2023年7月10日月曜日

アガサ・クリスティー作「あなたの庭はどんな庭?」<英国 TV ドラマ版>(How Does Your Garden Grow? by Agatha Christie )- その2

第21話「あなたの庭はどんな庭?」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 2 ケースの表紙 -
王立園芸協会主催のチェルシーフラワーショーにおいて、
自分の名前を冠したピンクローズが披露されることになり、
スピーチを行う予定のエルキュール・ポワロは、張り切っていた。


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「あなたの庭はどんな庭?(How Does Your Garden Grow?)」(1935年)の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第21話(第3シリーズ)の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


<原作>

アガサ・クリスティー作「あなたの庭はどんな庭?(How Does Your Garden Grow ?)」(1935年ー短編集「レガッタデーの事件(The Regatta Mystery)」に収録)の場合、エルキュール・ポワロの事務所にアメリア・バロウビー(Amelia Barrowby)という独身の老婦人から依頼の手紙が届くところから、物語の幕が上がる。

彼女から来た手紙に書かれている依頼の内容は、「自分の身を案じているので、自宅に来てほしい。」という非常に曖昧なものであった。この奇妙な依頼の手紙に興味を持ったポワロは、秘書のミス・レモン(Miss Lemon)に指示して、「いつでも相談に応じる。(I will do myself the honour to call upon you at any time you suggest.)」と返信をするが、その後、彼女からは何も音信もなかった。

暫くして、ミス・レモンが手紙の差出人であるアメリア・バロウビーが死亡したことを新聞記事で偶然見つけ、ポワロに知らせる。

アメリア・バロウビーが亡くなった際、姪のデラフォンテーン夫妻(Mr. and Mrs. Delafontaine)と一緒に食事をしていたのだが、(1)アーティチョークのスープ、(2)魚のパイと(3)アップルタルト以外、何も口にしていなかった。ところが、彼女の遺体からは、ストリキニーネが発見されたのである。ストリキニーネはとても苦い味がするため、アーティチョークのスープ、魚のパイやアップルタルトに混入されていたとは思えなかった。また、彼女は珈琲も飲まず、水だけを飲んでいた。ストリキニーネが混入したと考えられるのは、彼女が飲んでいた持病用のカプセル薬だけだった。そのカプセル薬に触れたのは、ロシア人の話相手(コンパニオン)のカトリーナ・リーガー(Katrina Rieger)のみだったため、彼女へ疑いの目が向けられた。

アメリア・バロウビーの死に疑問を感じたポワロは現地へ赴き、調査を始めるのであった。


<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、原作にはない場面が、物語の冒頭にいろいろと追加されている。


(A)

アメリア・バロウビーの話相手(コンパニオン)であるカトリーナ・レイガー(Katrina Reiger → 原作に比べると、名前が若干変更されている)が、(旧)ソビエト連邦の大使館を訪れるところから、物語が始まる。

なお、ソビエト連邦の大使館として、ロンドンのフリーメイソンズホール(Freemason’s Hall → 2016年6月5日付ブログで紹介済)が撮影に使用されている。


物語の冒頭、
アメリア・バロウビーの話相手(コンパニオン)であるカトリーナ・レイガーが訪れた
ソビエト連邦の大使館として撮影に使用された
フリーメイソンズホールの建物正面全景
<筆者撮影>


(B)

王立園芸協会(Royal Horticultural Society)主催のチェルシーフラワーショー(RHS Chelsea Flower Show)において、自分の名前を冠したピンクローズが披露される際にスピーチを行うことになったポワロは張り切って、ある店でコロンを買い入れる。このコロンが、物語の間ずーっと、アーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)に謎の花粉症状を引き起こすことになる。

なお、ポワロがコロンを購入する場所として、ロンドンのカーゾンストリート9番地(9 Curzon Street → 2016年8月28日付ブログで紹介済)の建物が撮影に使用されている。


エルキュール・ポワロがコロンを購入した
トランパー化粧品店(実在の店)が営業しているカーゾンストリート9番地の建物
<筆者撮影>


(C)

その日の夕方、アメリア・バロウビーが、自宅の寝室において、シムス医師(Dr. Sims - アメリア・バロウビーの掛かり付け医)の診察を受けている。

アメリア・バロウビーは、自分の体調不良について、食中毒かと思ったが、シムス医師は、年齢による消化不良と言う診断だった。シムス医師は、帰り際に、アメリア・バロウビーに対して、「チョコレート、貝や揚げ物は控えること」と諭した。


(D)

翌日、王立園芸協会主催のチェルシーフラワーショーにおいて、姪のメアリー・デラフォンテーン(Mary Delafontaine)、彼女の夫ヘンリー・デラフォンテーン(Henry Delafontaine)や話相手のカトリーナ・レイガーに付き添われた車椅子のアメリア・バロウビーに、ポワロは出会う。

チェルシーフラワーショーにおけるポワロのスピーチの場には、アーサー・ヘイスティングス大尉とスコットランドヤードのジャップ主任警部(Chief Inspector Japp)も同席している。

なお、王立園芸協会主催のチェルシーフラワーショーが開催された場所として、チェルシー王立廃兵院(Royal Hospital Chelsea → 2016年9月4日付ブログで紹介済)が撮影に使用されている。


王立園芸協会主催のチェルシーフラワーショーが開催された場所として
撮影に使用されたチェルシー王立廃兵院の建物全景
<筆者撮影>


アメリア・バロウビーから中身のない種袋を渡されたポワロは、その意味を計りかねつつ、フラットに戻ると、そこには彼女からの手紙が彼を待っていた。翌朝、彼女の依頼に従って、謎の花粉症に罹ったアーサー・ヘイスティングス大尉をフラットに残し、ミス・レモン(Miss Lemon)を伴って、ポワロが彼女の家ローズバンク荘(Rosebank)へ出向くと、アメリア・バロウビーのメイドのルーシー(Lucy)から、彼女が昨日亡くなったことを知らされるのであった。


原作の場合、アメリア・バロウビーが住むローズバンク荘は、バッキンガムシャー州(Buckinghanshire / 略称:Bucks - ロンドンの北西部に位置)に所在しているが、英国 TV ドラマ版の場合、ミス・レモンからポワロへの発言によると、サリー州(Surrey - ロンドンの南西部に位置)に所在していると言う設定になっている。


また、原作の場合、アメリア・バロウビーが住むローズバンク荘へと赴くのは、ポワロ一人であるが、英国 TV ドラマ版の場合、ポワロは、謎の花粉症に罹ったアーサー・ヘイスティングス大尉をフラットに残して、ミス・レモンを伴い、アメリア・バロウビーが住むローズバンク荘へと出かけている。よって、ミス・レモンは、現地において、ポワロの調査をいろいろとサポートして、活躍している。


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