2022年8月21日日曜日

コナン・ドイル作「ぶな屋敷」<小説版>(The Copper Beeches by Conan Doyle ) - その3

英国で出版された「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」
1892年6月号に掲載された挿絵(その7) -
家庭教師として、ぶな屋敷に住み込みを始めた
ヴァイオレット・ハンターは、
3日目の朝、非常に奇妙なことに、
雇い主であるジェフロ・ルーカッスル氏から、
指定された青いドレスに着替えさせられると、
応接室の中央の窓の近くに置かれた椅子に座らせられ、
ルーカッスル氏から面白い話を聞かせられたり、
本を読ませられたりした。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット

(Sidney Edward Paget 1860年 - 1908年)

若い家庭教師であるヴァイオレット・ハンター(Violet Hunter)が、ジェフロ・ルーカッスル氏(Mr. Jephro Rucastle)なる人物から、破格の給料(年額100ポンド → 後に、年額120ポンドへ値上げ)で、住み込みの家庭教師の申し出を受け、ハンプシャー州(Hampshire)のウィンチェスター(Winchester)から5マイル離れた「ぶな屋敷」へ向かってから、何事もなく、2週間が経過したある夜、彼女からシャーロック・ホームズ宛に、緊急を知らせる電報が届いた。


翌日の午前11時、ホームズとワトスンの二人は、ウィンチェスターへと向かい、ヴァイオレット・ハンターに指定されたブラックスワンホテル(Black Swan Hotel)で、彼女に会った。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年6月号に掲載された挿絵(その8) -
ヴァイオレット・ハンターは、
ある夜、興味本位で、自分の部屋にある家具を調べ始めたところ、
古い整理箪笥の一番下の引き出しの中から、
自分と同じ金髪の切られた束を見つけてしまった。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(1860年 - 1908年)


ヴァイオレット・ハンターによると、彼女がぶな屋敷に到着した最初の2日間は、何事もなく、平穏に過ぎたが、3日目に入ると、非常に奇妙なことが始まったのである。


朝食の直ぐ後、ルーカッスル夫人(Mrs. Rucastle)が何事か囁くと、ルーカッスル氏により、ヴァイオレット・ハンターは、指定された青いドレスに着替えさせられた。そして、床まで届く程の窓が3つある応接室へと案内され、中央の窓の近くに置かれた椅子に座らされると、ヴァイオレット・ハンターは、ルーカッスル氏から面白い話を聞かせられたり、別の日には、本を読ませられたりしたのである。


ヴァイオレット・ハンターが注意して見ていると、ルーカッスル夫妻は、彼女が窓の方を向かないように、いつも細心の注意を払っていた。生憎と、椅子の背は、窓の方に向いており、彼女は窓に背を向けていたため、彼女は、外を見ることができなかった。


ある日、ヴァイオレット・ハンターは、割れた鏡の破片をハンカチの中に忍ばせると、ルーカッスル氏から面白い話を聞きながら、鏡の破片を隠したハンカチを顔の前に持ってきて、自分の後ろ、、即ち、窓の外を窺った

すると、ぶな屋敷の前を通る幹線道路であるサザンプトンロード(Southampton Road)の垣根にもたれて、頬髭を生やして、灰色の背広を着た小柄な男が、こちらの方を見ているのが判った。


ある夜、ヴァイオレット・ハンターは、興味本位で、自分の部屋の家具を調べ始めた。

部屋には、古い整理箪笥があり、上の2段の引き出しの中には、何も入っていなかったが、一番下の引き出しには、鍵が掛かっていた。彼女が自分の鍵束を使ってみると、不思議なことに、最初の鍵がうまい具合にピッタリと合って、一番下の引き出しが開いた。

そこには、切られた金髪が入っていたのである。彼女がロンドンにおいて切った金髪は、大きな輪にして、自分の鞄の底にしまってあった。よって、古い整理箪笥の一番下の引き出しの中に入っていた金髪は、一体、誰のものなのだろうか?


英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年6月号に掲載された挿絵(その9) -
ヴァイオレット・ハンターは、
常に施錠されている屋敷の別棟の2階への入口の鍵を
トラーが偶々掛け忘れた際に、
興味本位で入って見たところ、
4つある窓のうち、鎧戸が降りた部屋の中に、
誰かが居る気配を感じたが、
その現場をルーカッスル氏に見つけられてしまった。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(1860年 - 1908年)


ぶな屋敷には、別棟があり、その入口は、
使用人のトラー(Toller)夫妻が住んでいる一角にあったが、常に施錠されており、ヴァイオレット・ハンターは、ルーカッスル氏が出入りするところを見かけると、怒りの表情を向けられた。

別棟の2階には、4つの窓が一列に並んでおり、その内の3つは汚れた窓だったが、4つ目の窓には、何故か、鎧戸が降りていた。

ある日、トラーが偶々鍵を掛け忘れた際に、彼女が、興味本位で、別棟に入ってみたところ、鎧戸が降りた部屋の中に、誰かが居る気配がしたのであった。


ルーカッスル氏は、「カルロ(Carlo)」と呼ばれる大きなマスティフ犬を飼っていて、トラーに飼育を任せていた。夜になると、マスティフ犬は、屋敷の敷地内に放されていた。

従って、ヴァイオレット・ハンターは、ルーカッスル氏から、「夜間は、建物の外へは、絶対でないこと。」と、厳重に注意されていた。

ルーカッスル氏は、侵入者を警戒しているのだろうか、いや、別棟の2階に居ると思われる誰が屋敷から逃げ出すことを警戒しているのではないだろうか?


0 件のコメント:

コメントを投稿