今回は、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)が執筆した「恐怖の谷(The Vallery of Fear)」について、紹介したい。
「恐怖の谷」は、シャーロック・ホームズシリーズの長編小説4作のうち、最後に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1914年9月号から1915年5月号まで掲載された。また、米国でも、「ニューヨーク トリビューン(The New-York Tribune)」の日曜版に連載された。
「恐怖の谷」は、第1長編「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2016年7月30日付ブログで紹介済)」(1887年)や第2長編「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)」(1890年)と同様に、2部構成を採っており、第1部には、サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)のバールストン館(Birlstone House)に住むジョン・ダグラス(John Douglas)と思われる男性が、銃身を切り落として短くした散弾銃によって、至近距離から頭を撃ち抜かれて、惨殺された事件の発生から、ホームズの推理により、事件の解決に至るまでが含まれて、また、第2部では、事件の背景となった「恐怖の谷」と呼ばれる米国ペンシルヴァニア州ヴァーミッサ峡谷(Vermissa Valley)にある炭鉱街で発生した事件が語られている。
英国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 - 第1部第1章「警告(The Warning)」 1880年代の終わりに差し掛かる頃の朝、 シャーロック・ホームズは、 ジェイムズ・モリアーティー教授の組織内に居る 情報提供者であるフレッド・ポーロック(Fred Porlock)から、 数字が羅列された暗号文を受け取った。 挿絵:フランク・ワイルズ |
1880年代の終わりに差し掛かる頃の朝、シャーロック・ホームズは、フレッド・ポーロック(Fred Porlock - 偽名)から、数字が羅列された暗号文を受け取った。
ポーロックから受け取った暗号文には、以下の内容が記載されていた。
「534 C2 13 127 36 31 4 17 21 41
DOUGLAS 109 293 5 37 BIRLSTONE
26 BIRLSTONE 9 127 171」
ホームズによると、ポーロックは、ホームズの終生のライヴァルで、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)の組織内に居る情報提供者とのこと。
ホームズは、年鑑(Almanac)を使って、ポーロックの暗号文を解読すると、次のような内容だった。
「危険が迫っている 今直ぐにでも起こり得る
ダグラス 豊かな地方 今 バールストン館で
バールストン 確信 差し迫っている」
つまり、「バールストン館のダグラスと言う男に、危険が差し迫っている。」と言う訳だ。
ちょうどそこへ、スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部(Inspector Alec MacDonald)が、ホームズを訪ねて来た。
マクドナルド警部は、テーブルの上に置かれた解読された暗号文の内容を見て、驚きを見せる。何故ならば、「昨夜、バールストン館に住むジョン・ダグラスと言う男が惨殺された。(Mr. Douglas, of Birlstone Manor House, was horribly murdered last night.)」と言う連絡を、彼は受けていたからである。
マクドナルド警部がホームズの元にやって来たのは、サセックス州刑事部長(chief Sussex detective)であるホワイト・メイスン(White Mason)からの要請に基づき、ホームズをバールストンへと連れて行くためだった。
マクドナルド警部からの話を聞き、事件に興味を覚えたホームズは、ジョン・H・ワトスンも伴うと、3人でバールストンへと向かった。
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