイル事件において、検察側を担当)」をベースにしているものと思われる。
(2)
<小説版>
カーラ・ルマルションの婚約者の名前は、「ジョン・ラッテリー(John Rattery)」である。
<戯曲版>
カーラ・ルマルションの婚約者の名前が、「ジェフ・ロジャース」へ変更されている。
(3)
<小説版>
カーラ・ルマルションの婚約者であるジョン・ラッテリーは、ポワロに対して、事件の再調査を取り止めるよう、働き掛けるようなことはしない。
<戯曲版>
カーラ・ルマルションの婚約者であるジェフ・ロジャースは、ジャスティン・フォッグに対して、「事件の再調査を適当に済ませて、彼女には穏便な結果だけを伝えればよい。」と働き掛けている。
(4)
<小説版>
ポワロによる事件の再調査の結果、アミアス・クレイルを殺害した本当の真犯人が明らかになり、カロリン・クレイルの無実が判ったカーラ・ルマルションとジョン・ラッテリーの二人は、安心して、結婚へと進むことになる。
<戯曲版>
物語の最後、カーラ・ルマルションは、ジャスティン・フォッグに対して、「ジェフ・ロジャースとの婚約は、既に解消済。カナダへは戻らず、英国に残るつもり。」と告げる。
(5)
<小説版>
エルサ・グリヤーの現在の肩書きは、「ディティシャム卿夫人(Lady Dittisham)」である。
<戯曲版>
エルサ・グリヤーの現在の肩書きは、「メルクシャム卿夫人」へと変更されている。
(6)
<小説版>
事件後、アンジェラ・ウォレンは、ドイツ(ミュンヘン)の学校へ留学させられている。
<戯曲版>
事件後、アンジェラ・ウォレンは、スイス(チューリッヒ)の学校へ留学させられている。
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