英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2017年に出版された サム・シチリアーノ作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 月長石の呪い」の表紙 |
本作品「月長石の呪い(The Moonstone’s Curse)」は、米国ユタ州ソルトレークシティー出身の作家であるサム・シチリアーノ(Sam Siciliano:1947年ー)によって、2017年に発表された。
本作品は、(1)1994年に発表された「オペラ座の天使(The Angel of the Opera → 2015年1月24日付ブログで紹介済)」、(2)2012年に発表された「陰謀の糸を紡ぐ者(The Web Weaver → 2016年11月13日付ブログで紹介済)」、(3)2013年に発表された「グリムスウェルの呪い(The Grimswell Curse → 2021年9月12日 / 9月19日 / 9月26日付ブログで紹介済))」および(4)2016年に発表された「白蛇伝説(The White Worm → 2021年10月17日 / 10月21日付ブログで紹介済))」の続編に該り、シャーロック・ホームズの相棒を務めるのは、彼の従兄弟で、友人でもあるヘンリー・ヴェルニール医師(Dr. Henry Vernier)で、本来の事件記録者であるジョン・H・ワトスンは、前4作と同様に、本作品には登場しない。
ある年の7月の水曜日の午後、ヘンリー・ヴェルニール医師が、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)に住む従兄弟のシャーロック・ホームズの元を訪れると、そこには、従者のホッジェス(Hodges)を伴った貴族のチャールズ・ブロムリー(Charles Bromley - 1839年生まれ)が、事件の相談にやって来ていた。
チャールズ・ブロムリーは、男爵(Baron)であるロバート・ブロムリー(Robert Bromley)の次男で、イートン校(Eton)とケンブリッジ大学(Cambridge University)で教育を受けており、現在、27歳の青年だった(このことから、「ある年」は、1866年であることが判る)。彼は、2年程前に、アリス・ブレイク(Alice Blake - 現在、25歳)と結婚しており、今回、彼がホームズの元に来たのは、彼の妻アリスの手元にある先祖代々伝わるダイヤモンド「月長石(Monnstone)」と彼女の身に迫る危険について相談するためであった。
チャールズ・ブロムリーによると、アリス・ブレイクの曽祖伯父で、インドに進出した英国軍の将校であるジョン・ハーンキャッスル大佐(Colonel John Herncastle)が、1799年にバラモン教徒の寺院に長く秘蔵されていた秘宝のダイヤモンド「月長石」を奪い、その際、「月長石」を警部していた人達を皆殺しにしたらしい。
その後、ジョン・ハーンキャッスル大佐は「月長石」を英国に持ち帰るが、以降、彼は不遇の時を過ごし、1840年に彼が亡くなった際、「月長石」は彼の姪に該る18歳のレイチェル・ヴェリンダー(Rachel Verinder)に遺贈された。その時、「月長石」の盗難事件が発生し、謎のインド人達も事件に関与していた、とのこと。
その後、レイチェル・ヴェリンダーは、従兄弟のフランクリン・ブレイク(Franklin Blake)と結婚し、長男であるネヴィル・ブレイク(Neville Blake)が出生し、「月長石」を相続。このネヴィル・ブレイクが、チャールズ・ブロムリーの妻アリス・ブレイクの父親に該るのであった。父親ネヴィル・ブレイクの死去に伴い、長女のアリス・ブレイクが「月長石」を相続し、現在に至っていた。
チャールズとアリスのブロムリー夫妻の間には、現在、子供が居ないため、アリスが何らかの理由で子供のないまま亡くなった場合、彼女の妹であるレディー・ノーラ・バートラム(Lady Norah Bartram - ジェイムズ(James)という2歳の息子が一人あり)が、「月長石」を受け継ぐことになっている。
アリス・ブロムリーは、自分の先祖代々伝わる「月長石」の呪いについて、次第に囚われるようになっていた。
実際、3年前の7月2日、チャールズの父親で、非常に短気なロバート・ブロムリーに指示されたため、アリスは已む無く「月長石」を身に付けたのだが、その夜、彼は卒中(apoplexy)で亡くなってしまった。なお、男爵の爵位は、ロバートの兄である長男ロナルド(Ronald)が継いでいた。
それ以来、アリスは、決して「月長石」を身に付けようとはしなかった。
アリスの心配は、まだ続く。
(1)6ヶ月前、図書室の窓から、白いターバンを巻き、暗い顔をしたインド人が中を覗き込んでいたと、アリスが訴えた。しかし、彼女の他に、インド人を見かけた者はいなかった。
(2)約2ヶ月前、ジェフリー・ティアブジ氏(Mr. Geoffrey Tyabji - インド人の父と英国人の母の間に出生。オックスフォード大学(Oxford University)で学び、現在、ロンドンに在住)が、チャールズ・ブロムリーを訪問。ジェフリー・ティアブジ氏は、チャールズに対して、アリスが保有しているダイヤモンド「月長石」をインド王族へ返却するよう、強く要請。
(3)約1ヶ月前、アリスが、窓から覗き込んでいるインド人を見かけたと、再度訴えた。
なお、「月長石」は、有名な宝飾品店ハーター&ベンジャミン(Harter and Benjamin)のハーター氏(Mr. Harter)の鑑定を受け、現在、自宅の金庫内に保管している、とのこと。
チャールズ・ブロムリーから相談を受けたホームズは、事件の捜査を引き受けることにした。
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