英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第50話(第9シリーズ)として、2003年12月14日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「五匹の子豚(Five Little Pigs)」(1942年)の TV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が見受けられる。
遥々、カナダから英国へとやって来たルーシー・ルマルション(Lucy Lemarchant)こと、本名ルーシー・クレイル(Lucy Crale)から、自分の母親であるカロリン・クレイル(Caroline Crale - アミアス・クレイル(Amyas Crale - 画家)の妻 / 夫を毒殺した罪で起訴され、有罪となる)の事件の再調査を依頼されたエルキュール・ポワロは、図書館を訪れて、当時の新聞で、事件の下調べを行った。
なお、ポワロが訪れた図書館として、当時、大英博物館(British Museum → 2014年5月26日付ブログで紹介済)内にある「円形閲覧室(Round Reading Room)」が、撮影に使用されている。
大英博物館の建物前面 |
現在、図書館機能は、大英博物館内にはなく、大英図書館(British Library → 2014年5月31日付ブログで紹介済)として独立して、別の場所に所在している。
1997年秋、ユーストンロード(Euston Road)の北側で、 セントパンクラス駅(St. Pancras Station)の西側に「大英図書館」の新館が完成し、 書庫と図書館機能は大英博物館から同新館へ移転。 なお、1857年に一般にオープンした円形閲覧室のみが、大英博物館内に残ることとなった。 |
(7)
<原作>
原作の場合、ポワロは、五匹の子豚達に会いに行く前に、
*サー・モンタギュー・ディプリーチ(Sir Montague Depleach - 法廷弁護士 / カロリン・クレイル事件において、弁護側を担当)
*クェンティン・フォッグ(Quentin Fogg - 法廷弁護士 / カロリン・クレイル事件において、検察側を担当)
*ジョージ・メイヒュー(George Mayhew - 事務弁護士 / カロリン・クレイル事件において、弁護側を担当した事務弁護士の息子)
*クレイブ・ジョナサン(Caleb Jonathan - クレイル家の事務弁護士)
と面談して、カロリン・クレイル事件に関する情報を更に収集する。
<英国 TV ドラマ版>
英国 TV ドラマ版の場合、時間の制約の関係上、ポワロが面談するのは、サー・モンタギュー・ディプリーチだけに留まり、他の3人は登場しない。
なお、ポワロがサー・モンタギュー・ディプリーチが面談した場所として、ユニヴァーシティー・カレッジ・ロンドン(University College London → 2015年8月16日付ブログで紹介済)が、撮影に使用されている。
ユニヴァーシティー・カレッジ・ロンドンの入口から見た主要校舎ウィルキンスビル(Wilkins Building) |
(8)
<原作>
原作の場合、ポワロは、五匹の子豚のうち、最初の子豚に該るフィリップ・ブレイク(Philip Blake - アミアス・クレイルの親友 / 現在は、株式仲買人)と面談する。
フィリップ・ブレイクは、アミアス・クレイルと結婚する前のカロリン・クレイルに対して求婚したが、振られた過去があり、カロリン・クレイルに好意を抱いていた。
<英国 TV ドラマ版>
英国 TV ドラマ版の場合、フィリップ・ブレイクは、カロリン・クレイルではなく、アミアス・クレイルに対して、少年の頃から、好意を抱いていたと言う人物設定に変更されている。
(9)
<原作>
原作の場合、物語の終盤、ポワロは、アミアス・クレイルの毒殺犯人として、エルサ・グリヤー(Elsa Greer - アミアス・クレイルの絵のモデルで、彼の愛人 / ディティシャム卿夫人(Lady Dittisham))を指摘する。
そして、ポワロは、事件再調査の依頼人であるカーラ・ルマルション(Carla Lemarchant)こと、本名カロリン・クレイル(Caroline Crale)と彼女の婚約者であるジョン・ラッテリー(John Rattery)に対して、「全てが状況証拠に基づくものである関係上、母親のカロリン・クレイルの恩赦やエルサ・グリヤー(現ディティシャム卿夫人)の有罪を得られる可能性は低いものの、自分の再調査結果を警察宛に提出するつもりだ。」と語り、物語は終わりを迎える。
<英国 TV ドラマ版>
英国 TV ドラマ版の場合、ポワロが、アミアス・クレイルの毒殺犯人として、エルサ・グリヤー(現ディティシャム卿夫人)を指摘した際、ルーシー・ルマルションは、ピストルを取り出すと、エルサ・グリヤーに対して、銃口を向ける。エルサ・グリヤーも、ルーシー・ルマルションに対して、「自分は、アミアス・クレイルを毒殺した14年前に、既に死んでいる。」と語り、ピストルを撃つように挑発する。それを見たポワロが、ルーシー・ルマルションに対して、
‘If you (Lucy Lemarchant) do, she (Elsa Greer) will have won.’
‘If you kill her, you kill yourself.’
‘Spare her, Mademoiselle, and justice may still be done.’
と説得して、彼女がエルサ・グリヤーを撃つことを止めさせる展開となっている。
個人的には、原作対比、英国 TV ドラマ版の結末の方が、より劇的な展開に脚色されていると思う。
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