2023年5月31日水曜日

アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」<戯曲版>(Five Little Pigs by Agatha Christie )- その2

1960年3月23日にロンドンのダチェス劇場において初演された
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」の戯曲版である
「殺人をもう一度」の配役表
(2011年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
「The Mousetrap and Other Plays」から抜粋)


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1942年に発表した長編で、エルキュール・ポワロシリーズの第21作目に該る「五匹の子豚(Five Little Pigs)」は、彼女の手により戯曲版となり、1960年3月23日にロンドンのダチェス劇場(Duchess Threatre)において、「殺人をもう一度(Go Back for Murder)」と言うタイトルで初演された。


彼女の戯曲版は、以下の通り、2幕構成となっている。


<第1幕(場所:ロンドン)>

・シーン1(場所:法律事務所のオフィス(A lawyer’s office))

 登場人物:ジャスティン・フォッグ(Justin Fogg)/ ターンボール(Turnball - ジャスティン・フォッグと彼の父親であるアンドリュー・フォッグ(Andrew Fogg)を40年間支えた事務員)/ カーラ・ルマルション(Carla Le Marchant)/ ジェフ・ロジャース(Jeff Rogers)

・シーン2(場所:シティー地区にある株式仲買人オフィス(A City office))

 登場人物:カーラ・ルマルション / フィリップ・ブレイク(Philip Blake)

・シーン3(場所:カーラ・ルマルションが宿泊しているホテルの部屋(A room in an hotel suite))

 登場人物:ジャスティン・フォッグ / カーラ・ルマルション / メレディス・ブレイク(Meredith Blake)→ カーラ・ルマルション / エルサ・グリヤー(Elsa Greer)

・シーン4(場所:セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams)が住む屋根裏部屋(A bed-sitting-room))

 登場人物:カーラ・ルマルション / セシリア・ウィリアムズ

・シーン5(場所:レストランのテーブル(A table in a restaurant))

 登場人物:カーラ・ルマルション / アンジェラ・ウォレン(Angela Warren)


<第2幕(場所:オルダーベリーにあるアミアス・クレイル(Amyas Crale)が毒殺された屋敷(Alderbury, a house in the West of England))>


第2幕では、「現在」、「16年前」、そして、「現在」と、場面が展開する。


(1)登場人物(現在):ジャスティン・フォッグ / カーラ・ルマルション / メレディス・ブレイク

(2)登場人物(16年前):カロリン・クレイル(Caroline Crale)/ アミアス・クレイル / フィリップ・ブレイク / メレディス・ブレイク / エルサ・グリヤー / セシリア・ウィリアムズ / アンジェラ・ウォレン

(3)登場人物(現在):ジャスティン・フォッグ / カーラ・ルマルション / フィリップ・ブレイク / メレディス・ブレイク / エルサ・グリヤー / セシリア・ウィリアムズ / アンジェラ・ウォレン


なお、舞台上、「カーラ・ルマルション」と彼女の母親である「カロリン・クレイル」は、同じ女優が演じている。


アガサ・クリスティーは、自伝の中で、「ホロー荘の殺人(The Hollow)」(1946年)に関連して、「いつも思っていたことだったが、『ホロー荘の殺人』では、ポワロを登場させたことが失敗だった。私は自分の小説にポワロを出すことに慣れっこになっていたので、当然、この小説にも彼が入ってきたが、ここでは、それが失敗だった。」と述べているが、ファンの立場から言うと、非常に残念なことに、彼女は、処女作である「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)」(1920年)に登場させたベルギー人の名探偵であるエルキュール・ポワロをあまり好いていなかった。

そのため、「五匹の子豚」の戯曲版である「殺人をもう一度」において、ポワロは登場せず、代わりに、カーラ・ルマルションが自分の母親の事件の再調査を依頼したジャスティン・フォッグが探偵役を務める。


第2幕の終盤、ジャスティン・フォッグが、アミアス・クレイルの殺害犯人として、エルサ・グリヤー(現在は、メルクシャム卿夫人(Lady Melksham))を指摘すると、彼女は罪を認めて、退席する。

彼女が姿を消した後、フィリップ・ブレイク、アンジェラ・ウォレン、セシリア・ウィリアムズ、そして、メレディス・ブレイクの順で、舞台から退席していく。


第2幕の最後、ジャスティン・フォッグとカーラ・ルマルションの間で、以下の会話が交わされる。


カーラ・ルマルション:She’s been sentenced already, hasn’t she ?

ジャスティン・フォッグ:Sentenced ?

カーラ・ルマルション:To life imprisonment - inside herself.


ジャスティン・フォッグが、カーラ・ルマルションに対して、「カナダ(モントリオール)へ戻るのか?」と尋ねると、彼女は、「カナダへは戻らない。ここ(オルダーベリー)に残る。」と答える。

更に、カーラ・ルマルションは、ジャスティン・フォッグに対して、「ジェフ・ロジャースとの婚約は、既に解消済。あなた(ジャスティン)には、私と一緒に、ここに残ってほしい。」と伝える。

ちょうどそこへ、メレディス・ブレイクが戻って来て、ジャスティン・フォッグとカーラ・ルマルションの二人の様子を見て、微笑みながら、舞台上から退席して、物語は終わりを迎えるのである。


0 件のコメント:

コメントを投稿